上手に使えば長期での資産作りに最適な投資信託。しかし、保有する投資信託の本当の実力やリスクがわからない人も多い。そこで、ダイヤモンド・ザイ1月号では、ザイ読者10人の保有する投資信託が「いい投資信託」なのか「悪い投資信託」なのか、プロに診断してもらうことに。診断してくれたのは、長年投資信託に携わってきた経験を活かし、投資信託を評価するデータベース「ファンド・ラボ」を開発した「投信の窓口」ファンド・リサーチセンター長の植村佳延さん。ここでは、その厳しい(?)診断結果の一部を紹介しよう!
田口恭子さん(仮名・愛知県在住・52歳)
10年以上前から、人気の銘柄を中心として投資信託を買い始める。ただし、買った後は保有投資信託の見直しやリバランスなどをせず、ほぼ“ほったらかし”の状態。
★田口さんが保有する投資信託
◎グローバル・ソブリン・オープン
◎ピクテ・プレミアム・ブランド・ファンド
◎ワンプレートランチ[グローバル3資産ファンド]
田口さんの保有銘柄の診断結果(1)
⇒「グローバル・ソブリン・オープン」(保有額の32%)
「グローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)」は、かつては圧倒的な人気を誇っていた先進国のソブリン(高格付)債券に投資する投資信託。田口さんは先進国の金利水準が現在より高かった2005年に一括購入しています。
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が、この間に世界の経済状況は一変。リーマンショックを経て、欧州では日本に先駆けてマイナス金利が導入され、各国の金利も低下。グロソブが、保有する債券から受け取る利子の最終利回りは1.17%(2016年10月末現在)で、ここから信託報酬の1.35%を差し引くと、なんとマイナスです。
円安にならず金利が横ばいの場合、運用収益がコスト以下となる「水没」状況に。安定的な値動きが期待される先進国債券型も、世界の経済状況によっては利益が出なくなるのです。
しかも、買ったのは「1ドル=120円台」の円安時。2015年6月には一時120円台を回復したものの、2016年10月末時点では為替差損が出ています。債券型は株式などと比較すると、為替の影響が大きくなるので、買い時には注意が必要です。
ただ、分配金が減額されており、実績以上の分配を出す「払い過ぎ」状態からは脱出しています。一方、運用成績は同タイプと比べて平均並みが続いており、先進国の債券に投資する時に、グロソブでなければいけない理由は乏しいです。
田口さんの保有銘柄の診断結果(2)
⇒「ピクテ・プレミアム・ブランド・ファンド(3カ月)」
(保有額の35%)
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世界的なブランド力を持つ企業に投資する、「先進国株式型」の投資信託である「ピクテ・プレミアム・ブランド・ファンド(3カ月)」。この手のテーマ株型投資信託の設定が相次いだ、2007年1月に一括で買っていますが、その後、基準価額はピークをつけ、リーマンショックで大幅下落しました。
ただし、2015年には一時買い値以上まで上昇し、この時点ではこれまで受け取った分配金を加えれば大きく利益が出ていたはずです。
テーマ株型を買う時に注意したいのが、売買タイミング。長期でほったらかしにするのではなく、買う時には高値掴みを避け、利益が出ている時には利益確定をすべきです。
過去3年と5年の成績は同タイプで下位の20%のレベルで、「中長期で大きく増やしたい」という目的にもそぐわない状況になっています。
田口さんの保有銘柄の診断結果(3)
⇒ワンプレートランチ[グローバル3資産ファンド]
(保有額の32%)
「ワンプレートランチ[グローバル3資産ファンド]」は、世界の債券とリートと株式に3分の1ずつ投資する毎月分配型のバランス型投資信託で、株式部分には、10%程度新興国株も組み入れています。
田口さんは、2005年12月に一括で購入しており、これまで受け取った分配金を含めた収支はギリギリプラスでしょう。分配金を足元の基準価額で割った分配利回りが約4.0%なのに対して、基準価額の下落を加味した過去1年の分配利回りはマイナス9.9%です。
決して分配は払い過ぎではありませんが、成績はリートと株の割合が多いバランス型の積極型の中で、過去3年と5年で下位20%に入っており、10年の長期でも平均以下の順位で、決して成績がいい投資信託とは言えない点は問題です。
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設定直後に購入してそのままにしていますが、定期的に成績をチェックし、運用成績が同タイプ内で長期間下位を続けていたら、より好成績の投資信託に乗り換えるべきです。
バランス型は、資産分散が可能で、自動的に資産配分のリバランスもしてくれるというメリットがありますが、成績の不振時にその要因がわからないという点がデメリットです。
また、「ワンプレートランチ」が組み入れている投資信託自体も特に過去の成績がいい投資信託というわけではなく、リートを除いて同じグループの運用会社の投資信託を組み入れています。このように、バランス型はグループ偏重の投資信託組み入れが多いので注意しましょう。
ポートフォリオの診断結果は…
分配型では資産を大きく増やせない!
成績も分類平均以下の投資信託ばかり
まず、中長期で資産を大きく増やす目的なら、分配金を受け取る投資信託を選ぶべきではありません。3本とも成績は同タイプ内の平均または平均以下です。その当時人気だった投資信託を一度に買って放置せずに、定期的に成績のチェックをすべきです。
特にテーマ株型は、タイミングを図った売買が重要になります。また、グロソブのような先進国債券型投資信託も、低金利下では保有債券の最終利回りが信託報酬を下回ってしまうことも。金利が横ばいの場合は、円安にならない限り、収益は期待しにくい状況です。
保有投資信託に関する悩みは十人十色…
ダイヤモンド・ザイ1月号ではその他9人の患者を診断!
さて、ここまでは投資信託診断室の読者1名に対する診断を紹介してきた。ダイヤモンド・ザイ1月号は、その他9名分の診断も紹介している。さまざまなパターンの投資信託保有者がいて、お悩みの種類も多様なので、今現在手持ちの投資信託をどうするか決めかねている人は、解決の糸口を見つけられる可能性も高いだろう。
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また、現在発売中のダイヤモンド・ザイ1月号には、投資信託だけでなく株の特集も盛りだくさんだ。「2017年への日本株講座」と「合計利回り16%も!株主優待ランキング136」の株の2大特集があり、前者では2017年に株で儲けるために高配当株と超成長株に強い先生2人に登場頂き、オススメ株も含めて紹介。後者は大人気企画の株主優待ランキング。桐谷さんなど優待投資家15名とザイが選んだ株主優待株を紹介していく。
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