長期成長が魅力の明豊ファシリティワークス(1717)
明豊ファシリティワークス(1717)は、学校やオフィス、庁舎などの建設工事を支援するコンストラクション・マネジメント(以下CMと略)を行なう企業です。同社のコンストラクション・マネジャーは、プロジェクトの企画設計やデザイン、建設工事などに対して適切な助言を施主(顧客)に行い、顧客が要望する予算内かつ工期内に完成させるべく全力を尽くすプロです。
一般的な建設工事では、費用が予算を上回るケースが多々あります。築地市場の移転では予算は当初の倍になりました。東京五輪の予算もおよそ当初の倍に膨れ上がりつつあります。一方、同社は玩具メーカーのレゴ社が中部地方に開業したレゴランド・ジャパンのCMを手がけましたが、工期も予算も計画通りに導きました。工夫を重ねた手法に世界が驚き、昨年、同社は国際コンストラクション・プロジェクト・マネジメント協会から最優秀賞を受賞しました。
同社のCM手法は、フロント・エンジニアリングと呼ばれ、プロジェクトの初期段階で徹底的にリスクを洗い出すのが特徴です。品質を保ちながら、建設会社に競争を促し、その結果として透明で合理的なプロセスが担保されることから、施主だけではなく、大手ゼネコンからも高い評価を得ています。
コンストラクション・マネジメント(CM)の潜在需要は膨大
同社が受け取る報酬は明朗で、プロジェクトの難易度に応じて高くなります。具体的には、コンストラクション・マネジャーがプロジェクトに関わった時間と専門性の高さに応じて決まります。報酬が決まれば、顧客の立場に立ってプロジェクトを完成に導きます。追加の成功報酬などはありません。
公共工事を発注する国や自治体は、入札を行えば安価に工事できると考えていました。しかし、入札が不調に終了したり、最低価格で入札しても追加費用を請求されたりすることが相次いでいました。中には、嘘をついて最低価格で入札する悪徳業者も存在します。
そうしたこともあり、国土交通省の旗振りで、多くの建設会社から提案を募り、最良の提案を選ぶCMが普及し始めています。CMの良い点は透明性と三方良しの関係作りです。施主は過大に請求されることなく、建設会社も採算割れを防ぐことができます。
大企業や大きな自治体を中心に、同社を長期パートナーとする例が増えています。例えば、鉄道会社や製造業は保有設備も膨大で、それを一つ一つを管理し、修繕や建て替えを行なうのは大変です。同社のコンストラクション・マネジャーはどの設備の修繕や建て替えを急ぎ、どれを後回しにするかを勘案し、費用を平準化する長期計画を策定します。近年、CMを導入する企業は増えていますが、採用率はまだ1~2割程度にすぎず、膨大な潜在需要があります。公共工事への本格導入もこれからです。
ネックは、高い専門性と人間性を持つ優秀な人材確保
コンストラクション・マネジャーは、施主と建設会社の利害関係を調整するため、高い専門性と人間性が求められます。技術を評価し、それを金額換算できる専門性と、利害の異なる相手をまとめていくコミュニケーション力やリーダーシップも重要だからです。
同社の成長を妨げる要因を挙げるとすれば人材面でしょうか。専門性が高く人間性も豊かな人材は少なく、確保が難しいからです。同社の平均年収は高い付加価値を反映して1000万円ありますが、それでも人材獲得のハードルは高く、社員の年間増加率は過去9年間で約4%です。大貫美社長は年間200人程度の中途採用面接を行なうものの、採用基準を満たして合格できるのは数名程度と少ないです。
年率10%強の成長が長期間続くことが期待できる
社員の年間増加率は4%程度であるものの、生産性は向上し続けており、年率7~8%程度成長しています。すなわち、社員の増加と生産性向上によって、今後も年率10%強の成長が期待できるでしょう。
年率20~30%もの高い成長を遂げるIT企業などが多い中、10%強の成長を物足りなく思う方もいるかもしれません。しかし、私はそう思いません。成長率以上に注目すべき要素が成長期間だからです。同社の存在は、短期の高成長ばかり注目される市場にあって一石を投じていると考えます。
同社の成長は長期に渡って続くと考えられます。毎年発生する建設市場が12兆円と大きいのに加え、戦後復興期から建設された膨大なストック資産が何百兆円もあります。これらを管理し、次世代に生かす役割を担う同社の社会的意義は高いと言えるでしょう。
長期投資において最重要なのは、企業の永続性だ
長期投資において株価は重要です。しかし、それが最も重要かという問いの答えは「株価は最重要ではない」と断言できます。何が大事か。それは人類や社会の永続性であり、それを支える企業の永続性です。
株価は、配当とその成長余地とリスクとの兼ね合いで決まります。多くの投資家は、現在の成長率を重視しますが、最も重要なのは成長期間と将来の成長率です。現在の成長率が高くても、成長期間が短ければ、将来、株価は下がります。逆に成長率が低くても、成長期間が長ければ、将来、株価は上がるでしょう。
同社には、短期的な株価動向より、大事なものが備わっているように思えるのです。つまり、「永遠に成長が続き、永遠に保有しても大丈夫ではないか」という期待です。株式を何十年も安心して保有し続けられる企業は多くありません。同社はまだ小さな企業ですが、長期で保有したい魅力を感じます。
(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、長期投資で資産10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。山本潤氏の新刊が発売『初心者でも勝率99%の株ポートフォリオ戦略』。