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長井滋人
中国住宅市場は調整長期化へ、時間をかけた“漢方治療”はさらなる停滞につながる
今後数年の中国経済は、4%程度の成長率維持が精いっぱいではないか──。そう悲観せざるを得ない理由は、行き過ぎた住宅市場の調整が長期化することだ。

来年(2024年)のドル円相場では、各国のインフレの展開とそれに対する金融政策面での対応が引続き鍵を握る。市場が現在織り込んでいるのは、米国、ユーロ圏ともに24年春頃には中央銀行が利下げを開始し、その後は似たようなペースで利下げが進むという展開だ。足下で円が買われているのは、日本では利下げがないという点で金利の方向が欧米と逆であることが大きい。ただ、来年の為替予想を左右する各国の成長やインフレ、金融政策の動きを巡る不確実性は非常に大きい。ドル円相場に有意な影響を与えるサプライズの火種が、日米欧の金融政策それぞれにおいて存在することを大胆に指摘する。

米国の女性労働参加率はコロナ禍後に急上昇、経済軟着陸の援軍になるか
女性の社会進出において、米国は先進各国の後塵を拝している。ただ、コロナ禍からの回復局面で、米国女性の労働参加率の上昇は目覚ましい。そして、これがインフレ退治に苦戦している米国経済を軟着陸させる強力な援軍となっている。

5月まで3%半ばで推移していた米国10年国債の利回りが急上昇するなど、米欧の長期金利が高水準で推移している。金利上昇の動きが今後どの程度続くかを判断するには、FRBがどのように長期金利を押し上げているかについて踏み込んだ分析が不可欠だ。イールドカーブの変化が、①短期政策金利の予想経路(パス)と、②タームプレミアム、という2つの変動要因のいずれによるものかを要因分解し、中立金利決定の構造要因やタームプレミアム拡大の原因を考察するなど、金融当局が活用する高度な分析手法を駆使して今後の長期金利の行方を占う。

株式と債券の組み合わせによるリスクヘッジ戦略が揺らいでいる。これまでは株式相場が下がったときの債券高(金利低下)が期待され、株式と債券を6:4の比率で持つのがヘッジ戦略の基本とされてきた。ところが昨年以降は6:4の黄金戦略の神通力が効かなくなり、投資リターンにおいて金融危機以降最大の落込みをみせている。株式と債券の組み合わせによるリスクヘッジ戦略が揺らいでいる理由を各国中央銀行による金融政策の変化から読み解くとともに、インフレ環境の時代に戻っていく今後における新しいヘッジ手段を真剣に考える必要性を指摘する。

バブル崩壊後の日本と同じように、バランスシート不況が中国でも起きつつあるのではないかという議論が盛り上がっている。投機抑制策導入から始まった不動産市場の調整は止まる気配がなく、不動産開発業者の資金繰り難が連日紙面を賑わす。中国のバランスシート不況が現時点では不動産セクターにとどまっているものの、中国当局が不動産バブルの本格処理に及び腰となっている理由を説明し、中国経済の停滞が長期化する理由をバランスシート不況だけでなく、今後の成長モデルの欠如にあることを指摘する。

米国で進む対中貿易の減少、ある先行指標の数字は西側全体への拡大を示唆する
コロナ禍下の混乱で一服していた米中デカップリング(経済分断)の動きが、再び勢いを増している。日米を除く西側諸国でも、デカップリングの動きは表面的な数字より進んでいる可能性はある。

高インフレに対する金融政策対応で、先進国と新興国の明暗が分かれている。欧米先進国の中央銀行は、高インフレを一過性と認識して対応が遅れた。その後、先進国中銀は引締めに転じたが、インフレは中銀の予測を何度も裏切って下げ渋り、後手に回った引締めは予想を超えて長期化して終わりが見えない。一方、新興国では順調にインフレ率が低下を続けている。経済構造や高インフレに対する金融政策における先進国と新興国の違いを解説するとともに、先進国中銀がインフレ退治で成功するために、従来の常識を見直す必要があることや、結果として金融市場に構造変化をもたらす可能性を指摘する。

欧米先進国・中央銀行が利上げの動きを続けており、市場が戦々恐々としている。利上げ継続の背景にはインフレ対応が後手に回るという危機感があるが、金融引き締めが行き過ぎると景気が予想以上に悪化するリスクも高まる。金融政策の効果が波及する時間差(ラグ)がインフレと景気では異なることや、金融「引き締め過ぎ」リスクが最も高いのがユーロ圏であることをインフレの内容から解説するとともに、資産価格下落に伴う金融不安の展開もあり得ることを指摘する。

米国政府は次世代戦略産業の生産過程を国内に呼び戻す「リショアリング」を推し進めている。昨年夏の関連法案成立後、巨額の補助金支出の影響が早くも統計に出始めている。しかし、事はそう単純ではない。

