世界の中でコロナワクチン開発で健闘するアンジェス(4563)
創薬ベンチャーのアンジェス(4563)は、従業員数がわずか30人台の会社にも関わらず、新型コロナワクチンのグローバルな開発競争で健闘しています。大阪大学医学部附属病院での治験も始まっています。
同社の株式時価総額は約1780億円(9月30日終値)と市場から高い評価を受けています。今期上期の業績は売上が0.16億円、17億円の営業損失でした。同社への注目が増したのは新型コロナのワクチン開発に名乗りをあげたからでしょう。コロナ以前の株価は500円程度でしたが、5月には2000円を突破。その後はやや下落したとはいえ、9月30日の終値で1448円の高値を維持しています。
従来の生ワクチンより安全な不活性化ワクチンを開発
ワクチンとは病気の抗体を作るために接種するものです。人間の免疫システムは特定の病気を記憶でき、病気にかかると抗体ができることでウイルスを検知し撃退することができます。これを獲得免疫と言います。病気に一度かかった人も獲得免疫はできます。免疫には獲得免疫以外にも、病気を自然に撃退する自然免疫があります。自然免疫が強い人は病気にかかりにくいのです。
ワクチンは主に従来の生ワクチンと不活性化ワクチンの2種類があります。BCGなどは生ワクチンで、これはウイルスや病原菌を弱体化して病原性を弱めてから接種し、軽い「病気」にならさせて抗体を作る捨身の戦法です。病気そのものにかかるため安全とは言えません。
先行する欧米はフェーズ3で大規模治験を実施
一方、より安全なのが、不活性化ワクチンです。これは病原性がない抗原を接種するためより安全と言えます。種類は様々ありますが、1つはウイルスベクターと呼ばれるタイプで、英オックスフォード大学が開発に成功しました。病原性がない理由は、人ではなくチンパンジーに対して風邪の病原性を持つアデノウイルスを加工して無害化させたものだからです。(チンパンジーの風邪ウイルスを人工的に変形させたものと言っても、人間の体の中でどういう反応が起こるかは予期できないですが)
もう1つは米モデルナ社などが開発した不活性化ワクチンのmRNAタイプです。mRNAを脂質ナノカプセルに封入します。これらオックスフォード(英アストラゼネカ)、米モデルナ、独ビオンテック(米ファイザー)らのワクチンを日本政府は大量に買い付ける予定です。
最大の難関は、感染少ない国内での治験ボランティアの大量確保
一方、アンジェスが開発中のワクチンはDNAタイプです。これはコロナウイルスのスパイク部分だけを選択的に環状DNAに結合させたもの。環状にすることで分解を防ぎ、大腸菌に培養させます。
オックスフォードのワクチン開発はフェイズ3に入っています。現在、世界で数万人規模の治験を行っていますが、ここを乗り越えることが最大の難関と言えるでしょう。一方、アンジェスも来年の製品化を目指していますが、治験ボランティアが見つかるかどうかがリスクと言えます。理由は、日本のように感染拡大が下火で、重篤な患者がほとんどいない状況でボランティアが集まりにくいからです。
現在、国内における新型コロナの重篤の患者数は全国で100~200人程度です。死者も1000人台と少ないです。インフルエンザのように若年層が死ぬ危険もほとんどありません。周囲の人に「コロナのワクチンができたら打ちますか?」と聞くと「打ちません。怖いから」という答えが大半です。病気自体が日本では弱毒で、遅かれ早かれインフル未満の病気という扱いになるのが短期投資リスクでしょう。
長期投資の王道銘柄ではないが、アンジェスは応援したい会社
アンジェスはワクチンだけではなく新しい治療薬も期待されています。疾患を軽減するタンパク質をワクチンとほぼ同様の仕組みで体内の細胞で作り出す新しい薬です。これは遺伝子医薬と言われています。創薬は1つ成功すれば特許で守られているため大きな収益になります。
同社の短期的なリスクは社会的なワクチンの開発需要が下火になることですが、遺伝子医薬の分野で様々な取り組みをしているので、それらが成功すれば投資が報われる可能性があります。競争の厳しい新分野ですがアンジェスにはぜひ頑張ってもらいたいですね。
投資は長期の見通しがよいものを長期保有するのが王道です。バイオ株はおしなべて創薬で当たればラッキー、外れたらごめんなさいという「宝くじ」的な要素が強いので、私が助言するDFRポートフォリオには組み入れません。しかし、短期的な収益回復を見込んで1~2年で2倍程度の株価を目指すリバウンド狙いの銘柄は組み入れていますので、興味のある方はメルマガを購読してみてください。
(DFR投資助言者 山本潤)
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