【取材で明らかとなった音楽従事者の「生の声」】

「ライブの集客数を減らしているため収益が厳しい。日銭で回している世界なので、その場その場で迅速な支援がないと本当に全てが壊滅する」(エンジニア)

「2月末の音楽業界の自主的なロックダウンにより仕事がなくなった。それにより収入が完全に絶たれてしまった」(楽器テクニシャン)

「現場がないため売り上げがありません。助成金の審査が平等ではなく、引き続き厳しい状況が続いています」(プロモーター会社)

「取引先からの入金がなく資金繰りに困っている。5月以降の売り上げは90%ダウンした。毎月約1000万円の倉庫代が重くのしかかっている。3年間の定期借地契約は解除できない。このままでは会社は1年も持たないだろう」(機材レンタル会社)

「ライブ収益がなくなり資金難に。アーティストへ仕事を依頼することができなくなった」(音楽プロデューサー)

「やることは増えたが収入がなくなり、日々の生活に困っている」(アーティスト)

「国の対策はあまりに日和見的であり、東京都の対策はほぼ都民任せ。一部の地域でコロナの感染者が多く発生すると、感染者たちのせいにする。特定の業種に対して『感染しやすい』という差別感を与えるのはもうやめてほしい」(音楽コーディネーター)

「『芸術家』という捉え方ではなく、『技術者』として社会に存在を認めてほしいです。文化事業といえども仕事をしていることには変わりないんです」(演奏業)

「人の集まる場が仕事場なので、仕事をしたいのに何もできない状態です。通常、われわれの請求は月末締めの翌々月末支払いです。今すでに7月ということは、9月末までは無給ということが決まっています。そもそも今年の7~8月は、オリンピック・パラリンピックを念頭にそのほかのイベントごとが減っていました。そのため、9月から仕事が再開できたとしても、無給状態は少なくとも11月まで続きます。この先いつまでこの状態が続くかわからない中では、この業界に多いフリーランスや小規模事業者は、いつ廃業してもおかしくないという状況です。行政には、収益に関してを含む現実的なガイドラインの一日も早い策定と、少しずつでも再開していけるような方針の打ち出しをお願い致します」(舞台監督)

「仕事がない。スケジュールをギリギリまで押さえられた上でキャンセルされるので、バイトもできない」(ローディー)

「自粛要請と『Go To トラベル キャンペーン』等、相反する施策によって民意が二分してしまっている。主催側がどちらに乗るべきかわからず、二の足を踏む要因になっている。行政は経済活動の制限と解除に明確な意思を持ってほしい」(レコード会社)

「コロナの影響で作詞の本数が減りました。作詞家は基本的に印税収入のみ。どんなに良い作品ができて称賛されても、印税が数円、数十円という仕事も今は少なくない。せめて演奏者くらいのギャラは最低限払ってほしいです。作詞した曲が、何らかの事情でリリースされなかった場合も、演奏者やエンジニア同様、作詞家や作曲家などの作家にもギャラを支払ってほしいです。業界の体制は昔のままで、未リリースの場合は作家にギャラを払わなくていいというのが慣習になっていますが(演歌は別かもしれませんが)、ただでさえこのように厳しい条件だったところに、じわじわとコロナの影響が浸透しています。音楽ソフト市場の売り上げが減っているのですから、当然、印税だけで食べていけるような人はごく少数です。ゆくゆくは音楽業界全体の活気が失われていくことになると思います。コロナ禍において、作家の仕事が減っていることは見えづらいかと思います。でもこの機会に、作家の現状を広く知っていただき、改善してもらえたらと願います」(作詞家)

「国に文化の重要性を理解してほしい」(作曲家)

「夜の街という敵視や差別をやめてください。百歩譲って、音楽イベントが『不急』だとしても、『不要』と言われることに納得ができません」(クラブオーナー)

「コロナ禍の前から人手不足の業界なので、コロナ終息後、果たしてどれくらいの照明さんが再開できるのか心配です」(フリーランスの舞台照明)

「予定していたツアーのキャンセル業務や、配信ライブの準備等、仕事は増えていますが、収入は激減しています。医療の崩壊と同じく音楽業界も崩壊しつつあります」(アーティストのマネージャー)

