リーマンショック後の市場はどうなった?
リーマンショックでは金融収縮が起こり、大量の失業者が発生しました。企業の売上高も大幅に落ち込みました。例えば、トヨタ自動車の売上高は2008年3月期の約26兆円から、2009年3月期の約20兆円と22%の減収となりました。全ての上場企業平均では10%の減収になりました。過去30年間で10%の減収はリーマンショックの時だけです。
トヨタ自動車の2009年3月期の営業利益はマイナス4610億円の赤字に転落しましたが、翌年の2010年3月期の売上高は横ばいにもかかわらず、営業利益は1475億円と黒字転換したのです。アナリストの予想は営業赤字7500億円でした。この年はドル円が110円台から90円台と急激に円高が進んだにも関わらず、トヨタ自動車はアナリストの予想を大きく覆し、黒字転換を果たしたのです。
経済ショック後の市場動向を見る4つのポイント
このように経済ショック後の市場動向はプロのアナリストでも予想を大きく外すなど、多くの投資家が動向を見誤ります。今回はそうならないように経済ショック後のマーケットを見るポイントを4つ紹介します。
●ポイント1
減収になる企業は多いですが、衣食住に近い商品やサービスを提供する企業は減収になりにくい傾向があります。例えば、リーマンショックの時、住宅向けの新規融資金額は減りませんでした。
●ポイント2
アナリストや株式評論家などの極端に悲観的な予想は当たりません。最悪の、さらに最悪の事態を織り込み、概して杞憂に終わることが多いです。行動経済学的に説明すると、経済ショック時は今いるお化けより、さらに怖いお化けが出ると連想するからです。例えば、1ドルが80円を割れたら50円、原油が20ドルを割れたら10ドルになるといったように行き過ぎた予想をするわけです。
●ポイント3
業績悪化を株価が先に織り込むため、たとえ、減益や赤字になっても、株価やPERは上昇する場合があります。実際、トヨタ自動車のPERはリーマンショック後に大きく上昇しました。
●ポイント4
トヨタ自動車の例のように、減収でも減益や赤字になりにくい理由は、一般的に固定費とされる費用も削減するからです。例えば、人件費だとアルバイトや派遣社員の削減で足りない場合、正社員にも及びます。例えば、雇用は守るものの、ボーナスをカットするなどして費用を削減します。
株価の値下がり分は配当利回り上昇でオフセット
現在の株価水準は、来期の大幅減益をかなり織り込んでいるでしょう。例えば、株価が40%下がった企業はおよそ8割の減益を織り込んだことになります。理論株価の考え方では、株価や配当の下落率は、減益率よりも小さくなります。過去30年間のデータの平均によると、株価の下落率と配当の減配率は、減益率の3分の1程度で収まります。
長期投資では、株価が暴落しても企業価値は変わらないと考えます。理由は、株価の値下がり分は、潜在的な配当利回りの改善でオフセットされるからです。例えば、配当成長率が15%の株を再投資すれば、20年間で16.3倍になり、配当の再投資だけで値下がり分を上回ることができます。株価下落と配当の利回り上昇の関係を理解すれば、暴落にうろたえる必要はありません。
ウォーレン・バフェットは株価の変動に固執していません。長期で保有し、将来の配当を永続的に享受するという考え方です。配当の再投資利回りは、株価水準が低いと高くなります。ショック時は単年度の業績悪化は懸念されますが、いずれ平常に戻ると楽観し、安い時に買うことを繰り返すのです。
直近のマーケットや業績動向は?
VIX指数は80台から60台へと下がりましたが、60台は依然として高く、市場は暴風雨の中です。今後も合理的ではない株価形成はしばらく続くと思われます。
業績動向は、旅行業や運輸業は直撃を受けるでしょう。旅行業は政府支援が必要な状況に陥る懸念があります。景気動向に敏感な人材関連業なども影響を受けるでしょう。原油価格の急落で大手商社や石油元売りなどの資源関連業種も影響を受けます。ただ、こうした業種は既に大きく株価が下落しており、業績悪化の懸念はおおむね株価に織り込まれているでしょう。
財務内容の良好な企業、食品や日用品などの景気の影響を受けにくい銘柄への物色も同時に進行して行くと思われます。懸念は、アジア市場というよりも欧米の市場の動揺が増幅されていることです。この懸念は欧州および米国市民のパニックが収まるまで継続するでしょう。
ポートフォリオは時間をかけて構築
暴落後、新たに会員になってポートフォリオを構築したり、増額したりする会員への助言です。株価が上がる日と下がる日というより、午前と午後、1時間前と1時間後でも大きく違うという劇的な展開が続きます。ポートフォリオの構築は少なくとも2カ月の時間をかけてください。
ポートフォリオは、下落している時間帯で構築するようにお願いします。前日比で大きく上がる局面では自重した方がいいでしょう。ボラティリティが高いため、相場が大きな上げと大きな下げを繰り返すためです。
(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、10年で資産10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。