
上久保誠人
第251回
国民民主党と立憲民主党の合流が決まり、150人規模の野党が誕生する。しかし、これまでも繰り返されてきた野党合流に期待はない。中央集権体制・東京一極集中が崩壊し始め、大阪をはじめ地方自治体が迅速かつ実行力をもって政策を進める中、新たな希望になり得るのは、玉木雄一郎氏が結成する「玉木新党」かもしれない。今後どのような動きをするのか注目だ。

第250回
中国の「香港国家安全維持法」に基づく香港の民主派に対する弾圧が、世界中を恐怖に陥れているようにみえる。しかし、筆者は中国こそが追い詰められているとみる。2014年の「雨傘革命」から始まった失敗の連続によって、結果として到底「文明国」とはいえない野蛮で無様な手法を取らざるを得なくなったと考えるからだ。

第249回
次の覇権国家を狙う中国は、権威主義的な政治体制を民主主義に代わる「世界のモデル」だと考えている。そして、自国で発生した新型コロナウイルスへの対策をも、「中国モデル」の宣伝に利用した。しかし、次第にその裏側にある人権侵害や隠蔽体質が伝わり、世界は批判を強めている。やはりポストコロナ時代に目指すべきは中国モデルではない。今回のコロナ禍で見えてきたのは「コンパクト・デモクラシー」の可能性だ。

第248回
新型コロナウイルス感染拡大の「第2波」到来が指摘される一方で、安倍政権や地方自治体が経済再開の方針を後退させつつあることに、国民の間から落胆や不満が広がり始めているように思える。「進むも地獄、引くも地獄」という状況で、このままでは日本がもたない。今最も必要なのは、防疫と経済再開の二者択一ではなく、それらの両立だ。そこで、高齢者・基礎疾患を持つ人と若年層とを切り分けた対策を講じて防疫と経済の両立を実現する「第3の道」を提案したい。

第247回
「Go To トラベル」キャンペーンを巡る世論を読み間違え、方針が二転三転した安倍政権は無残な姿をさらしている。ただ、それだけをもってして「安倍批判」を繰り広げることは間違っている。この惨状は、過去も含めた全ての政治家が責任を直視しなくてはならない問題だからだ。

第246回
山中伸弥・京都大学教授のある発言が物議を醸している。「8割おじさん」こと西浦博・北海道大学教授との新型コロナウイルスに関する対談の中で「対策をしなければ今からでも10万人以上の死者が出る可能性がある」と指摘したのだ。この発言は、日本の政策立案における機能不全を物語っている。その理由を説明したい。

第245回
「解散風が吹き始めた」とされる昨今だが、安倍政権はコロナ対応を巡る支持率急落が連日報じられ、今選挙をやれば自民党は大敗するという予想があるようだ。しかし、早期に衆議院を解散して総選挙に打って出れば、安倍自民党は圧勝すると筆者は考えている。その理由は、コロナが世界的にポピュリズム(大衆迎合主義)を吹き飛ばしたことと深い関係がある。

第244回
北朝鮮による拉致被害者である横田めぐみさんの父親である横田滋さんが6月5日、亡くなった。拉致問題は長年の懸案であり、第2次安倍政権だけの責任ではない。ただ、現在の膠着状態は安倍晋三という政治家の言動に重大な責任がある。そしてその当時の言動は、大衆迎合的でご都合主義な現在の安倍首相の言動の原点といっても過言ではないのだ。

第243回
ノーベル賞受賞者である京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長は、日本の新型コロナウイルス感染拡大が欧米に比べて緩やかな理由があるはずだとして、それを仮に「ファクターX」と呼んでいる。山中氏がその候補の1つとして挙げたのが、京都大学大学院の上久保靖彦特定教授と吉備国際大学の高橋淳教授の研究成果だ。ウイルスには最低でも3つの型があり、それぞれの特性や感染経路によって国ごとの感染者数や致死率の違いを説明しようという「新説」だ。実は、この新説はすさまじい政治的破壊力を秘めている。その理由を解説しよう。

第242回
新型コロナウイルス対策に関する安倍晋三首相の一連の意思決定に対する世論の評価は低い。その理由は、安倍政権の意思決定プロセスに問題があるためだと筆者は考える。特にコロナ対策で陣頭指揮を執る「専門家会議」が、有事を想定せずに「平時」と同じパターンで発足されたことに問題の本質があると考える。コロナ禍を奇貨として、日本の政策決定システムの抜本的な見直しを考えるべきではないか。

