“トヨタショック”を受け、2008年11月22日号では「日本経済崩落」と題して、国内景気の行方を検証している。とりわけ案じているのは、トヨタをはじめ日本経済を牽引(けんいん)してきた、ソニーなど輸出関連企業の急減速だ。
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(中略)
なにより深刻なのは、トヨタの経営状況が米国以外の主力市場でも刻々と悪化していることだ。欧州事業は四半期を重ねるごとに利益水準を下げ、第2四半期にはついに115億円の赤字に転げ落ちた。周知のとおり、金融危機が飛び火した欧州の景気は、米国の後を追うように悪化している。その影響をもろにかぶった格好だ。
中国、インドなど新興経済圏におけるビジネスも収益の伸びは明らかに鈍化している。特に米国向けの輸出に頼ってきた中国経済は減速傾向を強めており、二ケタ台の販売増は当面望むべくもない。
米国経済と世界経済は連動しないとしたデカップリング理論の誤謬をグローバル企業の窮状が証明している。
トヨタの急減速は当然、日本経済に多大な打撃を与える。ただでさえ、自動車産業は波及効果を含めれば1割産業(GDPに占める割合)といわれるほど裾野が広いのに加えて、02年以降の世界景気拡大期に、グループを挙げて、輸出増を念頭に、国内のオペレーションを拡大させてきたからだ。
日米貿易摩擦が沈静化したいまや、あまり注目されることはないが、トヨタの北米向け輸出は02年の85万台から07年には124万台に拡大している。トヨタは北米現地生産で賄い切れない部分を輸出することで、サブプライム問題を輸入していたともいえる。
折からの円高も追い打ちをかけて、北米向けに「レクサス」を製造していたトヨタ九州工場(福岡県)ではすでに減産の嵐が吹き荒れている。米国でのレクサス販売台数は今年1~10月累計で前年同期比18.3%減少した。米国高所得者層の買い控えは、遠く九州の経済にも影響を及ぼし始めているのである。
こうなると、懸念されるのが国内雇用への影響だ。トヨタは、「正規雇用は守る」というが、若者のクルマ離れなどで国内需要の回復の見通しが立たないなか、雇用喪失は自動車産業ピラミッドの裾野ではすでに始まっている』
トヨタの収益見通しは、1兆円の営業減益予想の後もどんどん悪化し、翌12月、09年2月と予想修正を繰り返し、最終的に08年度決算は4610億円の営業赤字となった。営業赤字となるのは創業期以来のことである。記事でも指摘した通り、日本経済における自動車産業の裾野は広い。リーマンショックに端を発する世界的な実体経済の悪化は、日本国内においても企業倒産や雇用の悪化、消費減退を招き、景気に暗い影を落としていった。