そうしたなかで迎えた17日の選挙集会は、米国における人種間の分断の深さを浮き彫りにすると同時に、再選を目指すトランプ大統領にとっては、白人の人種差別的な感情に訴えかける戦略の有効性が示された出来事となった。あれだけの論争があったにもかかわらず、トランプ大統領が演説でオマール議員を批判するや否や、人種差別的とされた「(国に)帰れ」を連想させる言葉を、大統領の支持者は熱狂的に唱和した。それは、誰に促されたわけでもなく、自然に生まれた現象だった。

「忘れられた人々」を動かした
非白人・移民への反感

 どうやらトランプ大統領は、人種間の分断を切り札に、2016年大統領選挙の再現を狙っているようだ。4人の民主党議員を巡る騒動に限らず、最近のトランプ大統領には、非白人に対して厳しい言動が目立つ。不法移民に関しては、強制送還を視野に入れた一斉摘発の方針が明らかにされている。急増する中米からの難民に関しては、来年の受け入れをほぼゼロにする計画が進んでいると報じられている。

 背景にあるのは、2016年の成功体験である。トランプ大統領が予想外の勝利を収めた理由の1つは、それまでの民主党支持から乗り換えた白人の存在にある。2012年にオバマ大統領に投票した有権者を追跡調査すると、2016年の大統領選挙では9%がトランプ大統領に乗り換えている。その8割以上を占めるのが、白人の有権者だった。

 立場を変えた白人の象徴的な存在が、中西部の白人ブルーカラー層である。2016年の大統領選挙では、ペンシルバニア州やミシガン州など、共和党が連敗してきた中西部の州における勝利が、トランプ大統領の誕生を支えた。その原動力となった中西部の白人ブルーカラー層は「忘れられた人々」と称され、製造業の停滞による経済的な苦境を理由に、トランプ大統領の米国第一主義に魅了されたと言われてきた。

 しかし、「忘れられた人々」がトランプ大統領に引き寄せられたのは、経済的な理由だけではなかった。実際には、経済政策では民主党の主張に近い有権者までもが、人種や移民の問題を理由に、トランプ大統領支持に乗り換えていた。そこで強い吸引力となったのは、メキシコからの移民に対する口汚い批判のように、人種差別的な感情を刺激したトランプ大統領の主張だった。

 世論調査によれば、2016年の大統領選挙は、人種や移民に対する考え方の違いが、投票する候補を選ぶ決め手となる度合いが、過去の選挙よりも高かった。特に、中西部でオバマ大統領からトランプ大統領に乗り換えた有権者には、非白人や移民への否定的な感情が強い傾向があったことが明らかになっている。