★★★★★ (5段階中5 強い買い推奨)
目標株価3500円
堅調な業績に対して株価は割安
1)堅調な業績の拡大が続くと見込まれること
2)成長力と比べた現状の株価水準が魅力的なこと
から投資判断は5とします。
投資用なのに住居用として偽ってフラット35を悪用する事例があるとされ朝日新聞に10連休中、フラット35の悪用についての記事が出ました。ARUHIは「コンプライアンス ファースト」というスローガンを掲げ、かねてから、売上よりコンプライアンスを重視する経営です。
フランチャイズオーナーに対しても投資用に回すことはあってはならない旨を開業以来、徹底しています。アルヒの調査によれば、投資向け不正の件数は全体の極わずかであり、彼らの成長を阻害する要因とはなりません。
投資家は、企業を競合関係を整理しようとします。自動車であればトヨタとホンダは競合関係にあると。しかしアルヒは他人との競争に身を投じている企業ではありません。あるべき金融機関の理想やあるべき住宅ローンの理想を掲げ、現実を理想へと進める努力をする企業です。理想と現実との間には大きなギャップがあります。ですが、そのギャップを毎年のように埋めていくことが、そもそも仕事をする意義であると考える企業なのです。
外資系IT企業で実績を積んだCEO
CEOの浜田宏さんは、ずっと外資系のIT業界で実績を積まれた方です。上場前、アルヒはファンドの傘下にあったため、当初は同社の顧問(相談役)でした。相談に乗るうちに、金融業界はハイテク技術の力を導入すれば大きく変身させられる業界であると感じたのです。アルヒはまだ小さいからこそスピードが速いのに、それが十分に生かされていない状態でした。銀行に倣って土日を休みにしたり午後6時にお店と本社の電話が通じなくなったり、顧客に寄り添うという形ではなかったのです。
3年前の会長就任を機に改革に着手し、社名も新しくします。ですが、浜田さんは他社との競争を掲げません。アルヒをメガバンクに負けない大きな金融機関にすることを目指しているのではなく、
30年50年という長い時間をお客様と共にあゆむ、人生のパートナー会社にすることを決意されたのです。
世帯年収でローンを審査し、融資可能額を提示
金融業界では、住宅ローンの審査は、画一的なものでした。派遣社員という立場ではローンはおりません。日本に住む外国人にも、転職したばかりの方も、住宅ローンはおりないのです。また、年収がある程度なければ審査に通りません。これまでの住宅ローンは、審査に通るか通らないかのゼロサムでした。
これをアルヒは改革しました。
世帯年収という概念を導入。若い夫婦二人の年収で審査するなど、ゼロサムではなく、ケースバイケースの審査で、融資可能額を顧客に提示するのです。
年収や年齢等に応じて、あなたならば2820万円、あなたならば3425万円と融資の目処となる数字を物件情報なしで提供します。これにより、ゼロサムの業界を変貌させたのです。これは融資する側にとっても顧客にとってもwin-winの状況だと私は感じました。
アルヒはなぜ物件情報なしで融資額を算定しているのでしょうか。その理由の一つは、業界では当たり前となっている物件探しからローン審査の順番が逆ではないかと彼らが考えているからです。
本来であれば、家を買うのであれば、夫婦の合わせた年収、あるいは、住みたい街などから、無理のない融資の範囲で家を選定するというのが自然な順序です。
融資の範囲で購入できる家を探すという流れです。
しかし、現実は、マンション業者が大々的に宣伝し、カラフルで派手なチラシを配布し、モデルルームを設置し、来場者にお土産を配り、購入希望者には提携先の金融機関への審査を行うというのが通常の流れです。
買える物件ではなく、買いたい物件を最初に探し、そのために融資を申請する流れ。これでは、無理な返済計画となる可能性があります。そうなればデフォルトを起こし、結局、顧客のためになりません。不動産屋さんのためだけの融資となってしまうのです。
スーパーフラット7など画期的な新商品を導入
アルヒでは、頭金をある程度、準備すると金利を優遇するという画期的な商品を準備しています。頭金の割合が高ければ、それだけデフォルト率は低下します。デフォルト率の低下により保証料が下がります。この下がった保証料を顧客に還元するという発想で生まれた新商品です。
それがスーパーフラット7という今年度の新商品です。頭金を3割入れることで、フラット35の金利からさらに0.15%の金利を優遇するのです。35年間、0.15%の優遇ですから、累計すれば5%を超える優遇です。同社の成長を牽引してきたのは、売上第一主義ではありません。こうした誰も提案しなかったよい商品を提供するので結果として売上が伸びているのです。
目標株価3000-3700円!
