NMKVは、当初三菱自のekシリーズと日産のデイズを共同開発し、13年に世に出した。この13年には、日産・三菱自・ルノーの協力体制でBEVのエントリーカーを開発し、軽自動車の車台をベースとすることを発表している。その後、三菱自の燃費不正をきっかけとする業績悪化で日産が三菱自に34%出資し子会社化(2016年)し、NMKVによる軽自動車事業は19年から現在の分担に切り替わった。
今回の軽EV開発もNMKV主導の下で展開された。日産は軽EVの幕開けの象徴としてサクラとネーミングしたのに対し、三菱自は従来のekシリーズの一環として位置付けた。必然的に派手に軽BEVをアピールする日産に対して、三菱自は地味なイメージとなった。実際、両姉妹車の受注数はekクロスEVに対し、日産サクラが4倍だそうだ。三菱自としては、水島製作所で両車を生産供給することで、「量」(工場の稼働率)を確保する実を取ったということになる。
このNMKVが今後、ルノーを含めた国際3社連合の行方にどう位置づけられるのか、あるいはルノーとの関係、日産と三菱自の関係がどうなるのかに注目が集まっている。
すでに周知の通り、ルノーはEV事業新会社「アンペア」の分離独立を決め、日産と三菱自にも出資を仰いでいる。ルノーにとってEV分社化は、事業改革の最大の目玉であり、何としても日産と三菱自の出資・参画を実現させたい。
ルノーのEV新会社構想に対し、日産は長年の懸案であるルノーとの資本構成の見直しをこの機に狙う。すなわち、ルノーが日産に43%出資し、子会社化している状況から脱却する。「ルノーのEV新会社に出資するなら現在の資本関係も対等にするのが望ましい」とし、水面下で交渉が進められていた。
一方、三菱自も「三菱自にとってメリットがあるか検討している。連合への協力は不可欠だが、短期間で結論が出るものではない」と慎重さを見せている。交渉は長引き、決着は年をまたぐことになった。
ルノーと日産は1999年以来の資本提携関係だが、長期政権だったゴーン氏は去り、ルノーの欧州圏における位置付けも変わった。ルノーの子会社の日産、日産の子会社となった三菱自だが、ここへきて日産、三菱自の業績回復も進んできており“発言力”も高まっている。
ルノーの支配力が弱まり、すでに軽EVで協業しているように日産・三菱自連合で結束を強めるという見方もあれば、三菱自に関しては三菱商事主導の下、三菱グループとして新たな方向を目指すのでは、という観測もある。
いずれにしても、日産・三菱自の軽EVがカーオブザイヤー三冠を奪取したことは、両者の関係性や3社連合での力関係を変え得る、一つの節目となるかもしれない。
(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)