賢人に聞く日本の未来 木曽崇/国際カジノ研究所所長インタビューPhoto:Jun.Takai/Photocompany

インバウンドが消え青息吐息の観光業界。Go Toキャンペーンのドタバタ、地方自治体の観光の目玉であったはずの日本版IR(統合型リゾート)の大混乱は今後どうなる?特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#31では、観光・カジノ事業の専門家である木曽崇・国際カジノ研究所所長がアフターコロナの観光政策、そして日本版IR政策を喝破する。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

安かろう悪かろうで数を稼ぐ
コロナ前の旅行はもう終わり

――政府のアフターコロナ観光振興策である「Go Toトラベル」で混乱が相次いでいます。

 Go Toは、震災など自然災害後の観光振興策である「ふっこう割」をベースにして作られたものです。災害に見舞われた地域のインフラが復興され、そこに観光客を誘客することには、確かにふっこう割は効果がありました。ところがコロナの場合は、被害があった所から回復し元に戻る、というものではない。コロナ前の日常が完全に戻ってくるとは考えない方がいいし、コロナの感染拡大と収束は今後も中期的に繰り返される。そして、今後も永遠にGo Toを続けて旅行事業者を助け続けることは不可能です。

 そもそも、Go Toは、制度が始まる前から高齢者向けの団体旅行を外す、途中から東京を対象外にするなどのドタバタが続き、利用者も事業者も大混乱しました。需要サイドの盛り上げということももちろん大事なのですが、いろいろとケチがついたせいで「よし、観光に行こう」という気分を盛り上げることにもつながっていません。短期的な需要の盛り上げよりもまず真っ先にやるべきことは、「中長期的に見てアフターコロナの観光はどう在るべきか」を議論することだったのではないでしょうか。考え方を根本から変える必要があるのです。

――考え方を変えるとは?

 そもそも、コロナ前から日本の観光産業はいろいろな面で行き詰まっていました。