海外を使った
富裕層の資産隠しに監視の目
富裕層の財産に関する情報収集にも、国税庁は余念がない。国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書などにより国内外を問わず富裕層の財産情報を報告させている。
さらに海外の税務当局との情報交換も積極的に行い、これらの情報収集を通じて申告漏れが発覚するケースも実際に出ている。相続税を合法的に引き下げる方法として、富裕層の間で生前贈与を活用した節税が広がっているが、これも今後難しくなっていくとみられる。
生前贈与が相続税対策になるのは、亡くなる前に財産を家族などに移転させることで、相続税の課税対象となる財産を減らせるからだった。その代わりに贈与を受けた人に贈与税がかかる恐れがあるのだが、贈与税の暦年課税制度には年間110万円の非課税枠がある。この非課税枠を利用することで贈与税の負担を抑えながら相続税の節税を行うことができる。
これに対して、相続開始前3年以内に行われた贈与を、相続税の対象にする生前贈与加算というルールが設けられている。ただ、裏を返せば被相続人が亡くなる3年より前に生前贈与を行えば、相続税対策が可能ということだ。
こういった状況から、やはり生前贈与は有効な相続税対策であるといえた。
しかし、23年度税制改正により、24年1月1日以後に行われる生前贈与から、相続開始前7年以内の贈与分が相続税の計算に含まれることが決定した。
これまでは相続税調査の過程で相続開始前3年より前の生前贈与が発覚しても、相続税の追徴課税にはつながらなかった。
状況によっては贈与税の申告漏れとして課税処分を行うケースはある。しかし、贈与税の調査可能期間は原則5年間なので、それより前に行われた生前贈与が後から発覚しても、追徴課税につながらなかったのだ。
しかし、相続開始前7年間の生前贈与が相続税に反映されるようになれば、これまであった「追徴課税ができないという問題」が解消される。税務署はこれまで以上に積極的に生前のお金のやりとりを調べることになるだろう。