総予測2024#74Photo:Witthaya Prasongsin/gettyimages

証券業界の2024年は、追い風と逆風が入り交じる一年となる。最大の追い風は、新NISA(少額投資非課税制度)開始など「資産運用立国」の実現に向けた取り組みだ。その一方で「利益度外視」の顧客囲い込み競争が激化し、優勝劣敗が鮮明になりそうだ。特集『総予測2024』の本稿で、その理由を解き明かす。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

日本株に海外機関投資家も熱視線
「資産運用立国」は証券会社に商機

「日本の変化に対する海外の期待が大きくなっている」

 業界最大手の野村ホールディングス(HD)の奥田健太郎社長は、23年11月末に都内で主催した投資家向けのフォーラムでそう胸を張った。

 実際、同フォーラムに参加した海外投資家の数は約500人に上り、22年から倍増した。彼らが関心を寄せるのは、奥田社長が言う「日本の変化」だ。

 東京証券取引所が23年3月、上場企業に対して資本コストと株価を意識した経営を要請し、PBR(株価純資産倍率)改善への意識などが経営者に急速に浸透しつつあると多くの投資家はみる。

 毎年開催される同フォーラムでは、岸田文雄首相が歴代首相で初めてビデオメッセージを寄せ、海外の資産運用会社の新規参入を促す特区創設を約束してみせた。

 その狙い通りに海外マネーを呼び込み、日本企業の成長投資に振り向ける資金循環が活発化すれば、野村のようなグローバル金融機関の商機は増える。奥田社長は「リスクマネーの好循環をつくっていく」と自信を見せる。

 一方、新NISAをきっかけに「貯蓄から投資」の流れが強まる中、国内の顧客獲得競争は激しさを増している。

顧客獲得競争の先陣を切ったSBI証券と楽天証券の一手により、証券業界は「勝ち組」と「負け組」に分かれる時代に突入する。再編淘汰の荒波を乗り越えられない証券会社はどこか。次ページで解説する。