成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

金融業界の中の人は知っている日本株式市場の不都合な真実。明治維新レベルの日本経済革命は起こるのか?

2023年7月6日公開
ポール・サイ
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

従業員持株制度を使って40年間コツコツとエクソンモービル株を買い、100万ドル以上に増やして引退したエンジニアがいた

 私はエクソンモービルで社会人としてのキャリアをスタートしました。最初の仕事場はエクソンモービルの精製所でした。その精製所のタンクファーム(製品タンク)のエリアでエンジニアとして働き始めたのです。

[参考記事]
私の歩んできた道(1) ネットバブルに乗り、バブル崩壊前に株を売り切った!バブルを若いうちに実感できた方がいい理由とは?

 タンクファームエリアのリーダーはテリーという人でした。テリーはエクソンモービルに40年近く勤めていました。高校を卒業して精製所に入り、その時はもう引退間近という状況でした。

 テリーはエクソンモービルの従業員持株制度を使って40年間コツコツとエクソンモービル株を増やしていました。引退する頃には、100万ドル以上(約1億4000万円)の株を持っていました。

エクソンモービル(XOM)チャート/月足エクソンモービル(XOM)チャート/月足 出所:Tradingview

 私がエクソンモービルを辞めて、ビジネススクールに行った少しあと、テリーはリタイアして、アリゾナに移住しました。それは2002年頃の話なので、当時の100万ドルはインフレ調整すれば、大ざっぱに言って、今の200万ドルぐらいの価値があります。テリーは余裕のあるリタイアライフを送ったことでしょう。

日本では自社株を持つ人が少ないのはなぜなのか?

 アメリカの場合、テリーのように、自社株を持つ人が社員にも経営陣にも多いのです。自社株を持つ人は金融マンに限りません。金融以外の職業の人でも自社株を持っている人がたくさんいます。

 しかし、日本ではこうしたことをほとんど聞きません。日本では自社株を持つ人が少ないのです。

 私がびっくりしたのは、証券業界の人、資産運用のプロもほとんど自社株を持っていないどころか、そもそも日本株でも外国株でも、株そのものを持っていない人が多いということです。

 日本は経営陣も株を持っていないケースが多いです。なぜでしょうか?

 それは日本の株式市場では、ガバナンスがうまく機能していないからです。

 最近、解決しなければいけない問題として、PBR1倍割れ企業の問題が話題になっています。PBR1倍割れということは、その会社は解散価値より低い価格で取引されているということです。なぜ、そんなふうに放置されているのでしょうか?

 たとえば、1万円が箱に入っていて、その箱が8000円で取引されていたとしましょう。その箱を8000円で買い、箱を破って1万円を取り出せば、即座に2000円が儲かります。

 しかし、会社の場合は、そこまで簡単にはいきません。PBR1倍割れでも、その会社を買収して、その中の資産を取り出すことは簡単にはできないのです。

 既得権益者である経営陣は株を持っていないのに、会社を支配できていて、いいポジションにあります。もしも会社を買収されて、資産を売り払われたら、彼らは仕事を失いますが、そのようなことはそう簡単には起こりません。

 そして、PBR1倍割れの会社の経営陣は株を持っていないことが多いですから、株価の下落、上昇も気にしません。先ほどの箱の例で言えば、その箱の価格を8000円よりも上げようとする努力をそういった経営陣はやらないのです。

 それでは、箱に1万円が入っているけれど、その1万円には手が届かない時、投資家にとってその箱の価値とは何でしょうか? 配当を出していれば、それを評価することはできますが、配当は経営陣の勝手で減らされることもあります。なので、最悪の場合、箱に1万円が入っていたとしても、その価値はほぼないに近いこともあり得ます。

日本企業の経営陣は現代の貴族のようなもの

 このように、日本のエリート層、すなわちそのシステムをコントロールしている人たちが、ガバナンスを改善させるインセンティブは強くないのです。

 日本の会社は敵対的買収がほぼ不可能です。小さな会社でも不可能です。経営は経営陣の都合で行なわれています。少し封建社会に似ています。経営陣は現代の貴族です。

 昔の本物の貴族には所有権がありましたが、経営陣には株の所有権がない場合もあるので、そこが違いますが、革命でも起こらなければ、貴族は安泰でしたから、貴族の世界にはやはり敵対的買収のようなものはほとんどなかったのです。

 しかし、アメリカなどの外国人投資家からいろいろなプレッシャーはかかります。何かしているように見せなければいけません。日本株は30%以上を外国人が持っていますので、外国人投資家対策は重要です。

 そこで、いろいろな対策を行うのですが、それらは形だけのことです。たとえば、社外取締役を増やす、コーポレートガバナンス報告書の作成、東証プライム市場への上場、取締役会のダイバーシティ向上などなどです。しかし、これらは本質的にあまり効果のないものです。このようなことでお茶を濁し、なんとか外国人投資家を満足させて、今のしくみを維持することを狙っているのです。

明治維新レベルの日本経済革命は起こるのか?

