1企業や国内産地の枠を超えた挑戦!
日本のネギの海外依存度を将来ゼロに

 ゼロは現在、北海道から鳥取県までネギの主要産地をカバーする形で、若手中心に約100人の農家が集まっている。清水氏がネギ経営に関するノウハウを無償で提供するのと同様、各地の農家は技術や知見をお互いに教え合う。

 狭い国内の産地間競争にとらわれず、日本全体でネギ農家の競争力を高めることが、ゼロの重要なミッションだ。

 ゼロが農家に支持される最大の理由は、生産者が値決めできる仕組みにある。市場への出荷は需給で価格が決まるため時に乱高下が避けられず、経営が不安定になる。一方、ゼロは直取引の出荷先を確保し、安定した価格で売れる機会を参加する農家に保証する。

 従来、各地の農協は自分の地域の利益を重視し、競合する他地域との協力や連携に消極的だった。技術の囲い込みはその一例だ。一方、ゼロは産地の利害を超え、一丸となって各地の出荷を連携させることで安定供給に努めている。

 ゼロが持つもう一つの強みは、清水氏主導の営業力だ。現在、大手外食企業とのコラボレーション計画が複数進んでおり、ネギ以外の作物も含めたゼロの出荷先として、既に「60億円程度の注文を確保している」と清水氏は打ち明ける。

 売上高確保の上でゼロのネギの新ブランドも貢献度が高い。例えば「形悪くてゴメンね やわとろ葱だもん」というブランドは、少し曲がっているなどの理由で、従来店頭で扱えなかったネギを安い価格で販売するコンセプトである。売れ行きは絶好調という。

 1本1万円でネギを売る男のブランド構築力は健在で、他にも新茶や新ジャガのように初物の価値を大きく打ち出した「新物初夏ねぎ」など、消費者が興味を引きそうな見せ方を幾つも用意している。

 ゼロに参加する農家の栽培面積は足元で合計113ヘクタール。5年後に600ヘクタールを目指す。その先の目標は現在約2割の日本のネギの海外依存度をゼロにし、国内自給率100%を達成することだ。「日本のネギ農家がワンチームになれば必ずできる」と清水氏は意気込む。1企業や国内産地の枠を超えた挑戦は、これからも続く。

Key Visual by Kaoru Kurata