成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

【シリーズ連載:エネルギーから知能へ】第4回  AIで「知能」が2倍になればGDPも2倍になる? 経済効果の予測が大きく割れる理由とは?

2026年8月26日公開
ポール・サイ
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

AIの現在地は三層のズレの中にある

 この夏、私の息子のアロンは、ねじの緩み止め加工で知られるナイロック社でインターンをやっていました。同社はねじの不良検出に同社では、ねじの不良検出にAIを使うことを検討しましたが、導入を見送ったそうです。

 理由は、AIでは「遅すぎる」からです。

 ナイロック社の工場では、月に数十億本のねじが、1本あたり0.1秒でカメラの前を通過していきます。この状況だと、汎用AIの推論では間に合わず、専用の画像処理が勝つのです。

ナイロック社公式サイトナイロック社公式サイト

 同じ頃、私はマイクロソフトのAIイノベーションセンターを見学し、正直、展示の素朴さに驚きました。そのことを弟に話すと、「あそこに展示されているものは最先端を代表していない。中身はずっと先を行っている」と笑われました。

 現場では速度が足りず、展示は実力より遅れて見え、最前線は外から見えない――AIの現在地は、この三層のズレの中にあります。AIがどこまで進んでいるのかについて認識が異なる以上、AIが経済をどこまで成長させるのかという予測が、専門家によって大きく異なるのも当然です。

 では、どれほどばらついているのでしょうか。

AIの発展がどれほどのGDP成長をもたらすのか、人によって見解は大きく異なる

 アンソロピックのダリオ・アモデイCEOは、来たるべきAIを「データセンターの中の天才の国」と呼び、50~100年分の科学の進歩が5~10年に圧縮されうると主張しています。

 ゴールドマン・サックスは2023年3月のレポートで、生成AIが広く普及すれば、その後の10年間で世界の年間GDPを7%押し上げる可能性があると試算しました。マッキンゼーも巨額の経済価値を見込み、一部の爆発的成長論者は、AIが研究開発を加速させれば、いずれ年間30%級の成長さえ排除できないと考えています。

 その一方、慎重派の代表格であるMIT(マサチューセッツ工科大学)のダロン・アセモグル教授は、今後10年で米国のGDPを1%前後押し上げる程度と見ています。

 これらの数字は単純には比較できません。対象も期間も、測っているものすら違うからです。それでも、10年間のGDP押し上げ効果という同じ土俵で見て、1%と7%。慎重派と楽観派の開きは桁違いです。

なぜ、「知能2倍=GDP2倍」と単純にはいかないのか?

 なぜ、「知能2倍=GDP2倍」と単純にいかないのでしょうか。最良の説明は経済学者フィリップ・アギヨンらの論文にあった次の一文です。

 「成長は、我々が得意なことではなく、不可欠なのに改善が難しいことに制約される」。

 知能が安くなるほど、経済の重心は知能で解決できない部分――介護、住宅、許認可、信頼、そしてナイロック社のねじのような物理世界のスループット――に移っていくのです。

 100の工程のうち99を自動化しても、残る1つが全体の速度を決めるということです。

 一方、楽観派の根拠は、AIが「研究者」という入力そのものを複製できる点にあります。新しいアイデアを生む主体を無限に増やせるなら、成長の生産関数自体が書き換わる。賭け金はここにあります。

GDPに現れているのはまだ「知能」ではなく、「知能工場の建設」

 2026年の現実はどうでしょうか。コールセンターで生産性+14%、コーディング課題で+56%という調査結果がある一方、ベテラン開発者はAI導入でむしろ19%遅くなったという厳密な調査もあります。

 マクロ経済では、2025年上半期の米国成長率1.2%のうち1.1ポイントがデータセンター建設などの投資による、という試算が象徴的です。

 GDPに現れているのはまだ「知能」ではなく、「知能工場の建設」であり、経営者の自己申告(生産性+1.8%)と実データ(+0.6%程度)の間にも乖離があるのです。

変化は統計に現れる前に現場で先に起きる。だから、まだ統計に現れていなくても悲観することはない

 それでも私は悲観していません。

 この種の変化は、統計に現れる前に現場で先に起きるからです。1990年代後半、インターネットのROI(投資収益率)が統計に表れる前に、私たちは自宅のモデムの音でそれを知っていました。

[参考記事]
AIを活用して息子に贈る156ページのフォトブックを2日で完成。コストは数十分の一、時間は十数分の一――AIのROI(投資収益率)は桁違いだ
AIで「半年仕事」が半日に!? ポール・サイ氏が語る、AI時代に生き残るソフトウェア企業の条件