第241回
筆者が本連載でコロナ禍に関連して「9月入学・始業」を主張した直後、この議論は急速に拡大。4月29日には安倍晋三首相が導入を検討する意向を表明するまでに至った。今回は「9月入学・始業」を絶対に導入すべき3つの理由について、教育現場の具体例を交えながら論じていきたい。

第240回
新型コロナウイルス対策を巡って、さまざまな地方自治体が中央政府の方針を破り、独自の対策を打ち出す事例が増えている。そして安倍晋三首相のお株を奪うかたちで、東京都の小池百合子知事や大阪府の吉村洋文知事、北海道の鈴木直道知事ら多くの都道府県知事が存在感を高めてきた。そんな今こそ、「小異を捨てて大同につく」ことで「地方主権」を掲げた新党を立ち上げ、新型コロナウイルス感染拡大の終息後の政権交代を目指すべきだ。

第239回
来週、国会では緊急経済対策を含む20年度補正予算案の審議が始まる。今回の緊急経済対策は、3月上旬に安倍首相が「全校一斉休校」を決断した頃に策定作業が始まったものだが、その前提となる条件が現在では完全に崩れ去っているのではないだろうか。「平時の経済をV字回復させる」ような経済対策は、いったん破棄して完全に組み替えるべきだ。この際、あえていえば「戦時体制」の予算を編成してはどうだろうか。

第238回
新型コロナウイルスの感染拡大と、それを受けた政府の非常事態宣言によって、多くの学校が休校の延長に追い込まれた。「学生の学ぶ権利」を守ることは重要だが、この「有事」において最優先に考えるべきは学生からの感染拡大を絶対に起こさせないことだ。そこで、筆者から一つ提案したい。こうした未曾有の国難を、日本の大学の国際競争力アップにつなげる妙案があるのだ。

第237回
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、本日4月7日にも安倍晋三首相が法律に基づく「緊急事態宣言」を出す方針だという。ところが、「あまりにも遅い」と厳しい批判にさらされている。その他のコロナ対策である「布マスク2枚配布」「所得減少世帯限定・自己申告制の現金給付」も同様だ。なぜ、こうなってしまったのか。そして、今後のあるべき姿とはどういうものなのかについて考えたい。

第236回
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を巡って、中国政府が自らの正当性を誇示するために欧米の対応の甘さについて批判を強めている。世界中が新型肺炎対策に追われて弱っているときに、「中国=権威主義が正しい」としつこく言われ続けたら、それを信じる人が増えてしまうかもしれない。そこで注目すべきは、中国のような強権的手法を用いずに、コロナの感染者・死亡者数を抑え込んでいる日本だろう。欧米が崩れつつある今、日本は自由民主主義陣営の最後のとりでとなっているのかもしれない。

第235回
安倍政権は「緊急事態宣言」を可能にする法案の成立を急いでいる。安倍政権が私権制限を含む「緊急事態法制」の成立を目指すことについて、納得できない、または不安な国民は少なくないだろう。そんな人を含めた全ての人に、法案が成立してしまった後こそ本当の「戦い」が始まることを伝えたい。

第234回
安倍晋三首相の「臨時休校要請」が批判を浴びているが、今回明らかになった深刻な問題は、安倍政権が発する「言葉」に対して国民が信頼を失ってしまっていることではないだろうか。指導者は有事の際に指導力を発揮するために、国民から信頼されていなければならない。今こそ、安倍首相をはじめとする全ての政治家が「謙虚さ」の本当の重要性を知るべきときではないだろうか。

第233回
「桜を見る会」問題に関するものばかりでなく、安倍内閣の開き直ったような国会答弁は、「国会軽視」と批判されてきた。突き詰めていくと、その背景には自民党の体質がありそうだ。世襲・年功序列・逆学歴社会という構図である。

第232回
新型肺炎の感染が拡大している。その対応で、どうしても看過できないことがある。世界保健機関(WHO)の「緊急事態宣言」が遅れに遅れたことだ。これはチャイナマネーを意識した「中国への忖度」であることは明らかであり、同じ現象は学問の世界にも及んでいるという。
