【99】2011年
東日本大震災と原発事故
連続特集「負けるな日本」
2011年3月11日、金曜日の14時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生した。編集部はそのとき、3月26日号の制作作業の真っ最中だったが、当初予定の誌面構成を大幅に差し替えて23ページにわたる緊急特集を組んだ。
2011年3月26日号「緊急特集 列島激震」は、2部構成となっている。第1部「原発メルトダウンの恐怖」では福島第1原子力発電所事故の速報とともに、電力供給に立ちはだかる壁、見直し必至の原子力政策について論じている。第2部「経済縮小の危機」では、経済損失は20兆円とはじき出し、復興財源の調達や、インフラ寸断による国内産業への影響、とりわけ自動車、電機業界といった主要産業への波及を予測している。
そして、翌週号の4月2日号からは3号連続で、「負けるな日本」と題したシリーズ特集を展開した。第1回の特集の前書きにはこう記してある。
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当面、経済活動の急激な落ち込みは避けられない。
壊滅的な打撃を受けた企業にとって、再建はいばらの道である。
だが過去において、日本は何度も、厳しい難局に直面し奇跡の復活を遂げてきた。
今回の危機に対しても一刻も早い復活を願い、弊誌は3回連続で特集を組むことにした。
「負けるな日本」の第1回は産業・企業編。
危機に直面したことで、 抜本的な解決を避け、生存競争を凌いできた企業も、これ以上の先送りは難しくなった。
今回の事態は過去のしがらみや業界慣習を壊す絶好の機会でもある。
たまりにたまった膿を吐き出すことで、新たな再興の道が見えてくるはずだ。
今特集では腰の重い企業に代わって、業界ごとに抜本再生の絵姿も描いてみた。
戦後最大ともいわれる危機の克服に向けて、今、日本企業の底力が試されている。
負けるなニッポン!』
「負けるな日本」シリーズ第1回の産業・企業編では、経済やインフラの復興に向けて、「今、企業として何ができるのか」をテーマに掲げている。生産拠点の破壊、物流機能の破壊、電力不足、通信機能の破壊、原発問題の継続を、経済活動を阻害する五つの難題として列挙し、官民挙げて何からどう取り組むかを提示している。また、エネルギー、電機・精密・機械、電子部品、自動車・自動車部品、運輸、住宅・不動産・建設、保険、食品、小売り、鉄鋼・非鉄・電線、化学の全11業界200社について、震災から1週間後の株価騰落率と業績へのインパクト、今後の事業運営上のポイントとなる事項についてまとめている。
シリーズ第2回(4月9日号)は「日本経済はどうなる?」では、財政出動に対する当時の菅直人政権の思惑とあるべき姿、さらに株や為替、金利はどうなるか、市場の今後の動向を追っている。そして第3回(4月16日号)は「電力喪失」と題し、原発事故を機に企業や国民が直面した電力不足についてその構造や見通しを解説し、国や東京電力の責任やエネルギー政策の是非について論じたものだ。
もっとも、予定の3回シリーズが終わっても、その後の特集ラインアップは震災を絡めたテーマが続く。4月23日号では、第1特集「食を守る!」で震災や原発事故を通じて高まる「食の安心・安全」への関心に応え、第2特集「歴史から学ぶ復興」では関東大震災、東京大空襲、阪神・淡路大震災、中越地震などの復興過程を振り返った。さらに5月14日号「震災に強い街」、5月21日号「原発 カネ・利権・人脈」、5月28日号「3・11後の業績はこうなる!」、6月4日号「揺らぐ職」と、原発問題や雇用被災など、震災がもたらした諸課題について幅広く網羅している。