企業がまず給料を上げるべき
雇用の安定と給料を引き換えにするな

 今日本の企業がやるべきことは、人材をコスト削減の源泉とせず、優れた人材に対しては他国に遜色のない給料を支払うことだ。

 一部の企業では、その動きは始まっている。海外の人材を経営トップや取締役に迎える際、従来の自社の役員報酬では見合わないため、役員報酬そのものをグローバル並みに見直す動きが一部で広がっているのだ。トップ層の金額が上がれば、その企業の「給料の天井」が上がる。より下層の社員の給料も、次第に上がると期待される。

 日本の企業には確かに、他国と比べて雇用が安定しているという側面がある。ただ、今の状況は給料と雇用の安定を引き換えにしているようなもの。安定した雇用の代わりに、安い賃金に甘んじているのだ。

 日本が目指すべきサイクルは、まずは企業が給料を上げ、それによって転職市場が活性化し、良い意味で雇用の流動性が高まり、幅広い層で給料が上がっていく――という好循環だと提言したい。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic:Daddy’s Home