韓国で45万部の超ロングセラーが発売から7年、いよいよ日本に上陸。韓国で社会現象を巻き起こした『勉強が面白くなる瞬間』。この本を読んで、学生の98.4%が「勉強をしたくなった」と証言! なぜ、勉強をしなかった人たちが勉強に夢中になるのか。10代~70代の世代を超えて多くの人が共感。そこにノウハウは一切ありません。ただ、この本を読んだ人にはわかることでしょう。執筆に8年かかったとされる『勉強が面白くなる瞬間』から、その驚くべき内容を紹介する。
今回は、本書の訳者である吉川南氏にインタビュー。吉川南氏が訳した『私は私のままで生きることにした』は大ベストセラー。私自身、どうしてもお願いしたくて、1年ほど待っての出版となりました。韓国文化にも精通する吉川氏に、この本の魅力をうかがった。

ノウハウのない勉強本が韓国で大ヒットした理由Photo: Adobe Stock

勉強の常識を覆した1冊

――韓国発の本は、女性読者が多いイメージですが、著名人の愛読書という触れ込みも関係しているのでしょうか?

吉川南(以下、吉川):SNSの影響も大きいですよね。TwitterやInstagramなど。コアなファン層が情報発信して、本の売りにつながるーーそれが一つの形として出来上がっています。

――今回、訳していただいた『勉強が面白くなる瞬間』は、著名人の愛読書という情報はなかったんです。そんな本ですが、なぜヒットしたと思いますか?

吉川「KYOBO文庫」というインターネット書店が韓国にはありますが、私が見た時点で、レビューが654個、評点9.7点(10点満点中)でした。

――日本でのAmazonがKYOBO文庫に相当すると思いますが、そのレビュー数、Amazonでもあまり見たことがありません。

吉川:はい。そのレビューを読んでみると、子どもだけじゃなく、大人が読んでいることがわかりました。

 大人が自分のために読んでいる。

 もちろん、子どもにも読ませていますが、「この本が自分にとっていいことが書かれている」というレビューが多くて驚きました。

 受験本ではなく、自己啓発本として、非常に勉強になったという声が多かったんです。

――多くの世代に共感されている理由がよくわかりました。「学生のバイブル」としても本書は評価されていますが、ほかに理由はあるのでしょうか?

吉川:韓国に、「民族史観高等学校」という超エリート高校があります。日本では、灘、開成あたり。それ以上かもしれません。

 全寮制で、何十人もソウル大学に輩出している超エリート校です。そこで、『勉強が面白くなる瞬間』が「聖書」と呼ばれていて、そこに通う学生が毎日読んでいると、広く知られている。その学校のネームバリューにも影響を受けているでしょうね。

 ちなみに、その学校がどのくらいすごいかというと、私がソウル大学大学院にいたころの話をしましょう。

 そこでは、修士の論文を通すのに早くても3年かかるものでした。4年かける人も。私は3年半かかりました。

 同級生に、そのエリート校:民族史観高等学校を飛び級で2年で卒業した人がいましたが、彼は、2年半で修士をとった。それくらいすごい学校なんです。そこのバイブル。影響力は大きかったでしょうね。

――本の内容はどうでしょうか?

吉川:勉強は苦しいものだと、誰もが思っています。その常識をひっくり返した。「勉強とは楽しいものなんだよ」と、意識を変えたところは、大きいでしょうね。

「勉強はノウハウではない。心構えの問題なんだ!」

 これをドンと押し出した本は、これまでなかった。「なぜ勉強するのか?」を明確な答えを与えたところが評価されたと思います。

 あとは、勉強できなかった人が書いたところですね。中学まで遊んでばっかりで、どんなにひどかったかは、本に延々と書かれていますけど、「どんな人でも、心を入れ替えれば、できるんだ」というのが、読者に夢や希望を与えたと思います。

 体験談に基づいていて、説得力がある。こんなふうに考えて、こう勉強したというのが、読んでいて、うんうんとうなづいてしまう。勉強の本は勉強できる人が書くというのが当たり前ですが、できない人がどうやってできるようになったのか。読んでいて、自己肯定感が持てる。自分はだめだと思っていたけど、そうじゃないんだ! 読んでいて、勇気が湧いてくる本です。

 韓国では、「勉強! 勉強!」と、毎日言われ続けていて、それに関連したいじめも自殺も多い。この本が清涼剤となっている側面もあります。

――昨今の韓国ブームにある、救いのある本ということでしょうか。この本もまた、勉強の本ではありますが、そういう面を持ち合わせている?

吉川:そうですね。「自分を出せばいい。人と比べてどうこうではなく、過去の自分といまの自分を比較すればいいんだ」とか。ある種の救いがある本ですね。
(取材・構成/編集部 武井康一郎)

(本原稿は書籍『勉強が面白くなる瞬間 読んだらすぐ勉強したくなる究極の勉強法』をベースにした、インタビュー記事です)