日本の株式市場はバブルなのか?
新年あけましておめでとうございます。本年も本コラムのご愛読よろしくお願いいたします。
東京都をはじめ関東1都3県で緊急事態宣言が出され、コロナの収束はなかなか見込めませんが、日本株市場は今年も堅調に推移し、長期投資を始める良い機会だと考えております。私が助言するDFRポートフォリオもキャッシュを残しており、株価が下がった際は追加買いの対応をしていく予定です。
本コラムでは、長期投資に興味がある方に向けて、今後、数回に渡って長期投資を始める意義や基本を伝えていきたいと考えています。それに際し、まずは多くの人が気にしている日本の株式市場はバブルであるかについて考察したいと思います。
株式市場を理解するには、より大きな債券市場を見る
日本の株式市場を見る上で、時価総額がより大きな米国の株式市場を見ることが大切なように、株式市場を理解するにはより大きな市場を見ることが大切です。株式市場より大きな市場はどこかと言えば、その答えは債券市場です。債券市場の規模は、株式市場の倍程度あります。
株式の需給に大きな影響を与えるのが、債券市場からの資金流入です。債券市場で重要な指標が、米国長期金利の水準です。米国10年債の利回りは数%あるのが普通でしたが、2017年以降は1%を下回るようになり、昨年の春先には0.1%まで低下しました。現在は0.8%程度の水準です。
債券投資家の立場で物事を見ると、株式市場をより理解できます。この先、債券利回りは長期で上昇するのか、下落するのかのどちらでしょうか。インフレ率が1%を超える中、利回りの低い債券に投資するでしょうか?
合理的な投資家は債券相場の上昇はあまり期待できないと判断し、消滅したインカムゲインを補うため、配当利回りが比較的安定した大型優良株を保有する方に向かうのではないでしょうか。具体的には、債券ポートフォリオのごく一部を株式にシフトするでしょう。
債券市場より大きい短期金利市場も大幅に悪化
債券市場を見る上で重要なのは、さらに大きな市場を見ることです。それは短期金利市場です。現金や預金などの短期金利市場の規模は債券の倍程度ある非常に大きなマーケットです。
米国の短期金利の状況はどうでしょうか。1ヶ月のUSD LIBOR(ロンドンインターバンク市場)の推移によると、2018年から2%以上あったもののコロナショック後に急落し、0.2%前後まで低下しました。物価上昇率の方が高い状況なので、預金者の立場からすれば、今の低金利を短期で稼ぐか、あるいは1%弱の長期債券を購入するか意見が分かれることでしょう。
短期金利市場は債券市場の2倍、債券市場は株式市場の2倍の規模があります。株式市場の中でも日本株のウエイトは低く、外から少しの資金流入で評価が上がってしまうのです。つまり、こうした需給で考えると、今後も資金流入が期待できる日本株市場はまだまだバブルとは言えないのです。
預金や債券のリスクとリターン比率が劇的に悪化
金融商品はリスクとリターンの関係で評価します。短期金利1年ものはリスクは1%程度で、リターンは0.2%程度です。長期債券はリスクが3~4%程度で、リターンは0.8%程度です。リスクとリターンの比率は短期金利資産は数分の1になり、長期債券も半分になってしまった。これらが株式市場の外で起こっている大きな問題です。
一方、株式のリスクとリターンの比率は、ETFなどのインデックス商品でリスク20%でリターンは7%程度ですから、リターンをリスクで割ると約0.35です。一方、債券はリスクが4%でリターンが0.8%ですから、リターンをリスクで割ると約0.2です。約10年前は債券のリターンとリスクの比率は1程度ありましたから劇的な悪化です。リターンとリスクの比率は株式が圧倒するようになったのです。
株への資金流入は始まったばかりで、バブルとは言えない
このような考え方はアセットアロケーションでの話ですが、似たような考え方が国家財政についても言えます。よく言われていることですが、間違っている意見があります。日本の国家財政が破綻して、自国通貨の円が暴落するという説です。
間違っている理由は分かりますね。日本だけでなく世界を見なければならないからです。米国も欧州も財政支出を増やし金融緩和を懸命にやっている中、日本だけがやらないと逆に円高になる。インフレ率が一番低い国の通貨が日本円ですが、このことは日本円は信頼されていることに他なりません。日本の財政状況だけを見ても分からないのです。ここがマーケットの面白いところですね。
話を戻しますが、最大のマーケットと言える米国のキャッシュ資産のリターンとリスクの比率が過去最低水準になっている事実を無視してはダメです。株がバブルだとおっしゃっる方の投資判断は当たらないでしょう。相場のコツはより巨大な市場を見ることなのですから。
一般に株式市場に1%の資金が流入すると、株価は数%程度上昇すると言われています。5%の資金が流入すると、数十%程度の値上がりになります。株式の需給はチャートや信用情報だけを見るのではなく、金融商品別にリスクとリターンの比率がどのような状況であるかを含めて検討すべきでしょう。
(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、10年で資産10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。