外資系投資顧問でファンドマネジャー歴20年の山本潤氏による、10年で10倍を目指す成長株探しの第8弾。今回は、安川電機(6506) を取り上げます。
安川電機(6506)の決算が示唆するものとは?
1月10日の午後4時に安川電機の第3四半期(3月から11月末の9カ月の決算が発表されました。
安川電機の決算は以下の2つの点で重要です。
1) 先行指標としての意義
安川電機の本決算は2月であるため、他の3月決算の企業群よりも1カ月早く動向がわかります。それゆえに、多くの製造業の動向への示唆となります
2) グローバルの設備投資動向を把握する意義
安川電機はグローバルシェア2割弱を誇るACサーボモーターの大手企業です。それゆえに、他のグローバル企業、特にFA関連、半導体製造装置関連企業への一ヶ月後の決算の示唆となります。
安川電機の第3四半期決算の内容は残念ながら通期の下方修正を含むものでした。2019年2月の通期の会社計画は売上が4980億円から160億円下方に修正され、4820億円となりました。営業益は590億円から60億円下方修正され530億円となりました。中国アジア地域での景気減速を受け、特に、主力のモーションコントロール事業が下振れしたのです。
ただ、決算内容については、見た目ほど悪いものではありませんでした。
第3四半期(9月-11月)の実績売上と営業益はそれぞれ1131億円と111億円であり、これは前四半期(6月-8月)よりも、それぞれ6%と17%低い水準でした。
今後の見通しですが、第4四半期(12月-2月)の売上と営業益の会社見通しは、それぞれ7%と3%増える計画です。業績の悪化はひとまず終わって、底打ちする見通しです。ただし力強い回復は見られません。
会社側が第4四半期の業績の「回復」を見込んでいるのは、足元の受注が切り上がっているからです。これは決算後の取材で確認しました。中国を中心に9月落ち込んだ受注ですが、10月-11月-12月と徐々に切り上がりを見せているのです。これから、春節ですが、その後に投資意欲が戻る可能性があります。
来期の見通しには2つの好材料がある
来期は出足は明るいものになりそうです。好材料が二つあります。
日本の加工産業にとって明るい二ユースは、原材料費の大幅な低下です。鋼材やコイル(銅価格連動)が来期の第1四半期には、前年比で1-2割安くなっています。特に安川電機は、モーター製品の材料費率は5割程度と大きいため明白に追い風となります。
安川電機のサーボモーターはグローバルシェア2割弱であり、カタログを中心とした標準品販売ですから製品価格は安定しています。製品価格が安定して、材料費率が下がるのですから業績面での追い風となるのです。
もうひとつの好材料はドル/円の為替です。2018の第1四半期は一時1ドル104円の円高でした。来期の出足は、円安となりそうで、これも追い風となります。
ただし、肝心な需要動向はまだ弱く、半導体や液晶の設備投資の回復までにはもう少し時間がかかりそうです。力強い需要の回復は夏場以降となりそうで、当面は、業績をドライブするような状況ではありません。いまは、さらなる下方修正がない、という程度のものです。
安川電機の株価は、過去1年にわたり下がり続けてきましたが、第4四半期と来期に向けた好条件を見れば、株価はさらに売り込まれるような業績ではありません。やっと下げ止まりそうだと言えるでしょう。
意外に底堅い先進国の設備投資
ひとつの企業の決算から他の企業の決算の傾向を予想することができます。安川電機の決算は他のFAや半導体装置メーカーにとって何を意味しているでしょうか。設備投資関連としては、中国の生産の過度な落ち込みの懸念が払しょくされたのは大きな意味を持つでしょう。
設備投資関連は2018年を通して大幅に株価が調整しました。この一方的な流れはひとまずは止まったと考えることができるからです。足元の中国の製造業の設備投資意欲が緩やかに回復していることが確認できたからです。
安川電機の今回の決算のもうひとつの特徴は、意外に底堅い先進国の設備投資でした。これは、先進諸国がやはり人手不足が深刻であり、自動化や省人化投資への盛り上がりが継続しているためでしょう。
アジア諸国も人件費の増加が続いており、人を置き換える商品を提供しているFA企業はプラスアルファの追い風を将来にわたって受けそうです。
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