「勝者のゲーム」と資産運用入門

新型コロナのパンデミック(世界的流行)の終焉迫る?
水際対策緩和と国内旅行喚起に重い腰を上げた政府。
国策に売りなし。インバウンドや旅行銘柄が狙い目
太田忠の勝者のポートフォリオ 第50回

2022年9月21日公開(2022年9月27日更新)
太田 忠
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

新型コロナの水際対策を緩和し、インバウンド回復を目指す日本政府

 先週水曜日の経済財政諮問会議。その席上で岸田文雄首相はインバウンド(訪日外国人)回復への取り組みについて触れ「足元の円安メリットを生かした稼ぐ力を強化する取り組みが重要だ」と述べた。

 日本政府は10月をめどに新型コロナの水際対策を緩和し、感染拡大前の平時に近づける方針だ。外国の個人旅行客の受け入れを解禁し、米国などからはビザ(査証)なしでの短期滞在を認める。また、1日あたり入国者数の上限も撤廃し、インバウンド消費による経済効果拡大を狙う。「岸田首相は(この一連の政策を)近く表明する」と報じられており、名実ともに一気にコロナ禍からの脱却が現実味を帯びてきた。

 今や為替相場は1ドル=140円を超える円安。対ドルだけでなくあらゆる主要通貨に対して円が安くなっていることを踏まえて、外国人から見た日本旅行へのお得感を認識してもらい、秋以降の観光需要の取り込みをおこなう。国内では「第7波」のピークが過ぎ、新型コロナの新規感染者数は顕著な減少傾向にある。緩和可能な環境になったと判断したようだ。

水際対策緩和に保守的だった日本がようやく「鎖国状態から開国へ」

 政府は水際対策として2021年11月下旬より外国人の新規入国を原則停止した。ビジネス客や留学生は今年3月から受け入れを再開。3月1日に上限を3500人から5000人に引き上げ、3月14日に7000人、4月10日に1万人、6月1日に2万人へと増やした。観光客は6月から添乗員付きの団体ツアーに限って入国を認めるという形で門戸を開放。そして9月7日からは入国者の上限を1日2万人から5万人に引き上げ、添乗員がいないツアー客の受け入れも再開した。

 次の段階ではいよいよ人数上限の撤廃に加えて、ビザ取得免除と個人旅行の解禁にも踏み切る。コロナ以前の日本は米国など68カ国・地域からの短期滞在(最長90日以内)についてはビザを免除していたが、現状ではすべての外国人にビザ取得を求めており、その手続きにかかる手間が来日の妨げになっている。

 国際的水際対策についてはG7の中では最も保守的だったのが日本。他の国々はすでに国をまたぐ規制については撤廃しており、「1日上限○万人」などというルールはない。ようやく「鎖国状態から開国へ」というところにやってきた。

国内旅行喚起策も検討。来年はコロナ禍前の水準近くまで回復との試算も

 そして、もうひとつ重要な施策がある。政府は今秋中にも国内居住者を対象にした観光促進策の「全国旅行支援」を始める検討に入ったことだ。全国旅行支援は、現在の旅行先が出発地の近隣地域に限られる「県民割」から拡大され、全国への旅行も対象にする。宿泊代金の割引とクーポン券をあわせて1日1人あたり最大1万1000円を補助。補助額がこの約2倍であった「Go Toトラベル」を当面再開しない代わりの措置と位置づけているようだ。制度を導入するかどうかは都道府県が判断する。実はこのプランは今夏の開始を目指していたものの、新型コロナ感染拡大を理由に見送られていた。

 民間調査機関の試算では2022年の日本人の旅行消費額が17兆5000億円。低水準に留まっていた21年の9兆2000億円から約2倍。そして23年にはコロナ禍前の19年の26兆8000億円に迫る24兆1000億円まで拡大すると見込んでいる。これは業界にとっては非常にインパクトが大きい。

 さらに先週報じられたグッドニュースがある。WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が「新型コロナのパンデミック(世界的流行)について「終わりが視野に入ってきた」と述べたことだ。その根拠は新型コロナウイルスによる死者数が最低水準にまで減少し、世界にとって脅威ではなくなってきたからだ。世界の1日の死者数(7日移動平均)は2月に1万人を超えていたがその後は減り続け、現在は2千人未満となっている。ウイルスが変異を繰り返すごとに毒性が下がる一方、ワクチンが普及したことが大きい。新型コロナのワクチンを1回でも接種した人の割合は世界全体で7割に近づいている。感染しても重症化しにくくなった。英国などすでにコロナ対策を全廃した国においても、爆発的な死者・重症者の再拡大は起きていない。

国策に売りなし。インバウンドや国内旅行に関連する銘柄が狙い目 

 さて、本日の本題の「国策に売りなし」についてだ。古くからの相場格言だが、国が進める政策に関連した事業をおこなう企業はまさに「国からのお墨付き」銘柄。国の予算がつく→ 業績が向上→株価上昇という図式だ。通常の個別銘柄投資への期待値は、独自の素晴らしい経営戦略で自力でビジネスを切り開くことで業績が伸びていくという面を重視する。だが、国策銘柄では国が動くと株価が動く、すなわちプラスアルファが生じる。国の介入が入ることでビジネスに追い風が吹き、自社努力だけではなく国のバックアップの中で業績が伸びていく。さらに期待値が高まるため、株式市場の中で人気化しやすい。

 今回のインバウンド緩和と国内旅行喚起はともに国策に沿ったテーマだ。インバウンドは2017年に第3次安倍内閣において観光立国推進計画が掲げられ「2020年に外人観光客4000万人!」という目標が打ち出されたことを皆さんは覚えていらっしゃると思う。「爆買い」という流行語も生まれ、観光・旅行・消費関連が盛り上がった。コロナですっかり消失したテーマが戻ってきたわけだ。