 結論はシンプルです。「知能2倍→GDP2倍」は恒等式ではなく仮説です。しかし答えが1%でも7%でも、その差はポートフォリオを組み替えるに足る大きさです。

 次回はこのシリーズ連載の最終回になります。最終回では、このすべての前提にある最後のボトルネック――エネルギー、原子力、そして日本の話をします。

【投資家への含意】AI関連株を買うことは、暗黙のうちにダロン・アセモグルの1%からゴールドマンの7%、さらにその先までのどれかの推計に賭けるということです。自分がどのシナリオに立っているのかを、一度言語化してみてください。同時に、ナイロック社のねじが教えてくれるように、AIに(まだ)壊されない物理世界や規制産業のキャッシュフローは、ポートフォリオの防御側として機能します。知能への攻めの賭けと、ボトルネック側の守りの現実。両方の銘柄を持つべき理由がここにあります。

 私が実際にどの米国株・世界株に投資し、どのシナリオを前提にポートフォリオを組んでいるのかは、メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で毎週詳しく解説しています。

 AI関連株を「期待」だけで買うのではなく、成長率、企業利益、バリュエーションまで踏み込んで判断したい方は、ぜひご覧ください。登録後10日以内に解約した場合は料金がかかりません。

 

●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査に12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語に堪能。米国株などの資産運用について助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオも提示! 登録から10日以内の解約は無料。


ダイヤモンド・ザイ 2026年10月号好評発売中!
年200万円利用で高級ホテル宿泊券がもらえる!最強ゴールドカードを検証! ダイヤモンド・ZAi無料会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
ゴールド・プリファード・カードの公式サイトはこちら 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!日本株の売買手数料が完全無料(0円)に! クレカ積立の還元率が業界トップクラスなのも魅力! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ゴールド・プリファード・カードの公式サイトはこちら 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!日本株の売買手数料が完全無料(0円)に! クレカ積立の還元率が業界トップクラスなのも魅力! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

上がる&増える高配当株143
AI・半導体の本命株
iDeCo入門

9月号7月21日発売
定価950円(税込)
楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[上がる&増える高配当株143]
◎巻頭インタビュー
米国・欧州・インドのプロがズバ斬り!
世界株の行方と投資家がすべきこと

◎巻頭特集
業績絶好調!まだ狙える!
日本のAI・半導体の本命株34

●データセンターの中身から儲かる銘柄
●半導体の本命株9
●電子部品&電力の本命株10
●ロボットなどの本命株15

◎第1特集
インフレに勝てる!
上がる&増える高配当株143

●高配当株の選び方が変わった!
インフレ&金利上昇時代の新基準3

●AI一辺倒相場の今がお買い得!下がりすぎ人気高配当株14
●ぜんぶ4%超!長期保有でも安心!10年減配なしの高配当株100
●利益の成長とともに株価も上昇!配当がぐんぐん増える株19

◎第2特集
短期集中連載スタート!ガチ自腹50万円
株好きアイドル[ラフ×ラフ]高梨結VSザイ部員
スイングトレード株バトル

●第1回:ちょる子さんから学ぶ「スイングトレード」の極意
◎第3特集
空前の株高で立ち見の会社も!
2026株主総会32社直撃レポート

●モノ言う個人投資家・田端信太郎氏がアドバイス!
●AI・半導体株:キオクシアHD・ソフトバンクGなど

●お騒がせ株:日産自動車・ニデックなど
●中東問題で揺れる株:日本郵船・旭化成など

◎第4特集
AI相場に乗れる!長期成長が取れる!
新興国株投資の新常識&買うべき投信14

●<目的1>AI・半導体相場に乗る
●<目的2>長期の経済成長に期待

◎別冊付録
【4号連続企画の1回目】
iDeCo入門「改正点とメリット」

●マンガで理解!iDeCoって何?
●iDeCoのココがスゴイ!

ー掛け金ぜんぶが所得控除に!
ー受取る時にも税金優遇など
●iDeCoの5つのQ&A
―iDeCoとNISAの優先度は?
―何に投資するのが正解?など

◎いつもの連載も充実!
●10倍株を探せ!IPO株研究所2026年6月編
「日本のIPO株に海外の投資家が注目」
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.24
「新幹線に安く乗ろう!」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.19
「AIとの壁打ちで精度を上げる」
●おカネの本音!VOL.49 西岡孝洋さん
「タワマンは金融商品だ!?住んで、売って、築いた元フジアナの資産づくり」
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.117
「家電業界くっつき物語!」
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「株高の恩恵はいずこへ!?株価が上昇しても不況感が強い理由」
●人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ
「円安進行で本当の利回りは高水準を維持」
●ZAiクラブ拡大版!1カ月で1番上がる株を当てろ!
「上げ幅は大きくないがマツキヨ株が堅調に推移!」

>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!

ザイクラブ・アンケートはこちら!

>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報