成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

【シリーズ連載:エネルギーから知能へ】第2回 鉄道狂時代、ドットコムバブル期と比較して考える。2026年7月の一部AI関連株下落、AI懐疑派の主張は妥当か?

2026年8月12日公開
ポール・サイ
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

 歴史を知らずに「今回は違う」と言う資格はありません。今回は、AI懐疑派が引き合いに出す2つのバブルを数字で解剖し、それを物差しにしたいと思います。

 そして、この物差しを使い、AI関連銘柄の一角に起こった2026年7月の株価急落について、改めて評価したいと思います。

鉄道狂時代とドットコムバブル時の猛烈な投資とその後の大きな株価下落

 1840年代の英国における「鉄道狂時代」には、ピーク時の1847年に鉄道投資が国のGDPの約7%、国内投資全体の約半分を占めました。認可路線の約3分の1は建設されず、鉄道株指数は高値から3分の2も下落しました。

 1873年の米国では、南北戦争後の8年間で3万5000マイルの鉄道が敷設され、その反動で恐慌が起き、全米364の鉄道会社のうち、89社が破綻しました。

 1990年代のドットコムバブル時には光ファイバー敷設に5年間で5000億ドル超が投じられ、敷設された光ファイバーの9割前後が一度も通信に使われない「ダーク」のまま。2002年の稼働率はわずか2.7%、通信株の時価総額は2兆ドル減少しました。

バブルの本質は「無駄な投資」ではなく、「据付と展開の時間差」

 しかし、これらの事例で、打ちのめされたのは投資家であって、インフラではありません。

 英国の鉄道網は国の背骨となり、米国の鉄道の経済価値は後年の研究で年間GNPの3%規模と推計されました。そして、二束三文だったダークファイバーはブロードバンドとYouTubeとクラウドの土台になりました。

 バブルの本質は「無駄な投資」ではなく、経済学者カルロタ・ペレスの言う「据付と展開の時間差」です。

 資本は金融の速度(数年)で設備を作り、需要は社会の速度(数十年)で成熟する。工場に電気が導入されて生産性統計に現れるまで40年かかった、という有名な研究もあります。

 この物差しで2026年7月のAI関連銘柄の相場を見てみましょう。

2026年7月のAI関連銘柄で、急落した銘柄群と急騰した銘柄群とは?

 2026年7月、S&P500は2%強安、エヌビディアは5%安でした。AI相場全体が崩壊したと呼ぶような値動きではありませんでした

 その一方で、急落したのはメモリーや新興クラウドといったAIの「二次派生」銘柄(35~55%安)でした。

マイクロン・テクノロジー(MU)日足代表的な半導体メモリー企業の1つ、マイクロン・テクノロジー(MU)の株価推移(日足) 出所:TradingView

 また、急騰したのは空売りの標的になっていた既存ソフトウェア銘柄(17~37%高)でした。

セールスフォース(CRM)日足SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業の代表格、セールスフォース(CRM)の株価推移(日足) 出所:TradingView

 これはAI需要の崩壊ではなく、レバレッジの強制解消とローテーションです。前回の記事で紹介した、AI特化のヘッジファンド「シチュエーショナル・アウェアネス(Situational Awareness)」による株式一括売却がその象徴です。

 そして注目すべきは、その株式一括売却の受け皿となった買い手の存在です。買い手となったヘッジファンド「シタデル」は割引価格とはいえ、160億ドル分の株式を引き受けました。もし「シタデル」がAIの波は終わったと判断していたのであれば、それらの株式が買われることはなかったでしょう。

[参考記事]
【シリーズ連載:エネルギーから知能へ】第1回 人類は大昔からエネルギーを知能に変換してきた。AIが史上初なのはこれを脳を経由せず大規模に行っている点

ドットコムバブル後の光ファイバー稼働率はわずか2.7%だったが、今のAIデータセンター需要はまだまだ旺盛

 次に、規模の物差しでも、現在の状況を確認しておきましょう。

 現在の米国のAI投資は狭義でGDP比1~2%です。広義に数えた場合は5%程度です。鉄道敷設ピーク時のGDP比5~7%、ドットコムバブル期の約5%と比べても、少なくとも狭義ではまだその水準に達していません。

 そして、需給の形は過去の事例とは逆になっています。

 先ほど述べた通り、かつてのドットコムバブル後の光ファイバー稼働率はわずか2.7%にすぎませんでした。これに対し、現在のAIデータセンターは稼働開始直後から需要で埋まる状況で、クラウド事業の受注残はマイクロソフトが6780億ドル、アマゾンのAWSは4960億ドルもあります。

 先日、私がメルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で使った言葉で言えば、今回の設備投資には「領収書」(契約済みの需要)がついているのです。

「ショック」には2種類ある。それらを区別するため、私が監視する3つの指標とは?

