超成長株投資で資産10倍計画!

リーマンショック以降、格差開いた日本と欧米企業。
理由はESGの取り組みの遅れと投資家の受け身の姿勢。
ESG底上げで日本株は大きくアウトパフォームする!山本潤の超成長株投資の真髄 第100回

2021年2月10日公開(2021年2月10日更新)
山本 潤
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 世界の投資のスタンダードは長期投資

 投資は長期が中心です。世界で120兆ドルの資金を機関投資家が運用しており、そのうちヘッジファンドなどの短期投資は3%程度に過ぎません。機関投資家の多くはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人:厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行なっている)のように年金運用を目的として、株式を長期保有します。トレーダーが短期の需給で売買するのに対し、長期投資家は運用方針を厳格に守ります。

 長期投資家はリーマンショックやコロナショックのような「ここぞ」という数年に一度の暴落局面で買います。アセットアロケーションと呼びますが、暴落した株式評価の減少分を補うためにキャッシュを株に配分をするのです。私も過去、米系の機関投資家で年金を運用していましたが、売買は年に1回転を超えてはならないと厳命されていました。ちなみに日本のアクティブタイプの投資信託は2回転程度が多く、欧米の投資信託はその数分の1の回転です。

リーマンショックで開いた欧米企業と日本企業の差とは?

 さて、今回の本題は日本株が今後も底上げされる条件について考えたいと思います。ESGコンサルタントで『ESG思考』(講談社)の著書である夫馬賢治さんは「リーマンショックを起点に欧米の大企業と日本の大企業との間に格差が開いてしまった」と指摘しています。

 日本企業はリーマンショックで景気が悪化する中、利益の喪失を挽回しようと多くの費用を削減しました。派遣社員を解雇し、研究費を削減し、CSR(企業の社会的責任)や社会貢献、スポーツや芸術振興の予算なども削減しました。短期的に利益は回復しましたが、長期ではこの不味い決断が大きな出遅れを生んだのです。

 欧米企業は違う視点でリーマンショックをとらえていました。それは「見えないリスク」の存在です。例えば、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)。社債を元本保証する金融派生商品のはずが、大元の保険会社が潰れてしまった。リスクヘッジできていると思い込んでいたことが、実はできてはいなかった。

長期投資をする上で欠かせないキーワードがESG

 欧米企業は、他にも見えないリスクがないかを探したら、重大なリスクがありました。起きる確率が極めて低いため、普段は気にしないリスクです。例えば、地球が爆発したりする。こうした事象が起こる確率は極めて低いものの、万一生じたら人類は滅亡します。このように確率は低くても、生じた際のインパクトが重大な事象を欧米企業は探したのです。

 その筆頭が地球温暖化と人権の問題です。温暖化の被害は年々顕在化し、人権問題も深刻です。これらは経営を揺るがすリスクと考え、欧米はこうした問題の対処に投資する決断をしました。2009年、欧州議会でESG情報開示の強化方針が採択されます。米国は国家としての取り組みは遅れていますが、欧州顧客が多い米国のグローバル企業は自主的にESGに取り組みました。

 環境団体グリーンピースがGAFAを格付けした際、データセンターが槍玉に上がりました。電力を大量に消費する石炭火力のウエイトが高いことを理由に、アップルのESGスコアがGAFAの中で突出して低かったのです。アップルは中国で製品を製造しており、中国の発電は日本と同様に石化燃料が中心だからです。その後、アップルは迅速に対応し、自然エネルギー中心の運用方針に変更したのです。

 欧州は風力発電などの自然エネルギーに予算を注ぎ込み、石化発電比率を大幅に下げました。そして新しい産業を創出したのです。当然ながら、自然エネルギー関連の株価のパフォーマンスは高く、ESGに迅速に対応した欧米のグローバル企業の株価のパフォーマンスも高かったのです。

日本企業がESGの取り組みに遅れた原因

 日本企業の取り組みが遅れた理由は複数あります。『ESG思考』 によれば、「伊藤レポート」による8%ROE提言が短期の自社株買いだけを誘発したこと、四半期決算に対応するために目先の収益に固執したこと、研究開発費を削ったことなどが指摘されています。

 例えば、リーマンショック時と比べて中国企業は研究開発費を4.7倍、韓国は2.5倍、欧州は1.6倍、米国は1.4倍にしたにもかかわらず、残念ながら日本企業だけが削ってしまったのです。また、確かに現在のROEを改善するなら、自社株買いは効果的です。ですが真に重要なのは、将来のROEです。そのために10~20年という長期戦略を策定する必要があります。単年度や3年程度の中期計画では対処できないのです。

 例えば、炭素税は日本ではわずかに289円/t(トン)です。これを前提に10年後を考えることは正しいのでしょうか。北欧のスウェーデンは炭素税は約15000円/tです。しかし、経営者はそれを知るだけではダメです。現場では炭素を還元する装置が必要で、そのコストは汎用品で60000円/tです。将来、10000円程度の汎用品が出る可能性はありますが、289円ではない。長期戦略とは、炭素税が10000円/tになる場合を想定して事業の舵取りを考える必要があります。

ESGへの取り組みが遅れた要因は、投資家の受け身な姿勢もある

 日本でESGの取り組みが遅れた理由は、長期投資家が存在しなかったからだと考えています。欧米の投資家はアクティブが中心で、日本はパッシブ(ベンチマークから乖離しないことを目指す運用)が中心。欧米で投資家の役割が高いのに比べ、日本の投資家は受け身で声を上げなかったことによって、日本の劣後がはっきりしたのではないでしょうか。

 日本株を米株に劣後する冴えないアセットであるとする考えがあります。確かに、過去10年の日本の戦略は不味かったし、その通りになった。受け身で生きるならば、欧米や中国の投資家を当てにして日本が変わることを夢見ればよい。しかし、それでは他力本願が過ぎ、あまりにも情けないではないか。これをオントラックにすることが日本の投資家の重大な仕事の一つだ、と私は考えています。

ESGによる底上げで日本株は大きくアウトパフォームする!

 DFRでは夫馬さんが主張する「ESG思考」を未来志向の投資のあり方として当然のこととして受け入れ、日本企業へのガバナンスの強化に取り組む所存です。まずは私も含めて意識改革として、この世界が直面する問題を直視する必要があります。日本においては、企業がようやくESGに目を開いた状況です。GPIFのESGインデックスに基づく運用の採用が起爆剤になったのです。日本企業は変化が遅いが、変化を起こせば後は一直線です。横並びで改革する。それはよいことなのです。

 TOPIXなどのインデックスが好調なのは、日本株がESG底上げの期待ステージにあるからかもしれません。この機を逃さず、ESGで一挙にバリューが高まると想定される投資対象を探す必要があります。例えば、電源、断熱材、蓄電池、DXなどの分野。さらにこれらに限らず、様々な調査で有望な企業を発掘・再定義する必要があります。ESGに積極的ではないが、取り組んだら変化が大きそうな企業も魅力的な投資対象です。ガバナンスをよくするだけでもアップサイドは大きいのです。

 識者であり、技術の目利きであり、私のよき相談者でもある発明塾の楠浦塾長からは「出遅れの挽回だからチャンスです。日本のお家芸は追いつけ追い越せであったことを思い出しました」とご指摘いただきました。一人も落ちこぼれをださない、"No One Left Behind"はESG投資の基本原則です。そして、思い起こせば、これが我が国の強みだったのです。全員で底上げを目指し未来を変えていきましょう。私はかつてないほど、日本株アウトパフォームの前提は揃っていると確信しています。

 

(DFR投資助言者 山本潤)

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