ダイヤモンド・ザイでは、ザイ読者10人の保有する投資信託が「いい投資信託」なのか「悪い投資信託」なのか、プロに診断してもらう特集『行列ができる投信診断室』を掲載。診断するのは、長年投資信託に携わってきた経験を活かし、投資信託を評価するデータベース「ファンド・ラボ」を開発した「投信の窓口」ファンド・リサーチセンター長の植村佳延さんだ。今回は、減配と基準価額の下落が止まらない、毎月分配型ファンドを保有する読者への診断を、抜粋して紹介しよう!
平田龍次さん(仮名・神奈川県・53歳)
30年超経ってから使うお金を準備するために、積み立てスタート。人気の毎月分配金が出るタイプに絞って3銘柄を選択したが、減配や基準価額の下落が悩みのタネで、継続保有していいものか迷い中。
★平田さんが保有する投資信託
◎PIMCO 米国ハイイールド債券ファンド(ブラジル・レアル)
◎ピムコ・グローバル・ハイイールド・ファンド(毎月)
◎ラサール・グローバルREITファンド(毎月)
平田さんの保有銘柄の診断結果(1)
⇒「PIMCO 米国ハイイールド債券ファンド(ブラジル・レアル)」
(保有額の19%)
「PIMCO 米国ハイイールド債券ファンド(ブラジル・レアル)」は、人気の米ハイイールド債券にブラジルレアルで投資する通貨選択型投信です。
平田さんが購入した2011年7月には150円だった分配金が、3度の減配を経て現在は35円。しかも、当時約1万円だった基準価額は、2016年9月末現在で2927円になり、信じられないほど下落しています。ブラジルレアルなどの新興国通貨は、人気が高い時に買うと、その後の悪材料で下落することが多いのです。
これまで受け取った分配金を加味すると、かろうじて収支はプラスですが、今も元本の取り崩しの特別分配が出ている状態で、元本は減少しています。
現状は、大幅な減配のおかげで、投信が受け取る利子・配当収入の範囲内で分配金が支払われており、払い過ぎの状況は解消しています。ブラジルレアルも不人気時こそ買い時という点を加味すると、これから買う人にはオススメのタイミングなので、保有継続もあり。ただし、ブラジルレアルの値動きの大きさを理解した上で保有することが条件です。
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平田さんの保有銘柄の診断結果(2)
⇒「ピムコ・グローバル・ハイイールド・ファンド(毎月)」
(保有額の8%)
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「ピムコ・グローバル・ハイイールド・ファンド(毎月)」は、通貨選択型ではない世界ハイイールド債券型ですが、5年間で4度の減配を実施しました。
1年の分配金を足下の基準価額で割った利回り12.8%に対して、投信の利子・配当収入の利回りは4.8%です。2016年6月の減配で、分配金の払い過ぎはかなり解消されています。
成績を見ると、過去10年間では同タイプ内の21本中8位ですが、5年では32本中16位、3年では58本中38位と平均かそれ以下。同じハイイールド債券型の好成績投信もあるので、乗り換えを検討すべきです。
ハイイールド債券は、利回りは高いのですが倒産リスクがあります。したがって、不景気の局面では注意が必要です。
平田さんの保有銘柄の診断結果(3)
⇒「ラサール・グローバルREITファンド(毎月)」
(保有額の33%)
「ラサール・グローバルREITファンド(毎月)」は毎月分配型で純資産3位の人気のリート型投信。リーマンショックで基準価額は大きく下落しましたが、その後はリート市況の好調が続いたため、平田さんの2011年3月の購入後は一度の減配だけです。
しかし、お悩みの通り基準価額はジワジワと下がっています。過去1年の分配金を直近の基準価額で割った利回りは26.6%ですが、1年間の基準価額の下落分を差し引いて1年前の基準価額で割った本当の利回りは、マイナス13.0%。投信が受け取る利子・配当収入の利回りは4%で、分配利回りとの差は22%もあり、分配金を払い過ぎている状態です。
リート市場が毎年20%以上も上昇を続けるのは困難でしょうから高分配を維持すると基準価額の下落が続く可能性は高く、いずれ減配もあり得るでしょう。つまり、平田さんの購入時の当初の目的である「安定的な分配金」は、期待しにくい状況なのです。
同タイプ内の成績も過去3年では96本中44位で半分以上ですが、過去5年では54本中26位、長期の10年では34本中25位に沈んでいます。
以上のことをふまえると、このままでは、基準価額の下落が続き減配の可能性もあります。適正な分配を出しているリート型か、基準価額が安定している債券型などへの乗り換えや分散が必要でしょう。
ポートフォリオの診断結果は…
30年後に使うお金の運用なら
無分配で資産増加を狙うべき
そもそも30年後に使うお金が目的ならば、毎月分配型の投信を選ぶのは適切ではないでしょう。
月々の分配金を受け取らず、複利効果を最大限に活用して増やすほうが、よほど30年後に資産を作れている可能性があります。
長期で好成績の先進国株型と債券型の投信を選んで、国も分散投資すれば老後の資産形成は、それほど難しくはありません。
さらに、通貨選択型などでブラジルレアルなどの新興国通貨に投資する際は、買い時を誤ると基準価額が下落する可能性があります。分配金目的だとしても「人気だから買う」のは疑問です。
「グロソブ」も「さわかみファンド」も!有名投信が勢ぞろい
ダイヤモンド・ザイ1月号の「投信診断室」をチェック
今回は毎月分配型ファンド3種類の積み立てをしている平田さんの例を紹介した。ダイヤモンド・ザイ1月号の「行列ができる投信診断室」特集では、他にも悩める投資信託保有者の診断を紹介している。毎月分配型ファンドだけでなく、「ひふみ投信」や「さわかみファンド」といった独立系の人気商品、「グロソブ」などのメジャーな銘柄も多数登場するので、投信を運用する際の参考にしてみてほしい。
また、現在今回診断をしてくださった「投信の窓口」ファンド・リサーチセンター長の植村佳延さんが解説する『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ザイと投資信託の窓口が作った投資信託のワナ50&真実50』も発売中!全国の書店やアマゾン、楽天ブックスなどで、ぜひチェックを!
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