資源価格と円安の落ち着きに加え、供給サイドのインフレ圧力が後退してくることから、インフレ率は年後半から一旦は急速に低下する見込みだ。しかし、本当の勝負はその後だ。一旦低下したインフレは、企業の賃上げと価格戦略の変化によって再び上昇に転じることは間違いない。今回の値上げラッシュが一過性ではないことを日銀短観の調査結果などから指摘するとともに、値上げラッシュ後に2%インフレ目標達成のカギを握るのが企業の「値上げ力」にあることを解説する。

中国の景気回復は、先進国が利上げや金融不安で苦しむ中、世界経済を支える救世主として期待が高まっている。実際、今世紀に入ってから、金融危機など先進国が原因で世界経済が急減速した際には、中国が常に大胆な景気刺激策を打ち、成長加速と輸入の増加を通じて世界経済の回復を助けてきた。しかし、今回の場合、中国の景気回復があっても、世界経済への波及効果に過度な期待はできない。中国当局の景気刺激策や潜在成長率などから、中国の「輸入力」が中長期にわたって減衰する可能性が高いことを示し、中国の輸入力の低下が米中覇権争いに影響を及ぼす展開を論じる。

米国のシリコンバレー銀行(SVB)に始まる銀行不安は、海を越えて欧州にまで波及し、世界経済を大きく揺るがしている。足元では、欧米当局のスピーディな対応もあり、銀行システム全体に及ぶシステミックな金融危機には発展する可能性は、今のところ小さいとみられるが、今後もFRBやECBの利上げが続けば、SVBショックが今後どの程度収束するかに止まらず、金融システムの綻びが他にも新たに出てくる展開もあり得る。金融システムの不安定化に発展するトリガーとして警戒すべき点として銀行の与信基準の動きを指摘するとともに、与信基準のタイト化が不動産市場に波及するシステムや、考えられる最悪の結果を明快に解説する。

米欧の雇用指標が予想以上に底堅い。その結果、多くの国が景気後退を回避して軟着陸するのではないかとの楽観も広がっているが、雇用が減少しなければ景気後退はないと決め付けるのは早計だ。

米国で金融引締めが長期化すると、景気への悪影響は米国に止まらず、全世界に及んでいく。中でも心配なのは、新興国における金融政策運営への影響だ。今後FRBが引締めを続け、その後も利下げになかなか転換しない場合、新興国は身動きが取れない状況が続き、世界景気は一段と悪化することも懸念される。新興国の中銀がFRBの利下げを待たずに利下げに踏み切るケースを取り上げるとともに、新興国におけるインフレの波及経路を解説し、新興国が米国よりも早く利下げに踏み切る可能性を論ずる。

コロナ禍は経済活動に不可逆的な変化をもたらした。特にリモートワークの普及は、柔軟な働き方の選択肢として定着する見込みで、コロナ後の経済の生産性上昇に大きく寄与するとの期待も高まる。ただ、リモートワークへの転換が可能な職種や産業は高付加価値のサービス業などに限られる。

供給サイドのインフレ要因は後退しているが、欧米先進国の中央銀行はタカ派的な姿勢を崩していない。今後の利上げ停止の時期や、その後に続く据え置き期間や利下げ転換時期について、市場の見方は大きく分かれ、大きな不確実性要因となっている。中央銀行のタカ派姿勢が変わらない理由を説明するとともに、市場の信認を失った欧米先進国の中央銀行が、再び信認を失ってしまうリスクを明快に解説する。

今年(2023年)の世界経済を展望すると、先進国を中心に多くの国が景気後退入りすることに議論の余地は殆どなく、今後の焦点は、景気後退がマイルドに止まるのか、深刻化するのかという点だ。今年の景気後退が多くの国で不可避となる理由に加え、景気後退時の様子を明快に指摘するとともに、景気後退後の次の景気拡大の様子を大胆に展望する。

中国経済は2010年代に平均8%近い高成長を遂げたが、今後10年間は4%台にまで大きく減速する見込みだ。ここで不動産バブルの処理に失敗すると、一段の失速は避けられない。不動産市場の過熱は著しい。住宅の新規販売価格の対所得比率は、全国平均で8.5倍。これは、サブプライム危機前の米国の5.8倍を大きく上回る危険な水準だ。

コロナ発生直後の世界経済の落込みは、国際金融危機の時を遥かに上回り、大恐慌に匹敵する規模だったが、世界各国が大胆な金融緩和と財政発動に躊躇なく踏み切ったことで、世界経済のV字回復が可能となった。しかし、有効であった財政政策は、短期間で慌てて発動したものだけに完璧なものではなく、事態が落ち着くに連れて政策検証も徐々に始まっている。財政政策を検証する上でのポイントを解説するとともに、財政政策と金融政策の組み合わせ(ポリシーミックス)のあり方と新しい形を考える。
