アドバンテッジリスクマネジメント(8769)の株価は割安で推移
アドバンテッジリスクマネジメント(8769)は、企業の社員向けにメンタルヘルスケアをサポートするサービスを提供する企業です。予防に力を入れたストレスチェックサービス「アドバンテッジ タフネスシリーズ」や、メンタルの病で休職している社員の復職支援サービス「H-ARM-ONY」などを手がけています。
同社は業況を徐々に拡大し、純利益は2006年3月期の4400万円から、2020年3月期は6.39億まで増えました。過去15年で約15倍です。今期は営業人員増加や社内システム導入などの積極投資で業績拡大は一服しますが、来期は大きく増収増益の見込みです。一方、株価は798円(9月16日終値)と約2年前につけたピークの約半値で推移しており、長期投資のタイミングとしてよいと判断します。
主力のストレスチェックサービスの事業価値を試算
企業にとって、社員のメンタルヘルスケアは喫緊の課題です。2015年、電通の新入社員が長時間労働やパワハラで自殺に追い込まれる痛ましい事件が起きました。同年12月に労働安全衛生法が改正され、労働者数が50人以上の事業場でストレスチェックを年1回実施することが義務化され、重要性は一気に高まりました。
メンタルの病は珍しい病気ではありません。うつ病の有症率は約6.7%で約15人に1人がなり、統合失調症の有症率も約1%で約100人に1人がなります。それ以外にも、アルコール乱用、社会恐怖や全般性不安障害やパニック障害、外傷性ストレス障害、気分変調性障害など、現代には気分障害や適応障害などに悩む方は多数いらっしゃいます。
メンタルの病で社員が休職した場合の企業の経済的損失を試算しましょう。例えば、年収600万円の社員が半年間休職した場合、損失額は約500万円です。半年の休職にもかかわらず、損失額が年収以上になる理由は臨時採用や残業などの追加コストがかかるためです。社員数が1000人の企業で、何も対策をしなければ1%に当たる年間10人が半年間休職すると仮定した場合、年間損失額は5000万円程度です。この損失額を約3分の1に抑えられるのであれば、3300万円の価値があることになります。社員1人当たりの価値は年間3.3万円です。
約2100社、約370万人が同社のストレスチェックサービスを利用
同社の「タフネスシリーズ」はベーシックプランの費用が1人当たり年間1400円程度。チェックに加えて産業医による面談などを行うスタンダードプランが同2000~3000円程度。組織の活性化を目指すプレミアムプランが同4000円程度です。先ほど試算した価値と比べて安く導入のメリットがあると言えるでしょう。事実、タフネスシリーズの顧客は大企業を中心に約2100社に上り、約370万人の社員が利用しています。
復職支援サービス「H-ARM-ONY」は初期導入費用200万円、年間サービス240万円程度で提供しています。前期の売上は4000万円程度と多くないですが、今期より本格的に拡販予定です。さらに培った知見やデータに基づいてコンサルティングや研修などを行うソリューション事業も成長しています。
販売数量と単価上昇の両方が期待でき、利益成長は続く
長期で株価が上昇する条件は、販売数量の増加と販売単価の上昇を実現することですが、今後はどうでしょうか? 数量増加については、大企業がメンタルヘルスケア事務をアウトソースしていない割合が6割もあるため、開拓余地は十二分にあると言えるでしょう。単価上昇もタフネスシリーズの上位プランへの転換や復職支援SaaSの「H-ARM-ONY」のアップセルも期待できます。順調に進めば、今後も利益は数年で数倍になることが期待できるでしょう。
菅義偉新首相は少子化対策に本腰を入れるでしょうから、働き方改革は加速します。現在、経営者はテレワークと社員の生産性低迷に悩んでいるところです。同社の鳥越慎二社長によれば、社員のメンタルの強さと生産性は強い相関があるとのこと。これはグッドニュースです。生産性に悩む大企業はタフネスの導入に踏み切ってくれるでしょう。社会的な意義も高く、長期で応援したい企業です。
(DFR投資助言者 山本潤)
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