 金融業界の中の人、経営エリートなどであれば、この不都合な真実をよくわかっています。彼らが合理的な行動をとるなら、日本株を持ちません。あるいは、日本株を持ったとしても、かなり選別して持ちます。

 もちろん、このしくみが変わって敵対的買収が可能になったら、金融システム革命、日本経済革命、明治維新みたいなものが起こることになりますから、PBR1倍割れの会社は株価が大きく上昇します。

 しかし、私にはそういう兆しは見えません。楽観はできないです。

 既得権益者はまだシステムをしっかりコントロールしています。彼らにとって、痛みを伴う大改革は望ましくありません。なので、そのような革命は起こらないと思います。明治維新のように、何かの大きなきっかけが必要です。持ち合いの解消、外国人株主からの圧力などはきっかけになり得ますが、まだ遠いと思います。

数億円の資産を作るには、ガバナンスが効いている会社を選別し、投資すること

 では、このシステムに不満があるなら、個人のあなたはどうすればいいでしょうか?

 それはガバナンスが効いている会社、資本市場が機能している場所に上場している企業に投資することです。

 日本でもオーナー企業で、株価を気にしている会社はあります。たとえば、ニデック(6594)の永守さんはとても株価を気にしています。ソフトバンクグループ(9984)の孫さんもとても株価を気にしています。なぜかというと、彼らは大株主ですから。

 ガバナンスが効いている会社の株、資本市場が機能している金融市場の株を持って、エクソンモービルのテリーみたいに数億円の資産を作って、引退できるようにしましょう。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。


三井住友NLカードの公式サイトはこちら!
最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
マネックス証券の公式サイトはこちら 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

人気株500激辛診断
買いの優待株&
高配当株100

8月号6月20日発売
定価990円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[人気株500激辛診断]
◎巻頭特集
夏?それとも秋?
2025年後半の日本株の買い時

●どうなる日経平均&仕込み時を探れ!
●どの業種が狙い目?
●上がる株&下がる株

◎第1特集
「買い」「強気」の10万円株は108銘柄!
株主還元株が一目瞭然!
<2025夏>人気の株500+Jリート激辛診断
●儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
前期・今期と連続で好業績の株/高配当で5期以上連続増配予定の株/関税の影響が軽微で波乱に強い株
●儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
業績の上ブレが期待できる株/ROEが高く稼ぐ力が強い株/配当利回りが高い株/少額で買える株/理論株価より割安な株
●2025年夏のイチオシ株
10万円株/高配当株/株主優待株
●気になる人気株
大型株/新興株/Jリート
<番外編>人気の株500以外から選出!
利回り5%以上だらけ!
買いの優待+高配当株100
●桐谷さんの高配当の欲張り優待株

●株価上昇も期待の増益の優待株
●優待新設&拡充で注目株
●利回り5%以上の超高配当株
●増配期待大の高配当株

◎第2特集
トランプ関税の中でも稼げるAI関連株や
高配当株を紹介!
人気の米国株150激辛診断 2025年7-9月

●減税&利下げで年末高と予想!
S&P500を大予測
●AI関連や安定収益株に注目!トランプ関税でも強い株
●GAFAM+αの8銘柄を定点観測
●買いの大型優良株9&高配当株9
●人気の124銘柄買い売り診断

◎第3特集
3回集中講座の最終回!
チャート入門「売りタイミングの考え方」

◎第4特集
史上最高値をハイペースで更新中!
NISAが使える!
金は投信で税金ゼロで買え!

●金の相場の予測&投信で買う理由
【別冊付録】増益予想で割安な株は1617銘柄
上場全3897社の最新理論株価
◎連載も充実​●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.11
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.06
●おカネの本音!VOL.36 米倉強太さん
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.104
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
●人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報