「勝者のポートフォリオ」では旅行関連銘柄などの新規買いを実施

 私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」では、すでにインバウンドに関連するポストコロナ銘柄の組み入れを昨年秋からおこなっており、JAL、ANA、JR東海などが8月下旬に入ってから本格的に上昇。さらに今週は新規に2銘柄を追加してこの分野の投資ウェートを引き上げた。おかげさまで、先週のポートフォリオのパフォーマンスはベンチマークに大きく勝ち越し。年初来、昨年10月からの運用開始以来で見ても一段とアウトパフォームが強まっている。全体相場の影響をさほど受けず、今後非常に期待できる分野だと思う。

 先週のマーケットは再びCPIショックが吹き荒れて火曜日のNYダウは1276ドル安と今年最大の下げを記録。8月中旬の直近高値からわずか3週間でNYダウは3万4152ドルから3万1145ドルへ3007ドル安の8.8%下落、日経平均は2万9222円から2万7430円へ1792円安の6.1%下落。大きく調整したことから先々週は自律反発狙いの買い戻しが活発化。「いわゆるベアマーケットラリーの典型的現象である」と先週のコラムで述べていたが、まさに束の間のラリーだったと言える。

インフレの早期鈍化が難しそうな米国市場はダウンサイドリスクが継続

 これまで米国のインフレは原油急騰を中心としたエネルギー価格の上昇によってもたらされた面が確かに強かった。「エネルギー価格が落ち着けば、インフレもピークアウトする」との楽観的な見方から株式市場が予想外に上昇する現象が見られた。しかしながら、8月のCPIの中身を見ると、もはやエネルギー価格だけでは説明できないほど、あらゆる面でインフレが起きており、早期に鈍化するとの見方が難しくなっている。米連邦準備理事会(FRB)は年末に3.4%の水準まで政策金利を引き上げるというのが従来の姿勢であったが、それ以上に利上げが加速するのが確実な情勢だ。したがって、米国市場は引き続きダウンサイドリスクにさらされる可能性が高い。先週のコラムで述べたように「逆金融相場」&「逆業績相場」での下値メドはNYダウが2万6000ドル、日経平均がNYダウの下落率の半分の2万4700円である。

 皆さん、覚悟はできているだろうか?

 

 

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。プロが評価したトップオブトップのアナリスト&ファンドマネジャー。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


今日の注目株&相場見通し!!
ダイヤモンド・ザイのウェブ会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!NISAは全商品が手数料無料!「クレカ積立で最大3%還元!」「普通預金金利が大幅アップ!」などメリット多数! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!NISAは全商品が手数料無料!「クレカ積立で最大3%還元!」「普通預金金利が大幅アップ!」などメリット多数! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

10倍株の見つけ方&
プロ厳選62銘柄
理論株価より割安な株

12月号10月21日発売
定価990円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[10倍株の見つけ方&プロ厳選]
◎巻頭特集
手遅れにならないよう今から着手!
2025年NISA年末戦略
●[戦略1]儲かっている/損している株・投信は?今の資産をどうする?
●[戦略2]投資先の内訳をチェック!来年に向けてどうする?
●[戦略+α]2021年の投資分は売却もアリ!期限切れになる旧NISAどうする?

◎第1特集
アナタの身近にもある!
10倍株の見つけ方&プロ厳選銘柄62
5年で1億円作ったkenmoさん
10倍株の見つけ方講座
プロイチオシの今年のIPO4銘柄も!
●爆速成長・ストーリーで買う10倍株

人気テーマ・海外で躍進する10倍株
●収益拡大・決算書から見抜く10倍株

●IRイベントで10倍株を発掘する
●赤字のボロ株5銘柄で一発逆転を狙う

◎第2特集
初心者でもわかる!桐谷さんも愛用!
ザイの理論株価の使い方&注目の割安株28

●理論株価のしくみを大公開
●使い方&注目の割安3パターン
●優待名人・桐谷さん流3つの活用術

●実力も株価も成長!割安成長株
●買い時到来!割安転換株
●東証改革を機に見直し!株価改善株

◎第3特集
節約って実はこんなに楽しかった!
松本明子流ケチ道節約術26

●ストレスフリーなケチ道5カ条
●食費/日用品代/掃除/光熱費の節約術
●節約のプロに聞く!効果抜群の節約ワザ

【別冊付録】
利回り5%と値上がり益が同時に狙える!
NISAなら税金ゼロ!Jリート入門

●Jリートのすごさのヒミツ&まだ上がる理由
●投資先6タイプを徹底解剖
●Jリート選びのポイント4つ
●物流施設/オフィス/ホテルなど プロ厳選のJリート12銘柄+α

◎連載も充実
●10倍株を探せ!IPO株研究所2025年8・9月編
「話題の2社が初値2倍に!市場は大いに盛り上がった」
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.15
「学生時代の年金追納すべき?」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.10
「大衆心理から先を読む」
●おカネの本音!VOL40 小林邦宏さん
「130カ国体験で学んださまざまな稼ぎ方とタイムマシン経営術!」
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.108
「裏方なのにモテモテ! データセンター株」
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「中年世代がターゲット!SNS型の投資&ロマンス詐欺にご用心」
●人気毎月分配型100本の[分配金]速報データ
「日米の株式相場の上昇が追い風となり株式型が好調!」
●読者参加型企画・1カ月で上がる株を当てろ!
「9月はアドバンテストが1位!タイミーは売上下方修正で下落」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報