 ただし、供給と需要の時間差は構造的なものであり、偶然ではありません。

 供給が需要を追い越す瞬間はいずれ来ます。私が監視するのは3つ――AIの稼働率、受注残の伸び、電力価格。

 結論はシンプルです。

 「ショック」には、「需要の死」(2000年)と「ポジション一掃」(今回=2026年7月)の2種類があります。それらを見分ける物差しは、株価ではなく、稼働率なのです。

【投資家への含意】需要が死ぬ下落は撤退、ポジションが一掃される下落は好機――ただし、判定してから動くこと。見るべき計器は3つです。AIの稼働率、受注残の伸び​。加えて規模の物差し(AI投資はGDP比1~2%、鉄道敷設ピーク時は5~7%)を頭に入れておけば、「バブル崩壊」の見出しが出るたびにあわてなくてすみます。地図で言えば、同じ中流でも「受注残という領収書を持つ側」と「借りたコンピュートを転売する側」は別物です。7月に退場したのは後者でした。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査に12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語に堪能。米国株などの資産運用について助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオも提示! 登録から10日以内の解約は無料。


ダイヤモンドZAiがお届けする「株」に特化した週間電子ブック!毎週届くお宝株&最新データ!『ウィークリー・ダイヤモンドzai』はこちら!
年200万円利用で高級ホテル宿泊券がもらえる!最強ゴールドカードを検証! ダイヤモンド・ZAi無料会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
みずほ楽天カードの公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!日本株の売買手数料が完全無料(0円)に! クレカ積立の還元率が業界トップクラスなのも魅力! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
みずほ楽天カードの公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!日本株の売買手数料が完全無料(0円)に! クレカ積立の還元率が業界トップクラスなのも魅力! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

最強日本株87銘柄
投信格付243本
iDeCo入門


10月号8月20日発売
定価950円(税込)
楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[最強日本株87銘柄]
◎インタビュー連載・おカネの本音!特別編
桐谷広人さん
「がんで腸を60cm切除も退院は自転車で…!入院時も優待フル活用」

◎巻頭特集
中東問題にもコスト増にも強い!
最新好決算株31

●人気20銘柄の売り買い判断
●第1四半期が好発進の株
●円安で業績UP期待の株

◎第1特集
“スター株”をプロ21人が選出!
2026年夏の最強日本株87

●どうなる日本株?
予測&投資戦略のプロ5人が解説!
日経平均は9万円予測も!
●安定と成長を兼ね備える大物が揃う!
大型優良株

1位:トヨタ自動車/2位:三菱重工業
●AI革命を支えるスター銘柄に注目!
AI・半導体株

1位:キオクシアHD/2位:アドバンテスト
●高利回りと増配期待の二刀流プレイヤー!
高配当株

1位:UBE/2位:エクセディ
●高配当から高成長まで少額で買える本格派!
10万円未満株

1位:NTT/2位:ソフトバンク
●株高に乗り遅れた実力株が相場の主役に!
出遅れ株

1位:伊藤忠商事/2位:三井不動産
●大化けが狙える成長株が集結!
小型10倍株

1位:VRAIN Solution/2位:エクサウィザーズ
●<特別編>優待の達人・桐谷さんの
この夏買いたい最強の株主優待株

◎第2特集
NISAで売れてる投信をズバ斬り!
★★★の数を見るだけでOK!投信格付243本

●コストの安さでランキング!インデックス型46
●7つの視点で分析!アクティブ型64

●新登場の投資信託の実力は?バランス型24
●最高利回りは36%!毎月分配型100
●NISAで買う投信の選び方
●初心者はココから!投資信託のキホン

◎ZAi NEWS CHANNEL
年前半の上がった株・下がった株を検証!
イオン、ネクソン、任天堂など…下がった大型株の売り買い診断
◎別冊付録
iDeCo入門第2回「働き方別の必勝法」
●マンガで理解
自分がどの枠組みにいるかで掛け金上限や仕組みが違う!
●働き方別ガイド

・企業年金あり/なしの会社員
・公務員
・専業主婦(夫)
・フリーランス・自営業
●年代別の投資戦略

◎短期集中連載
株好きアイドル[ラフ×ラフ]高梨結VSザイ部員
スイングトレード株バトル第2回
主役が毎日変わる市場での立ち回り方とは?

◎いつもの連載も充実!
●10倍株を探せ!IPO株研究所2026年7月編
「自動運転の関連株が話題に!初値が2倍超の銘柄も」
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.25
「残価設定ローンってどうなの?」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.20
「スキャルなら技術でカバーできる!」
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.118
「傷心を繊維株でリカバリー!?」
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「手軽さで登録者が急増中!スキマバイトのリアルとシニア世代が稼ぐコツ」
●ZAiクラブ拡大版! 1カ月で1番上がる株を当てろ!
「月末にかけてソフトウェア株に資金が戻り株価の追い風に!」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!

ザイクラブ・アンケートはこちら!

>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報