半導体 最後の賭け#7Photo by Reiji Murai

世界最先端の半導体の国産化を目指す国策会社ラピダス。その量産工場を建設する立地の選定作業が大詰めを迎えている。2023年度内に試作ラインの用地を確保し、それと同じ場所に27年稼働予定の量産工場を建設する。経済産業省は、立地コストから初期の設備投資を含めて3000億円規模の補助金を投下する方向で調整に入った。特集『半導体 最後の賭け』の#7では、巨額の国費が投じられるラピダスの生産拠点の立地候補を大胆に推測する。有力視されているのは三つの候補地だ。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

ラピダス研究拠点は「旧IBM研究所」に
3000億円投下の工場立地選定は大詰め

 神奈川県大和市。小田急電鉄の中央林間駅の近くに、かつて日本IBMの研究拠点だった旧大和事業所がある。PC「Think Pad」が開発された研究所として有名で、IBMのブランドを日本中に知らしめた歴史ある場所だ。

 国策半導体会社ラピダスが、この地に最先端半導体の研究施設を開設する予定であることが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。IBMはパソコン事業を中国レノボに売却。2012年に研究所は閉鎖されていたが、このたび、最先端半導体の重要拠点として蘇ることとなった。

 ラピダスは、IBMから最先端半導体の技術供与を受けることになっている。当座のところは米ニューヨーク州にあるIBMの研究所に社員を派遣して技術を習得する構えだが、国内の研究開発拠点として選ばれたのは、IBMにゆかりのある場所だった。

 それと並行してラピダスでは、生産拠点の立地選定作業が大詰めに入っている。同社は23年度内に試作ラインの用地を確保し、それと同じ場所に27年稼働予定の量産工場を建設する予定だ。

 経済産業省はすでに補助金700億円を確保していたが、この700億円は試作ライン設置に必要なEUV(極端紫外線)露光装置などの購入費用やIBMへの技術ライセンス料、数百人規模の社員の人件費など必要な資金を考えれば全く足りない。そのため経産省は、立地コストから初期の設備投資を含めて新たに3000億円規模の補助金を投下する方向で調整に入っている。

 それでは、ラピダスの生産拠点はどこに建設されることになりそうなのか。次ページでは、立地に適した条件を整理し、現時点で有力視される「三つの立地候補」を大胆に予想する。

 開発・試作に2兆円、量産プロセスに3兆円が投じられる巨大半導体工場の立地場所が、国家半導体戦略の重要拠点になることは間違いない。