ROEの水準が20%程度ですが、今後数年はこの水準をキープできるでしょう。また、トップラインが10年以内には倍増できるでしょう。営業費用は売上にスケールしない広告費や人件費があるため、利益率は向上できるはずです。
わたしの予想としては8年後の配当は現在の3倍超の145円程度を想定しています。
一方、リスクですが、過去の株価の変動率の標準偏差はやや高く年率30%となっています。株価変動率から算出する割引率をかなり高めに取り、資本コストを10%と想定。7年後の130-150円の現在価値は60-75円で、TOPIX並みでこの配当を評価すると同社の理論株価は3000-3700円程度となります。
すなわち、アップサイドは長期投資では50%以上はあると判断しています。
リスクは金利の大変動で、ローンの申し込み件数が影響を受けることです。また、リーマンショックのような金融危機では、証券化ができなくなるリスクもあります。政府はリーマンショックで経済危機の処方箋を得ることができたため、その可能性は低いと考えます。
アルヒのサービス利用で車1台分のお得も
30年50年と顧客に寄り添うために、アルヒはアルヒ暮らしのサービスを提供しています。アルヒが70社以上と提携を進めてARUHIの顧客をライフタイムでサポートするサービスです。例えば、引っ越し費用の優遇では4万円のお得。家具や家電の購入でも6万円のお得。電気・ネット回線もお安く提供。
リサイクルやリフォーム、家事手伝いや子育てや塾や習い事も優遇します。カーライフやレジャーや旅行もお手伝いします。35年の間の顧客の節約はこのサービスをフルに活用すれば車1台から2台分になるといいます。提携先業者としても良質の顧客層を紹介してもらえます。アルヒと業者とはwin-winの関係にあるのです。
短期の株価に一喜一憂しない投資家に
業界の常識が世間の非常識になっていましたが、それを変える勇気が業界にはなかったのです。アルヒは社員300人規模の企業ですが、勇気を持って現実を理想へと近づける努力をし続けています。
投資家は、単年度の業績のモメンタムや色々な企業との比較で銘柄を選定してしまいますが、それでは自身の短期のキャピタルゲインしか手に入りません。そうではなく、現実を理想へと近づける企業を長期で応援することによって、非条理で不合理なものを世の中からなくして、よりよい世の中を作るお手伝いをすることが投資家の社会的な意義です。
徹底したテクノロジーの活用、あるいは出店や口コミによるサービス認知度の向上、そして、スーパフラット7に代表される魅力的な新商品の投入を続けることで、長期的には業績も向上していきます。長期保有をすれば報いられると考えます。
投資家の皆様においては、おかしな現実を真っ当な理想へと変革してゆく企業を長期で応援くださると幸いです。
実は、一つ一つの改革や新サービスは小さなものです。浜田さんは、社員とのディナー会を定期的に行っています。もうすでに4周目になっているそうです。そこで交わされる何気ない会話から、「次の理想」が生まれてくるのでしょう。次の理想は小さな提案となり、小さな改革となります。
これらの小さな出来事は、日々の株価には関係ないように見えます。しかし、長期的に見れば、一つ一つの対話の積み重ねは、大きな成果へと変貌していくのです。
短期の投資ではこれらの変化を感じることは難しいでしょう。しかし、長期投資においては、彼ら社員一人一人の小さな努力(しかし継続的な努力)が投資家にとっての増配やキャピタルゲインへと形を変えていくのです。
どうか、短期の株価に一喜一憂しないでください。
読者の皆様におかれましては、長期で企業を応援する投資家になって欲しいと願います。そして、せっかく長期で企業を応援するならば、現実を理想へと近づける企業でなければ、応援のしがいがないでしょう。
この連載は、10年で10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。