「イベントがほぼ全て中止となり、私たち裏方も活動の場がなくなりました。仕事場の家賃の支払いも難しくなってきています。外に出ることも難しい状況なので体力が落ちてしまい、再開となっても以前のように付いていけるか心配です」(舞台照明)

「コロナ禍でイベントが全て飛んだ。自粛と補償はセットにするべきだ。バンドももはやライブをやりたがらない」(ライブハウススタッフ)

「カラオケはマイクを使い回しますが、コンサートではそうした行為はしません。感染者が出るとやたらクローズアップされますが、音楽業界の感染リスクは世間のイメージほど高くはないと思います」(アーティストのマネージャー)

「ライブ自体がなくなったことで、撮影も展示も途絶えた。自分自身の声を冷静に整理できていないが、今後、以前のような状況に戻ることはないのかもしれない。正直、音楽業界に関わる写真家はこの先どうしていけばいいのか、答えは出ない。 高額なカメラのリースや機材車、スタッフなどを抱える音楽系の映像会社は、利便性から都内の高額な立地に事務所を構えていることも多いので、家賃を含め、代表者は苦悩していると聞いている」(フリーランスフォトグラファー)

「エンタメや音楽業界は、見た目も経済的にも華やかな世界として見られていますが、実態として、公演への補償やフリーランスへの補償など、未整備な部分が多いです。コロナ禍を機に、アーティストやフリーランスがレコード会社やイベンター、事務所としっかりと対等に交渉ができるような機関の構築を望みます」(音楽制作会社)

「コンサートやイベント、音楽フェスの中止により、仕事も収入もなくなった。大手プロダクションや関連団体等を含めた、もっと踏み出した協力体制による、音楽業界全体を包括した対策の構築が必要」(舞台スタッフ)

「自宅が賃貸で部屋数も少なく、子どもが小さい。在宅勤務を想定していなかったので、リモートの打ち合わせができず困っています」(アーティストマネージャー)

「イベントやライブがまったくできない。言葉も出ない」(音楽事務所)

「コロナで公演が軒並み中止・延期となり、先が見えない状況。満員電車は放置しているのに、なぜライブはダメなのか」(舞台スタッフ)

「文化に対する支援はありがたい半面、自分たちも新しい働き方を見いだしていかなければと思っています」(フリーランスの舞台照明)

「プロモーション活動がとてもしづらい」(マネジメント会社勤務)

「ライブハウスやレコーディングスタジオが休業し、音源制作や実演が不可能になってしまった」(ミュージシャン)

「行政の補償やガイドラインは、物理的な合理性のみに着目したもので、文化や芸術を広い意味で保護するという視点が存在せず、意味を成していません。普段から音楽や演劇、それに伴う飲食を楽しむ庶民の感覚や目線をまったく理解していないのが感じられ、とても残念です」(音楽プロデューサー)

「大手が各自、ライブ配信の仕組みを開発するのは自由経済上、当然のことではあるかもしれませんが、視聴方法やチケッティングに統一感がなく、オーディエンスの利便性を損なっていると思います。私たちはソフトを提供する側なのであまり強くは言えませんが、大手音楽事業団体の会合などからは、有意義な議論や手段がまったく聞こえてきません。それぞれ、自社の事業を維持するのに手いっぱいかとは思いますが、ハードを提供する事業者さんたちの連携がもっと必要なはずです」(ミュージシャン)

「アリーナやドームのような広い空間が密なのか?それなら電車の中の方がよっぽど危険だ。地下のライブハウスとの違いを分かってるのか?国はコンサートの主催者への助成金を数千億円積み上げたが、われわれのような立場の者には何も政策がない。35年にわたって音楽業界に貢献してきたが、壊滅へのカウントダウンが始まっている」(機材レンタル会社)

「どのような形で仕事を再開するべきか模索状態です。以前と同じ環境ではもう働けないと感じており、先の見えない状況にとても不安を感じています」(照明スタッフ)

「売り上げが完全に途絶えた」(ライブハウスオーナー)

「ライブやイベントが延期や中止になっただけでなく、今後のスケジュールさえ決めることができない。ただただ、不安でしかない」(アーティストのマネージャー)

Key Visual & Graphic by Hirokazu Mori(waonica)