新型肺炎がマーケットに及ぼす影響は軽微
コロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大が及ぼす株式マーケットへの影響について長期投資の視点から考えたいと思います。何はさておき、新型肺炎の感染がこれ以上拡大しないこと、罹患された方々がいち早くご回復されることを切に願っております。その上で結論から申し上げれば、長期投資の観点から新型肺炎がマーケットに及ぼす影響は軽微でしょう。理由は、人類の対応力の高さです。人類は具体的な課題があると、速やかに対応できる生き物です。
新型肺炎問題で企業のサプライチェーンが寸断されて活動が停滞し、それによる業績悪化が懸念されています。ただ、歴史を遡ると、大規模な自然災害でインフラが破壊された場合でも、人類はバイパス(迂回路)を構築し、応急処置をしてきました。人類は、私たちが考える以上の速さで復旧する力を持っています。
新型肺炎問題がサプライチェーンに及ぼす悪影響は半年程度だと考えます。企業業績に一喜一憂する短期投資家にとって半年は長いと思うかもしれませんが、長期投資家は深刻視する必要はありません。新型肺炎問題から長期投資家が学ぶべき大切な2つのポイントについてお話しします。
大切なポイント その1 株価の成り立ち
株価は何で構成されているのでしょうか? 私たちの体が一つ一つの細胞から出来ているのと同様に、株価は投資家へのフリーキャッシュフローである将来配当からできてます。株価とは、将来の配当を永続的に足し合わせたものと考えられるのです(実際には単に足し合わせるだけではなく、現在価値に割り引く作業が必要です)。
新型肺炎問題で企業のサプライチェーンが打撃を受けて大きな機会損失が生じ、売上が一定期間立たず、今年度の決算が赤字で無配になると仮定します。ただ、無配は今年度だけで、翌年度には正常化するとします。
将来配当から理論株価を求める配当割引モデルでは、日本株の資本コストと配当の成長率との差は平均で2%程度ですから、仮に単年度が無配でも、理論株価に与える影響は2%しかないのです。つまり、単年度決算が赤字でも乗り越えられる財務内容の企業に投資していれば、サプライチェーンの寸断が与える影響は長期的には極めて軽微と言えるのです。
単年度や四半期決算の業績変動で株を売買する短期投資家は、新型肺炎問題で利益が減ると大騒ぎし、マスコミが流すニュースやSNSの情報に右往左往するでしょう。しかし、株価が将来配当からできることを知っている長期投資家は深刻に考える必要はないのです。
大切なポイント その2 常識的に考える
株式投資で成功するコツはマスコミやSNSの情報に右往左往しないことです。確かに、新型肺炎は致死率が低めとは言え、感染し死亡するリスクがあるため、恐怖に感じるのは当然です。その恐怖をあおるかのようにマスコミは連日騒ぎ立て、SNSではデマも含めて情報が錯綜しています。最悪なパターンはそれらの情報を鵜呑みにしてパニックになり、大きく下落した保有株を売却することです。
長期投資で大切なのはパニックにならず、事象が及ぼす影響を、自分の頭で冷静かつ常識的に考えることです。新型肺炎の感染はどこまで拡大し、死亡者はどこまで増えるでしょうか。例えば、話を簡単にするために、日本でどれくらいの感染者や死亡者が出たら、長期投資で憂慮すべき深刻な事態になるのでしょうか?
日本の年間死亡者数は高齢化で増加傾向にあり、2018年が約136万人です。肺炎で死亡する割合は65歳~84歳の死因4位で、死亡者数は約4万6千人です。85歳以上になると肺炎による死因は2〜3位に上昇し、死亡者数は約6万人です。つまり、高齢者を中心に約10万人程度が肺炎で亡くなっているのです。
今後、日本でも感染が急激に拡大すると、高齢者を中心に死亡者が増える可能性があります。仮に新型肺炎による死亡者数が、肺炎の死亡数と同じだけ増える、つまり2倍になると経済的インパクトが出るかもしれません。致死率は低いと言われていますが、仮に4%とすると、新型肺炎の死亡者が10万人になるには、250万人の感染者が出ることになります。もちろん、私は医師ではありませんので確たることは言えませんが、例えば、常識的に考えて250万人の感染者が出ることは考えにくいはずです。
春になると感染率も減少します。乾燥した2月に感染症が広がる理由は、ウイルスが水分を持たないためです。湿気が増える春先になれば、感染が収まるのはそのためです。物理的にウイルスが飛べなくなるからです。日本よりも米国でインフルが猛威を振るうのも気候が乾燥しているからだと思われます。こうした周知のデータや常識から、自分の頭で冷静に考えることでおよその見通しは立てられるのではないでしょうか。
短期投資家や投機家は、人の投資行動を見て自らの投資行動を決める傾向があります。連日報道されるニュースを多数の人が見て、パニックになれば、その一部が相場に反映されます。マスク株の急騰などです。それを利用して儲けようとする輩が存在するわけです。株式市場をゲームや博打と考えるのであれば、それはそれで立派ですから、私は否定しません。
賢明な長期投資家は、溢れる情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考えて投資判断をします。私のメルマガでは、今回のようなニュースに右往左往されない投資哲学を学ぶことができます。
(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、10年で資産10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。