――お子さんは2人とも、神奈川の御三家の一つである栄光学園に入学しています。中学受験での学校選びはどのようにしていきましたか。
大学付属ではない中高一貫校に絞って、志望校を検討しました。高校受験をさせたくなかったので中高一貫がよかったのですが、大学受験には挑戦してみてほしかったんです。大学受験のような大きな人生の勝負に打ち勝つ経験は、社会に出てからも役に立つはずなので。
あとは、家計の問題もあり、奨学金や学費支援などがある学校を探しました。せっかく入学するからには、金銭的な理由のため途中で辞めることなく卒業させてあげたいですしね。その上で、神奈川というゆかりのある土地にあって、校風も気に入った栄光学園を選びました。
大学受験では余計な口を挟まない
親は「健康管理」と「雑用係」に徹する
――大学受験のときはどのように関わったのでしょうか。
息子が高校2年生のときに、自分から「東大に行く」と言ってきたんです。栄光学園は東大を受ける生徒が多いから、環境のせいもあったと思うんですが、正直驚きました。
家計的にも、浪人は厳しいし私立大学も厳しい。ただ、その時点では成績も学校の中で平均レベルだったので、「ランクを落とした国公立大学にしたら」と言ったんですが、やはり「東大に行きたい」と。
予備校に通わせることは金銭的にも苦しかったのですが、子どもが自分で、できるだけ安くなるように現代文などの教科は、春期や夏期だけ受講するなど、家計のことも考えた提案をしてくれました。そこまで本気なら私も、「本当に必要なときには節約しない」という考えで全力で応援することにしました。
――大学受験は予備校に通わせたのでしょうか。また、受験時のサポートをどの程度行いましたか。
中高一貫校の勉強だけで合格できることが理想ではありますが、どうしても補填していかないといけない部分は塾に頼る必要がありました。そのため、高校2年生時から、科目ごとに選別し、英語と数学は通塾、理科は自分のペースで学習できる東進ハイスクールの映像授業を受けさせました。自習室もあるし、チューターが一人一人に付いて学習管理もしてくれるので心強かったです。
模試の結果などについては親がいちいち一喜一憂しても仕方がないので、何も口出ししませんでした。勉強に関しては本人に任せる代わりに、食事や受験票や出願資料の取り寄せ、日々の生活のちょっとしたケアなど、健康管理および雑用係が親の仕事だと思ってやっていました。大学受験は子どもの力を信じて任せることが、親の役目だと思います。
家庭での会話は、どんな教育より大切
家庭環境において親が気を付けるべきこと
――中学受験においても大学受験においても、塾・予備校は集団や個別、映像授業などあらゆる形態がありますが、どのように選ぶべきでしょうか。
中学受験塾は集団授業でしたが、小テストの結果が毎回ランキング形式で出されていて、本人たちの刺激になっている印象でした。大学受験も、中高で育った周りの環境に引っ張られて東大を受けることになったので、環境は大事かもしれないですね。
逆にいえば、個別指導塾は周りの環境に引っ張られなくなってしまうデメリットがあるように思います。集団と個別それぞれの特徴を考えると、苦手な科目は個別指導、得意な科目は集団授業など、組み合わせるのがベストかもしれません。
――シングルマザーという家庭環境だからこそ、子育てで気を付けた点はありますか。
夫婦仲が悪いと、子どもに悪影響があることは間違いありません。私の場合は影響が大きくなるのを恐れて、離婚する前に別居をしました。子どもはすごく敏感ですから、日頃のイライラを八つ当たりしたり、夫の悪口を言ったりしたら、絶対にダメです。
家族の仲が良いことが、どんな教育よりも大事なことです。子どもは何も悪くないですから、自分のストレスも自分の中でコントロールするように努めました。
――ほかに、お子さんとの関係性を築く上で気を付けていることはありますか。
怖いお母さんにならないようにしました。子どもには、優しい人になってほしいと思ったので、私自身に居心地のいい雰囲気がないとおびえてしまうな、と。もちろん、叱るべきときにはちゃんと言いますけどね。
日常的に会話をすることで出来上がる“空気感”ってすごく重要だと思うんです。反抗期には途絶えることもありますが、いつも会話することが当たり前の関係性になっていると、たわいのない話であれ、進路についての相談であれ、話すことにちゅうちょがなくなります。そうすることで、自然と親子で助け合えるようになりました。
Key Visual by Noriyo Shinoda