人類の底力を実感した2020年
2020年は新型コロナウイルス感染の脅威に見舞われた年として歴史に残るでしょう。ロックダウンが世界の主要国で発生し、株式市場は急落して「コロナショック」と命名されました。その後、各国の財政出動や金融緩和によって株価はV字回復し、NYダウは史上最高値を更新し、日経平均も年末2万7000円台を推移しています。ウイルスのゲノムが世界で迅速に共有されて解析を終了し、ワクチンが開発されました。感染拡大が続くなど予断を許さない状況ではありますが、ワクチンの早期接種や治療法の確立によって早期終息が期待できます。2020年は人類の底力を改めて実感した年と言えるのではないしょうか。
グローバル経済下で進む「ユートピア」の構築
コロナショックが起きる前まではグローバル経済下で自由貿易が拡大。新興国の低賃金を利用して商品生産が行なわれ、先進国が消費を拡大し、その結果、新興国の中間層が拡大し、先進国と新興国がともに発展するという好循環が生まれました。米国の1人当たりGDPは1960年代の3000ドル台から伸び続け、2018年には6万ドル台を超えました。日本も同期間に2000ドル台から4万ドル台になりました。
医療水準の底上げも進み、平均寿命は長期化の一途をたどっています。世界の平均寿命は1950年に46歳でしたが、現在は72歳を超えています。日本は世界一の長寿国です。日本女性の平均寿命は87歳を超えました。また、豊かな生活の象徴と言える世界の海外旅行者数も、1960年代は100万人足らずでしたが、2019年には14億人を突破しています。
世界の均衡も取れつつあります。成長のドライバーが米国1本槍から、世界全体へと広がっています。特に中国やアジア諸国の発展は目を見張るものがあります。リーマンショックという未曽有の金融危機による先進国経済の落ち込みを短期で払拭できたのも、中国をはじめとする新興国の急速な経済成長のおかげでした。今後はインドが世界経済を下支えするステージに入るでしょう。
グローバル経済は協調路線に回帰し、戦争や紛争の回避へ
2021年は、トランプ米大統領の自国中心主義で一時失われつつあったグローバル経済は協調路線へと回帰し、経済的な利害を争う戦争や紛争を回避する傾向は一層進むでしょう。
人類は物資がないと生きていけないため、過去はそれらを奪い合うなどの争いが絶えませんでした。物資が豊かになり分け合えることができるようになって、犯罪や争いが減ってきました。警察白書によれば、犯罪件数は高度成長期は1000人あたり15件でしたが、現在は7件と半減しています。日本の犯罪件数は年間100万件弱が発生していますが、人口10万人当たりの殺人事件発生率は0.28人と、30年間で半減しました。米国の殺人事件発生率は5人と多いですが、30年間で半減しています。
グローバル経済下では、ある国で販売されるものが他国で製造されたものが多いため、経済的な利害は国をこえて数珠のように繋がっています。国家が戦争しても得をする人は少なく、争いの動機は減っているのです。国家間の政治的な緊張関係は存在するものの、国際分業体制が整いつつある今、世界の利害が概ね一致する時代になったと言えるのです。
人類の社会課題解決に向けて動き出す株式市場
今、人類が抱える大きな社会課題の1つが貧富の格差です。一部のグローバル企業に富が集中して強力になることで、新興国に加えて、先進国でも貧富の格差が広がっています。先進国に移民が大量流入することによって、職を失う自国民が増えています。一方、日本ではパワハラや過労死などの悪質な労働実態が社会問題化しています。
経済格差の解消は、既得権益の破壊を伴う場合が多いため、そう易々と解決できません。また経済成長を追い求めすぎて無秩序に都市開発が行なわれ、その結果、大気や水質の汚染、地盤沈下などの環境破壊が進みました。さらに画一的で個性のない都市風景が人々の心を蝕むなど、人類にはまだまだ解決すべき問題が山積みです。
長期投資の2つの軸 本能に逆らい、少数派に留まる
私はことあるごとに、弱い人間の一人として嘆いています。なぜ、人は協力すれば高い付加価値が得られるにも関わらず争うのか。なぜ、論理的に行動できず感情に任せるのか。なぜ、自分の意見を主張せず、多数派になびくのか。なぜ、人はゴシップを流し他者をわざわざ貶めるのか。
しかし、私は気がついたのです。そうしたことに悩み、傷つき、嘆く時間はないと。投資家はそんなことに関わっている場合ではないのです。そのため、私は長期投資の行動方針として、本能に逆らい理性を信じること、多数派を離脱し少数派に留まることを掲げたのです。
人類がある課題を解決しても、次々と新たな課題が生まれる。人類の課題解決に真摯に向き合うことが、人生や投資の価値を決めるのだと。人類は知識を体系化し、ソリューションとして安価に提供できます。その主な提供者が上場企業であり、それを応援するのが投資家なのです。
2020年はコロナ禍にありながら、事業活動を行う上場企業の底力を実感できました。今後、上場企業は人類が抱える課題にどう向き合い解決していくのか。それを見極めるのが長期投資家の役割です。私たちが長期投資をする目的は、よりよい社会を作る企業を応援するためです。
実力も自信も伴う若者が多い日本の未来は薔薇色
日本の未来を悲観視する人が多いですが、私は薔薇色だと思います。それは若者の存在です。彼ら彼女らを見ていると励まされます。私の世代より圧倒的な実力があるからです。私の世代は大量消費文化に侵されて勉強も不熱心でした。私自身も大学の授業にあまり出席せず、身の丈を超えたローンを組んで自動車を購入して乗っていました。
就職でも、職業に必要な資格取得や勉強を十分にせず、先輩が築いた楽園であると思われた終身雇用のレールに乗るという能天気な世代だったのです。そんな我々世代は子育てや教育にも十分な力を発揮できず、日本の国際競争力をガタ落ちさせたのは当たり前の帰結です。
一方、現代の若者は忖度しません。酒やギャンブルに溺れず、理性を重視する。大学で熱心に勉強し、インターンをこなす。マイカーを好まず、トレッキングやジョギングを好み、環境問題や貧困問題にも積極的に関わろうとする。自分の意見を主張でき、多様性を受けいれられる。デジタルツールや数字にも強い。こうした優秀な若者を見ていると、日本の未来に胸が躍ります。自信や行動力の源泉になる自己肯定感も高いです。昭和世代は「とても幸せだ」と感じる割合は高校生で24%だったのが、現在は半数の高校生が「とても幸せだ」と実感しているのです。
2021年は自然と人を豊かにする観点で長期投資銘柄を選別
長期投資家は若者の存在を肯定しなければなりません。次世代は若者が作り出すのですから。環境問題に熱心な若者は、私利私欲の実現より、地球環境の保全や生態系の復元を優先するでしょう。環境への取り組みは母なる地球を守るのみならず、免疫疾患の抑制などの恩恵もあり、人類の存在を持続可能に導くでしょう。2021年は人類のさらなる底力を発揮する年になると考えています。
2021年に長期投資家が見るべき2つの要素は自然と人です。世界の強いトレンドに沿った銘柄の選択が自ずと有利になるでしょう。2021年も長期投資の意義を伝え、自然と人を豊かにする上場企業の活動をしっかりと評価し、皆様と共に考え、共に論じていく年にしたいと思います。
(DFR投資助言者 山本潤)
この連載は、10年で資産10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページでさらに詳しい銘柄分析や、資産10倍を目指すポートフォリオの提案と売買アドバイスもご覧いただけます。