マザーズ銘柄は長期投資に不向き?
このところ日本株相場は軟調ですが、その中でも厳しいのがマザーズ市場です。本連載で何度か申し上げてきましたが、マザーズ銘柄を長期投資するのは難しいものがあります。下記は、各種の株式インデックスのキャピタルゲインについて、過去17年間の年率平均と標準偏差を連続複利ベースで求めたものです。
日経平均の過去17年間のキャピタルゲイン 平均値 +5.6% 標準偏差 22.4%
マザーズの過去17年間のキャピタルゲイン 平均値 ー0.6% 標準偏差 43.1%
東証2部の過去17年間のキャピタルゲイン 平均値 +6.6% 標準偏差 26.1%
長期投資ではキャピタルゲインの平均値が高く標準偏差が低いことが好ましいですが、マザーズ指数は平均値が低く標準偏差の高さが際立っています。インデックス指標であるにも関わらず、標準偏差は日経平均の約2倍です。標準偏差がこれだけ大きいとリスク管理が難しく、長期投資に向くとは言えないでしょう。
ポートフォリオは放置して自然回復力を生かす
株式投資のリターンにはキャピタルゲインとインカムゲインがあり、両者を合わせたリターンは7%程度あるというのが大方の市場参加者の見立てです。連続複利ベースで7%のリターンが17年間続き、配当を再投資したら、資産は3.28倍になります。これが長期投資の優位性です。
ポートフォリオを一旦構築すれば、銘柄の入れ換えはあまり行わず、放置するのが良いと思います。なぜなら、ポートフォリオは自然な回復力を持つからです。
企業業績は波があります。調子が悪い年もあれば、良い年もあります。調子が悪い企業の株価が下落し、ウエイトが自然と小さくなることで、ポートフォリオ内での役割も小さくなります。役割が小さいと、弱っている時は無理をさせず、元気に回復するまで待つことができます。一方、ナンピンなどして無理にウエイトを高めると、弱っている病人に鞭打つようなことになり自然な回復力を生かせません。
一方、実力がメキメキと上がり、それが評価されて株価が上昇した企業はウエイトが高まり、その分、ポートフォリオでの役割も大きくなります。このように元気な企業が当面頑張って仕事して全体を支えることでポートフォリオは安定成長します。やがて弱っていた企業も回復し、ポートフォリオで活躍できるポジションに復帰するものです。こうした好循環が生まれるのが放置プレーのよさです。
好調銘柄だけでポートフォリオを組むことはリスク大
短期投資家は元気の良い銘柄だけでポートフォリオを組みがちですが、まずい作戦です。理由は、元気のよい銘柄は他の投資家の期待も高いからです。期待が高いと株価は上がるのは難しいです。前出のインデックス長期比較で、東証2部のような地味な市場が最もパフォーマンスが高いのは人気がないからプレッシャーがなく伸び伸びとプレーできるからです。
DFR銘柄の参天製薬(4536)の株価は低迷していました。中国や米国に足場を築こうとして無理をしていたからです。国内だけではじり貧で、成長を求めて海外進出を拡大しました。当然コストがかかるので、投資家には敬遠されます。儲かったお金を海外に投資され、短期的に還元されないからです。
ところが、企業の持続性を考慮すれば海外進出の拡大は極めて真っ当な戦略で10年先を考えればそれしか作戦はありません。いずれ、海外で儲かるようになり、大幅にパワーアップして帰ってくるわけです。その際は以前のドメスティックな会社ではなく、グローバルな会社として評価されてウエイトは自ずと高まるでしょう。
シェアが高く社会的意義のある上場企業に投資せよ
このように経営者は常に企業の新しい可能性を試したり、採算の悪い事業をどうにかしようとしたり模索しています。社員も同様です。1年目より2年目、2年目よりも3年目に大きなチャレンジをします。自然とパワーアップするようになっているのです。
歴史ある上場企業は、世の中で考えうる中で人類の英知を最も集めた組織と言えます。未上場企業は個人経営が多くて廃業しがちで、節税や贅沢のための経営も多いのが現状です。IPO銘柄は上場がゴールになってしまう企業もあります。
DFRでは歴史ある上場企業の中でもシェアが高く、社会的意義があり、経営者も社員もガッツがある会社を重視して銘柄を選定しています。こうした特性は経年劣化しにくいです。高い志は次世代に受け継がれ、長期成長を自ずと志向していくのです。
(DFR投資助言者 山本潤)