さらにウォーレン議員は、これまでに認められた買収の解消を検討する担当官を任命する方針も明らかにした。解消を検討する具体的な案件としては、アマゾンによるホールフーズ、ザッポスの買収や、フェイスブックによるワッツアップ、インスタグラムの買収などが挙げられている。
農畜産業にも広がる批判
標的はハイテク企業だけではない
民主党による批判の対象が巨大なハイテク企業に止まるのであれば、特段目新しい話ではない。これまでにも、個人データの管理や2016年の大統領選挙での虚偽情報の取り扱いなどについては、議会の公聴会にハイテク企業の経営陣が呼び出され、厳しい追及を受けてきた。アマゾンがニューヨーク市への建設を発表した第二本社が、地元の反対で撤回に追い込まれたこともある。こうした展開は日本でも報道されており、広く知られているところだろう。
もっとも、ハイテク企業への批判は氷山の一角に過ぎない。米国では、幅広い業界において、企業の巨大化による寡占・独占の問題が意識されている。反トラスト法の見直しを含め、大がかりな方針転換が議論されているのが現実である。
たとえばウォーレン議員は、ハイテク企業の分割をぶち上げた約3週間後に、改めて巨大企業の問題を取り上げている。そこで標的となったのは、農畜産業における巨大企業の寡占・独占だった。ウォーレン議員は、「米国民が食に費やすお金のうち、生産者が手にするのは15%に過ぎない」として、鶏肉の飼育から流通までを取り仕切るタイソンフーズの存在や、バイエルによるモンサント買収などを例示したうえで、ハイテク企業と同様に、既存買収の取り消しを検討する方針を明らかにしている。
農畜産業における巨大企業の問題を指摘する民主党の候補者は、ウォーレン議員だけではない。ほぼ同じ時期には、バーニー・サンダース上院議員が、農畜産業における寡占・独占の問題に取り組む姿勢を強調している。また、コリー・ブッカー上院議員は、2018年8月に、農畜産業、食品、飲料などの分野における巨大企業による合併の許認可を、18ヵ月間停止する法案を提案している。
ハイテク、農畜産業以外にも、巨大企業による寡占・独占の弊害が提起されている業界は多い。たとえばウォーレン議員は、3月の農畜産業に関する提案において、銀行や医療保険における寡占・独占の問題にも言及している。