加盟店オーナーとベンダーが離反すれば
競争力を失うことになりかねない

 SEJの変調の兆候はすでにある。コロナ禍や電力代の値上がりなどで中食ベンダーの経営体力が奪われ、「SEJが開発したい商品を製造するために必要な投資をしてくれるパートナーが少なくなっている」(SEJ関係者)のだ(詳細は本特集の#5『セブン強さの源泉「食品開発・鉄の結束」に綻び!?中食ベンダーの経営悪化&撤退で揺らぐ王座』参照)。

 加盟店オーナーとの関係も波乱要因になり得る。オーナーは本部にロイヤルティー(粗利にチャージ率を掛けたもの)を納めるが、SEJのチャージ率はファミリーマートやローソンより高い。

 それでもオーナーがSEJとの契約を続けるのは、日販(店舗当たりの1日の売上高)が67万円と、競合の2社より13万円以上多いからだ。この格差は、SEJの最大の武器である食品の売れ行きが良いために生じる。

 つまり、SEJは「食品の商品力」→「日販の向上」→「店舗数の拡大」→「高いロイヤルティー収入」→「商品開発力の向上」という好循環を生むことで、チャンピオンとして君臨してきた。

 店舗数の拡大は、特定地域に集中出店するドミナント戦略が取られてきた。これは売り上げを伸ばしたい本部には有利だが、近隣店同士が需要を食い合うことになるのでオーナーには不評である。

 だが、オーナーやベンダーはSEJの成長性と収益性があるからこそ不満をのみ込んできた。店舗数の拡大や食品の魅力を基軸にした明るいビジョンが見えなくなれば、オーナーやベンダーが離反し、競争力を失うことになりかねない。

ファミマは広告事業で
ローソンはネット販売の本格展開で勝負

 横綱相撲のSEJに対し、新しい土俵をつくって戦おうとしているのがファミマとローソンだ。

 両社は、親会社の総合商社の広い知見を活用できる強みがある。

 ファミマは伊藤忠商事と店内のディスプレーなどへの広告配信を本格化。5年後に100億円の利益計上を目指す(詳細は本特集の#11『ファミマ&伊藤忠「広告事業」の野望、店舗やアプリを媒体に5年後利益100億円を目指す』参照)。

 ローソンは三菱商事とインターネット販売を強化中で、売上高を1割以上増やそうとしている(詳細は本特集の#4『ローソン&三菱商事が大勝負!「アマゾンに勝つ新型ECプラットフォーム」の全貌』参照)。

 SEJが「何を売るか」という従来の土俵で勝負しているのに対し、他の2社は「どう売るか」という別の競争軸を立て、経営資源をシフトしているのだ。

 SEJにとって、商社系列に属さない独立した立場にいるのは強みだった。取引先を競争させ、品質が良く、価格が安い提案を採用することができたからだ。しかし、この手法は、長期的な視点で成長するパートナーの関係を他社と築くのには適していない。

 孤高のSEJと、商社との提携で勝負する競合2社の生き残りを懸けた戦いが始まった。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic:Daddy's Home