元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしているポール・サイさんが、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている、「WORLD MARKETZ」に電話でゲスト出演した。

今回の放送は、エヌビディアの中国への輸出規制緩和で、株価が素直に上昇している背景をポールさんが解説。アクティブ運用よりパッシブ運用のほうが拡大している理由や、どちらの運用にも共通する気を付けるべきことを教えてくれたので、さっそくチェックしていこう。
エヌビディアの中国への輸出規制緩和は、大きな転換点だった
番組は、ポールさんがヨットの上から生出演していることを、番組アシスタントの木村カレンさんが紹介するところから始まった。

「ヨットからの出演はもう定番と言っていいかもしれませんが、今はどちらにいらっしゃるのでしょう?」という木村さんの質問に、ポールさんは「今は、シアトルの北にあるサンファン島群にいます」と答えた。
ポールさんのヨットはサンファン島群のスチュアート島、リードハーバーの湾内に停泊中。天気は晴れが多く、23、24度くらいの気温で蒸し暑さもないため、天国のように感じるそう。今回はサンファン島群のいろいろな島を観光したり、のんびりする予定とのことだった。
番組MCの渡部一実さんが「素晴らしい。そんなヨットの朝に無粋な話をうかがいます」と前置きしながら、マーケットの話題を切り出した。
トランプ政権の判断で、エヌビディアの中国への輸出が規制緩和されて、株は素直に上がっていることをどう見ているのか、ポールさんに質問した。

ポールさんは今回の輸出規制緩和を「大きな転換点だった」と見ている。
というのも、アメリカは今までオープンな社会で、競争には必ずと言っていいほど出ていたけれど、エヌビディアの中国への輸出はバイデン時代から禁止され、トランプ政権下でも続いたことで、社会が内向きになる恐れがあったそう。
ただ、それでは競争が出来なくなり、中国の市場をファーウェイなどの競合に渡すことになるため、エヌビディアのジェンスン社長がトランプ政権を説得したようだ。
トランプ政権もそれに応じたことが、アメリカ社会にとって大きなプラスで、米中の関税交渉や、割安な中国のテクノロジー会社にもプラスに作用するとのこと。
渡部さんが続けて「エヌビディアの技術を盗まれないように閉じ込めるよりも、シェアを先に取ろうという発想なのでしょうか」と聞くと、そうでもないようだ。
「常に一番先端を走っていれば、規制などに守られる必要はない」とポールさん。競争に出たほうが強くなるという原理があり、それは、トヨタがグローバルに輸出したことで、日本の政治に守られる必要もなく、世界のナンバーワンになれたこと、中国がテスラを優遇して国内会社と競争させた結果、今はテスラの方が負けていることなどからも言えるそう。
エヌビディアの中国の売上比率は15%前後で、規制緩和による回復が見込めるし、AIの市場をさらに成長させることになるため、株式市場もプラスに反応することは妥当だとポールさんは語った。
パッシブ運用でもアクティブ運用でも、自分が何に投資をしているか、リスク許容度は合っているかを意識的に把握することが重要
続いては、パッシブ運用とアクティブ運用の話題に。
ザイ・オンラインで連載中のポールさん執筆の当コラム「成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)」を読んだ渡部さん。
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⇒パッシブ運用全盛時代だが、「アクティブ運用=劣っている」という単純な図式は誤りだ。比較すべきは「パッシブ運用 vs 才能ある運用者」
日本ではS&P500のETFが流行っていて、木村さんもS&P500のバンガードETFを保有していて、パッシブ運用が世の中にかなり浸透しつつあるけれど、パッシブとアクティブをどのように考えればいいのか、ポールさんに質問した。
まず「パッシブはもう1つの選択肢だ」とポールさん。パッシブのいい点は、S&P500など指数を扱うため売り込みやすく、ファンドが大きくなって流動性が高くなり、手数料が安くなるところにあるそう。
投資家は、自分だけ間違えて責任を取りたくない心理から、群れになやすい傾向があることも、パッシブが好まれる一因のようだ。
一方で、「本当にいい投資家は群れにならない」とポールさん。ウォーレン・バフェットも、一般の人はパッシブでいいと言っているけれど、ウォーレン・バフェット自身はパッシブを選ばないそう。
アクティブは、運用者が優秀ならパッシブを超えるパフォーマンスを出せるところがメリットである一方、手数料が高すぎるところに問題があるという。
もっとも、ポールさんが強調したいのは、パッシブ対アクティブの対立構造ではない。パッシブにはさまざまな指数があり、アクティブは運用者を比べる必要があるため、いずれにしても自分が何に投資しているのか、自分のリスク許容度に合っているのかを意識的に把握することが重要ということだ。
意識的に把握するというのは、パッシブなら指数の構成、アクティブならファンドマネージャーの方針、過去のパフォーマンス、ベアマーケットとブルマーケットの時の反応、ファンドの回転率などを頭に入れること。
中身の調べやすさではアクティブよりパッシブに軍配が上がり、マーケティングとしてもパッシブのほうが打ち出しやすいため、パッシブのほうがが大きくなりやすい傾向があるようだ。
ちなみに、ポールさんのメルマガで推奨するポートフォリオが、過去2年半でS&P500を140%上回っていることについて、ポールさんは「市場が悲観になった際に、テクノロジー株やAI株を拾ってうまく乗れたことと、石油株などでバランスを取って最大のリターンを出そうとしている」とコメントした。
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ここまで、7月15日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(直近2年半で140%上昇)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。また、動画配信も予定しているので、こちらも注目だ。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。