2021年4~6月期の四半期決算発表が本格化
7月下旬から2021年4~6月期の四半期決算の発表が本格化しています。まだ始まったばかりですが、これまで発表があった企業を参考に、その特徴や今後の見通しなどを解説したいと思います。
私が1Q(第1四半期)決算で感じた特徴は3つあります。
①昨年4~6月が世界的にロックダウンをしていたこともあり、今期の1Q決算はその反動もあって大幅な増収増益を果たしている。赤字に陥っていた企業も黒字転換している場合が多い
②半導体不足などもあり在庫の水準が低いため、2Q以降の利益も出やすくなっている
③オンラインでの商談やテレワークの普及でビジネスの効率が高まり、収益改善につながっている
次に今後の見通しですが、
④為替は円安傾向が続き、製造業など外需企業が今後も恩恵を受けられそう
⑤需要が高水準で推移しているため、各社とも採算を重視して受注できている。値上げに成功している企業も多い
⑤マイナス要因は、下期以降に素材価格の上昇の影響が出る懸念がある。原油価格も昨年対比で上昇しており、電力コストが4Q(年明け)から上がることが予想される
直近のマーケットは、感染力が強いデルタ株の猛威で世界中で感染が拡大傾向にあり、VIX指数(ボラティリティ・インデックス 恐怖指数ともいわれる)は20前後(通常は10~20の範囲で動くとされ、30を超えると警戒領域)で高止まりしています。それもあり、米国の長期金利は低下しています。一進一退の相場が続きますが、為替が安定し、円高に大きく動かないことは日本企業にとって良い傾向です。業績は拡大傾向にあるため、通年でみれば収益拡大によって純資産や配当が伸びることが期待できるでしょう。
好業績銘柄を材料出尽くしで売るなんて、もったいないの極み
今回の決算発表に見られる特有の現象が、例えばファナック(6954)やエムスリー(2413)など業績が絶好調で通期見通しを上方修正するような企業でも、決算発表後に売られる場合が多いことです。いわゆる「材料の出尽くしの売り」と呼ばれる現象で、主に決算発表前後のタイミングで銘柄を売買する短期投資家による影響です。
材料出尽くしで株価が下がっても、長期投資家は気にする必要はありません。なぜなら、数週間も経てば遅かれ早かれギャップを埋めることが多いからです。好決算発表後に売る短期投資家に対して、私は「え、もう降りてしまうのですか?もったいない。これからが本格上昇なのに」と言いたいです。
ましてや1Qで通期の上方修正をした銘柄を売るなんて、もったいないの極みと言えるでしょう。これは映画館に行って予告編だけを見て、本編を見ずに帰ってしまうようなものです。1Qの好調の流れは、往々にして2Qにも引き継がれ、再度の上方修正へとつながっていく場合が多いからです。
業績が好調なら、決算直後の株価に一喜一憂する必要はない
私はDFR会員に対して、決算シーズンを迎える度に「決算直後の株価の動きに一喜一憂しないでほしい」と注意を喚起しています。決算直後の株価の騰落は短期トレーダーの思惑で起きているにすぎず、長期投資家にとっては余計な動きで「ノイズ」でしかないのです。
好業績銘柄であれば、決算発表直後に下落したとしても、その後、機関投資家の運用会議で話題となり、その後、企業取材が行われて見直されて、投資されるという流れに往々にしてなるものです。優秀な経営者が率いる企業であれば、投資家を長期で引き寄せます。株価が下がれば、買いたい投資家をより多くひきつけます。材料出尽くしによる株価下落は、すぐにファンダメンタルズが評価されて株価は戻るのです。
DFRポートフォリオ銘柄の業績も堅調
DFRポートフォリオ銘柄の業績も総じて堅調です。日本電気硝子(5214)は通期で配当を100円から110円とする増配を発表しました。補聴器を手がけるリオン(6823)の1Q四半期決算は売上高が昨年比21.8%増、営業利益も同97.3%増を果たしています。溶射加工大手のトーカロ(3433)も昨年の第一四半期と比べて7.9%の増収、21.6%の増益です。株価の動向に一喜一憂するのではなく、コロナ禍が続く中も懸命な経営努力によって業績が向上している企業をじっくり応援したいものです。
(DFR投資助言者 山本潤)