個人投資家に人気の高いメルカリは長期保有に向く?
個人間商取引プラットフォームを提供するメルカリ(4385)は長期保有に向く銘柄と言えるでしょうか? 私は、同社の10年後の成長した未来を想像するとワクワクするので買いだと考えます。
同社の2021年6月期の通期決算は売上高が前年比39%増の1061億円で、営業利益は51億円と黒字転換しました。2021年8月25日の株価終値は5400円で、時価総額は約8500億円です。
メルカリの長期リターンの展望とリスク
今後7年間、メルカリの売上が2割成長を続けた場合、売上高は約4倍になります。利益率が約4割なら、営業益は約1600億円になるでしょう。すると現在の株価を基に計算すると7年後のPERは6倍です。PER20倍が適正とするなら、株価のアップサイドは3倍で、7年で均等すれば年率リターンは15%と推定できます。TOPIXのトータルリターンが7%程度であるため、長期保有に向いていると言えるのではないでしょうか。
同社はプラチナ級の価値がある購買データを大量に保有しているため、今後の事業展開も有利な戦略で進めることができるでしょう。異業種への参入も容易です。非財務情報の最たるデータの資産性を考慮すると、現在の株価は適正どころか、割安ではないかと思えるほどです。
心配性であるマーケットを逆手にとる
株式市場を人の性格に例えるとズバリ心配性です。マーケットは様々な意見や感情、都合が交差する場所であり、長期的には概ね合理的なコンセンサスで株価が形成されます。しかし、短期的には投資家の売買需給で決まる傾向があり、売買時は人間の性格や心理が色濃く反映されます。
売買する人間は生命体です。生命体には防御本能が備わっており、危険なことが起こりそうだと感じたら本能が働き、わが身を守ろうとする傾向があります。株式売買で言うと、考えてもどうにもならないことや、将来起きる可能性が極めて低いことを心配し、恐くなって株を売ったりする場合があります。「杞憂」という言葉がありますが、杞憂こそマーケット心理をよく表した言葉だと言えるでしょう。
成長ストーリーを信じて長期保有できるのが魅力
長期投資家は、心配性であるマーケット心理を逆手にとり、利用しない手はありません。マーケットでは起きるか分からないことを過度に心配し、株価はそれを織り込んで安い水準にある場合が多いです。これまでの私の実感として、日本の株式市場はバブル期を除いて、心配がすぎて概ね安い水準にあると思います。
「いつもマーケットが割安なんていい加減なことをいうんじゃない」と叱られるかもしれませんが、本当にそうなのです。相場は近いうちに生じる未来は織り込むことができても、遠い将来は織り込むことができません。例えば、GDP(国内総生産)が年率1%の成長を続ければ、69年後にGDPが倍(連続複利)になるとしても、株式市場は織り込みません。織り込むのはせいぜい3~4年先の成長まででしょう。
長期投資の魅力は、市場が織り込まないような企業の成長ストーリーを信じて長期間保有できることです。メルカリで言えば、3~4年先の成長やリスクしか織り込んでいない投資家が多い中、同社が描く長期の成長ストーリーを信じて保有し続けられれば、大きく勝つことができるのです。
本日コラムは本日をもちまして連載を終了いたします。これまでご愛読くださり、ありがとうございました。
(DFR投資助言者 山本潤)