「毎月分配金が出ているので、運用が上手くいっている」という考えも、よく陥る勘違いだ。目論見書や運用報告書をよーく読んでほしい。「安定的に利益を分配することを目指す」と書かれているが、「利益を超えて分配金を出す」とも書かれているのだ。さて、これは一体どういうコトなのだろうか?
運用が上手くいかなくても分配金は出る!
分配金とは、金利・配当収入や投資資産の価格の上昇などで利益が出た場合、その額に応じて支払われるというもの。しかし、いわゆる毎月分配型ファンドは投資家のニーズに応え、毎月一定額の分配金を出すことが目的の1つになっている。そのため、運用が上手くいっていなくても毎月、分配金を出すのである。これが「利益を超えて分配金を出す」と言うことだ。
また、分配金は、預貯金でいう利子とは異なり、ファンドに集まっているお金(純資産総額)から支払われる。よって、分配金が出るとその額だけ基準価額は下落してしまう。
さて、そこで注意してほしいのが、「特別分配」である。図を見てほしい。購入した時の基準価額を個別元本というが、購入後、基準価額が上昇し、分配金が上昇分の中から出ていれば問題はない(分配後の基準価額が個別元本より上にある)。「普通分配」として、利益から出た分配金として受け取ることになる。
しかし、分配後の基準価額が個別元本よりも下落した場合はというと、個別元本との差額分は、単に自分の投資資産が返却されるだけの「特別分配」になってしまうのだ!
「特別分配」と聞くと、どこかスペシャルなボーナス分配の意味として、勘違いしてしまいそうだが、お得なことではまったくない。個別元本が取り崩されているだけだ。
ここにきて、この「特別分配」という言葉は、誤解を招く傾向があることから、「元本払戻金(特別分配)」という新たな表記に、順次切り替わっていく予定である。
(文/大沢玲子、本誌編集部、イラスト/佐藤ワカナ)
*ダイヤモンド・ザイ2012年5月号より転載
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