アメリカの利下げで、景気がソフトランディングできそうと感じたワケは? AIが長いトレンドと信じるなら下がっているときに買うべき!
2024年8月27日(火)、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。
前回の放送は、日銀の利上げをきっかけに金融市場がパニックに陥ったことを取り上げ、マーケットの暴落時、個人投資家はどういうメンタルで相場に臨めばいいのかをポールさんが解説。米大統領選がトランプ(以下、氏省略)の迷走で、一転してハリスが有利となったことも取り上げた。
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今回の放送では、ジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が利下げを示唆したことで、アメリカ景気がソフトランディングできそうとポールさんが感じたワケを解説。AIのトレンドが長いと感じるのであれば、NVIDIAの決算が少し悪くても買ってもいいとのことなので、さっそくチェックしていこう。
シアトル在住、台湾系アメリカ人のポールさんが、台湾の実家から生出演
番組は、シアトル在住で台湾系アメリカ人のポールさんが今回、台湾から映像付きで生出演していることを、アシスタントの木村カレンさんが紹介するところから始まった。
ポールさんは1年ぶりに台湾の実家に帰っており、家族や友達と会ったり、食事を楽しんでいるとのことだった。
すると、番組MCの渡部一実さんが、ポールさんの肌感覚で台湾の景気はどんな感じなのか質問した。
「街は賑やかで、景気もそんなに悪く感じていない」とポールさん。特に、不動産が元気で、台北あたりの不動産価格が上昇しているそう。
ただ、中国との戦争の懸念が高まっていることも、肌感覚で感じたとのこと。法律の変化などを背景に、台湾人は中国を以前より警戒するようになり、香港でも同様の懸念が高まっているようだ。
これを受けて、渡部さんが「中国も米大統領選でバイデンとハリスのどちらが勝つのか注目していますか」と返した。
ポールさんが米大統領選のことを台湾の友人や親戚に聞くと、どっちが勝ってもあまり変わらないという答えが多く、ポールさん自身もそう見ているのだという。アメリカと中国の対立は国全体での考え方であり、アメリカの与党が変わることで、米中対立が変わるわけでもないようだ。
アメリカが利下げすれば、動きがなかった戸建て住宅市場が活発化し、今まで滞っていた経済も動き出して、ソフトランディングできそう
続いては、ジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が利下げを示唆した話題に。
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これについてポールさんは、パウエルFRB議長がジャクソンホール会議で行った講演の内容から話し始めた。
パウエルFRB議長は講演で、コロナ以降のさまざまな経済の出来事を説明したうえで、コロナの影響とその余波がある程度落ち着き、インフレに対しての懸念がなくなった一方、失業率が少し高まっており、再び悪化させないために利下げを示唆したのだそう。
この利下げ示唆で、米経済はソフトランディングできそうとポールさんは感じたようだ。
そう思ったのはなぜか。それは住宅市場を見ればわかるのだという。
過去の利上げと比べて、コロナ後の利上げは、戸建て住宅への悪影響が意外と少なかったのだそう。
低金利時代に固定金利で戸建て住宅を買った個人が、金利が上昇した状態で家を買い替えると、低金利のうま味を楽しめなくなってしまう。だから、金利が上昇して戸建て住宅市場が動かなくなってしまった代わりに、金利上昇による大きな悪影響も受けなかったとのこと。
それが、これから金利が低下すれば、動きがなかった戸建て住宅市場が活発化し、今まで滞っていた経済も動き出すから、ソフトランディングにも成功できそうとポールさんは目論んだのだ。
すると、渡部さんが景気や経済指標の見方について語りだした。毎日のようにアメリカの経済指標が出てきて、最近は小売売上高が強かったから株が買われ、雇用統計で非農業部門雇用者数が下方修正されたから驚いて、CPIが落ち着いているだとか、経済指標をどの程度気にすればいいのか、少しうんざりした様子でポールさんに聞いた。
「経済指標自体で短期売買するのはちょっと難しい」とポールさん。FRBの情報をたくさん知っているパウエルFRB議長ですら、経済指標は予想できないのだから、個人投資家だとさらに難しいというのは納得だ。
ただ、経済指標は見る必要はあるとポールさんは考えていて、それは個人投資家にとって勝ち目がある中長期のトレンドに気付くためだからだそう。
先ほど書いたような、これからの利下げで住宅市場にどういう影響が出るのかなど、数年かけてのトレンドの変化を経済指標で気づくことができれば、株の選別に使えるとのこと。
また、中長期のトレンドを見るうえで、ポールさんが景気の判断基準としている「HOPE」も気にしたほうがいいようだ。
「HOPE」は、上から順番に景気が良くなったり悪くなったりする見方ができるもの。
例えば、先ほどから書いている住宅(ハウジング)は、これからの利下げで少し回復すると考えていて、実際に、アメリカの住宅開発業者であるトールブラザーズなどは、基本的な住宅不足なども相まって市場最高値まで上昇しているとのことだった。
AIに国家レベルの重要性があると信じるなら、NVIDIAの決算が少し悪くても買っていいし、理由にかかわらず、下がっているときに買うべき
最後は、市場の注目が集まったNVIDIAの決算とAIの話題に。
番組放送翌日にNVIDIAの決算(※)を控えて、決算がよければNVIDIA株を拾っていくスタンスでいいのか、渡部さんがポールさんに投げかけた。
(※NVIDIAが日本時間8月29日(木)未明に発表した2024年5〜7月期決算は、売上高と純利益がともに市場予想を上回った。ただ、もっとも楽観的な予想を下回り、爆発的な成長が鈍化するとの懸念が残る結果となった)
ポールさんはまず、グーグル前会長のエリック・シュミットが先日、スタンフォード大学で行った講義の話を持ち出した。エリック・シュミットは、AIはこれから足が長い大きなトレンドで、バブルになるかもしれないと話し、ポールさんも同じ意見だという。
そのうえで、NVIDIAの決算がどういう数字となるかは予測しづらく、決算がよかったことを確認した後で買うのでは遅いとのこと。
AIが長いトレンドだと信じるのであれば、決算が少し悪くても買っていいし、理由にかかわらず、下がっているときに買うべきだそう。
逆に、AIが終わっていると信じるのであれば、決算がよくても買うべきではないとのことだった。
もちろんポールさんは、AIが終わっているとは考えておらず、AIによって経済全体の生産性が変わり、特にソフトウェアのシステム開発のスピードが激変するため、国家レベルの重要性があると信じている。
AIで本当に競争できる国は中国とアメリカしかなく、NVIDIAなどがあるから、アメリカは中国を10年リードしているそう。
アメリカと中国はお互いの領土を奪い合うような戦争はしないけれど、ルールや市場の奪い合いはするため、NVIDIAのチップを中国に提供しないようにするなど、資源をコントロールするのはアメリカにとって合理的とのことだった。
ここまで、8月27日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(直近2年で100%近い上昇)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。