総予測2024#32Photo:PIXTA

モノやサービスの価格やコストの上がり下がりで、企業から家庭までが振り回されている。なぜ値上がりするのか。なぜ値下げできるのか。「コンビニ」「電気料金」「新車」「半導体」「建設」「物流」「楽天経済圏」「預金金利」の八つについて、価格やコストを軸に、企業や業界の深層と2024年の予測を担当記者が語る。特集『総予測2024』の本稿では、前編として、コンビニ、電気料金、新車、半導体の四つにズバリと斬り込む。(ダイヤモンド編集部 臼井真粧美、下本菜実、土本匡孝、千本木啓文、宮井貴之、村井令二)

【コンビニ】
値下げは“お祭り”
値上げ要因しかない

臼井真粧美デスク

臼井真粧美デスク ローソンが2023年秋に値下げキャンペーンを始めていますが、値下げする理由って何?

下本菜実記者

下本菜実記者(リテール業界担当) あれは定番商品6品に限ったもので、客寄せ。焼きそばパンの焼きそばやスイーツのホイップクリームを増量するのと同じ類いで、値上げムードの中でワクワクを感じてもらう“お祭り”ですよ。

 幾つかの商品を増量したり、値引きしたりしてめりはりをつけているんです。

臼井D 高価格帯プライべートブランド(PB)が売りだったセブン-イレブン・ジャパンは、低価格帯PBを投入しているよね。

下本記者 「コンビニは割高」と感じる消費者が増える中で、これもめりはり。トータルでは値上げが続きますから。原材料価格の高騰や輸送コスト、電気代上昇と、値上げを続ける要因はあっても値下げできる要因は皆無。円安で外国人アルバイトが集まりにくくて人件費も上がっている。

臼井D コストを考えたら24時間営業をやめた方がいい店がたくさんありそう。

下本記者 深夜営業をやめたがっている加盟店はいっぱいある。でもコンビニ本部としては、営業時間を削らずに大量に商品を仕入れてほしい。売れ残り品の仕入れ費用も廃棄費用も基本、加盟店負担ですから。コストに対して本部と加盟店は一蓮托生ではない。

臼井D 「利便性」を守ろうとすると、誰が負担するにしろ昔以上にコストが膨らむし、消費者に割高を感じさせてしまう。

 利便性の高さでは、新型コロナウイルスの感染拡大を機に台頭した即配達のデリバリーサービスが存在感を持つようになった。こちらは割高承知で利用される。

 コンビニの立ち位置って、難しくなっている?

下本記者 本部はあの手この手を打っていて、デリバリーサービスも大手各社がやっている。セブンは自前路線で利用が伸びずに苦戦し、加盟店としても利益面では店舗での購入と比べて、それほどうまみがない。ローソンはデリバリー大手のウーバーイーツや出前館と組んで戦線を拡大している。

 この先も値上げが避けられない以上、従来のコンビニから脱皮した利便性の追求が至上命令です。

【電気料金】
値下げの可能性がある
“例外2社”とは?

臼井D 大手電力9社の24年3月期第2四半期決算は過去最高益(経常損益ベース)で、通期業績見通しも明るい。となると、24年は各社そろって家庭向け電気料金(規制料金)の値下げに転じる?

土本匡孝記者

土本匡孝記者(エネルギー業界担当) それはない。23年3月期に大手のほとんどが燃料価格高騰や円安の影響で歴史的な最終大赤字に沈み、電気料金を値上げしたんです。値下げは届け出するだけでいいけど、値上げは国に認可してもらうのにすごく労力がかかる。

 今後も燃料に使う液化天然ガス(LNG)は高値が続く見通しで、安易に値下げはしない。ただし、例外が2社あります。

臼井D 例外の2社とは?

次ページでは、“例外2社”の実社名を明らかにし、この2社が値下げすることで起こり得る「電力会社の格差」に言及する。また、新車販売価格の行方と、そこに影響を与える半導体市場に担当記者がズバリと斬り込む。