公的保障の知識は不可欠!
万が一のときの「足らない分」は?

 まずステップ1は、見直しの基本であり、原則となる「考え方」だ。保険会社の営業担当者に商品をゴリ押しされて迷ったら、ここに立ち返って冷静に考え直すことをお勧めする。

 それは、あなたが備えておくべき必要な保障額は、「万が一のときの支出の見込み額-その後の収入の見込み額」であるということだ。

 一家の収入を支える大黒柱が亡くなった後の家計を想定してほしい。主な支出は普段の生活費、学費や塾代などの子どもの教育費、住居関連費などが挙げられる。

 それに対して収入は、遺族年金などの公的保障や企業年金、死亡退職金など、大黒柱の死亡によって支給されるお金に加え、貯蓄や配偶者の給料がある。

 その上で「支出-収入」を計算して導き出された額が、大黒柱が亡くなった後の「足らない分」、つまり生命保険で備えるべき「必要保障額」となる。この試算を間違えると、生命保険の過剰な契約、あるいは備えが足らない過小な契約となってしまう。

 支出や収入は、子どもの誕生や成長、独立、自身の転職や定年退職などで変化する。一度試算すれば、それで終わりではない。保険を見直すタイミングはライフステージの変化があったときだといわれるのは、そのためだ。

 必要保障額を試算する際に特に重要なのが、遺族年金だ。遺族年金の受給額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。子どもがいれば、子どもが18歳になるまで支給される。

 例えば、会社員(35歳)で月給35万円、家族構成は妻と子2人の場合、遺族年金は月額約14万円だ。ただし、手続きをしても実際に受給が始まるのは6カ月程度先で、その分を考慮して収入の見込み額を考えよう。

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の田中香津奈氏は「多くの方が遺族年金のことを考えずに生命保険を契約しています。必ずいつごろ、幾ら受給できるか考えた上で、必要保障額を算出してほしい」と話す。

 気を付けておきたいのは、生保会社の営業職員(生保レディーなど)らは、支出の見込み額を大きく見積もって必要保障額を説明し、高額な保障が付いた保険商品に誘導する傾向があることだ。不安をあおられ、焦って契約書にサインすることだけは避けたい。

知っておきたい高額療養費制度
自己負担額は意外と少ない

 次に、大黒柱が重い病気やけがで入院や通院を余儀なくされた場合も、想定しておきたい。収入が減るなど、亡くなった場合と同じように家計に大きな影響があるからだ。

 そこで、多くの人は医療保険に飛び付きがちだが、いったん立ち止まってほしい。公的な健康保険に加入していれば、誰でも利用できる高額療養費制度があるのだ。

 上図の例を見てほしい。年収約370万~770万円の69歳以下の人が、100万円の医療費がかかった場合の支払額を示したものだ。病院窓口での負担額は3割の30万円。そのうち、自己負担の上限額は8万7430円となり、残り21万2570円は高額療養費として後に支給される。

 さらに、加入している健康保険組合で「限度額適用認定証」を事前に申請しておけば、病院の窓口で30万円を立て替える必要はなく、8万円台の支払いで済む。これならば、多くの人が貯蓄で賄えるだろう。

 ただし、だからといって医療保険が全く不要と考えるのは早計だ。重い病気やけがをして入院や通院をした場合、交通費や食費など何かとお金がかかる。それを見越して、何にでも使えるまとまった一時金がもらえるタイプの医療保険が多く販売されている。

 具体的に、自分の自己負担限度額を知るには、日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」や、インターネットの「ねんきんネット」で、標準報酬月額を確認してほしい。