韓国で45万部の超ロングセラーが発売から7年、いよいよ日本に上陸。韓国で社会現象を巻き起こした『勉強が面白くなる瞬間』。この本を読んで、学生の98.4%が「勉強をしたくなった」と証言! なぜ、勉強をしなかった人たちが勉強に夢中になるのか。10代~70代の世代を超えて多くの人が共感。そこにノウハウは一切ありません。ただ、この本を読んだ人にはわかることでしょう。執筆に8年かかったとされる『勉強が面白くなる瞬間』から、その驚くべき内容を紹介する。
今回は、本書の訳者である吉川南氏にインタビュー。吉川南氏が訳した『私は私のままで生きることにした』は大ベストセラー。私自身、どうしてもお願いしたくて、1年ほど待っての出版となりました。韓国文化にも精通する吉川氏に、この本の魅力をうかがった。

勉強の常識を覆した1冊。これは「生き方」についての本でもあるPhoto: Adobe Stock

過去の自分に足りない自分を埋めていく

――日本でようやく発売された『勉強が面白くなる瞬間』ですが、発売即重版! よく売れています。日本人読者に向けて、どう読んでほしいですか?

吉川南(以下、吉川):本書は、単なる勉強の本ではなく、「生き方」についての本でもあると思います。だからこそ、韓国でも大人に読まれています。

「なるほど」と思ったところは、「『夢』と『目標』と『欲望』はそれぞれ違うもの」という箇所。

「夢とは、自分がどんな職業に就きたいかではないんだ。自分がどんな姿で生きていきたいのか、どんな人と付き合い、どう生きていきたいのか」と作者は言っています。医者になれっこない、弁護士になれっこないと、言い訳にして勉強しないのは違うんだ、と。あなた自身がどう生きたいのか、それが夢なんだよとあります。

 また、「『目標』とは、自分がいま行動するためのスローガン。いまからこの1時間でどう勉強するか、それが目標なんだ。遠い将来ではなく、具体的な目標をたてるんだ」と。

 さらに、「運よく手に入ればいい。いわゆる棚ぼた的な願いが『欲望』だ。お金が欲しいとかは、泥棒の心理なんだよ」と。

目標と仲良くすると、夢に近づくけれども、
欲望と仲良くすると、夢から遠ざかる。

「なるほどな」と感じました。自分自身を振り返れば、高校、大学のとき、近視眼的に夢を見ていたなと思います。

 翻訳の仕事は、もともとしようして、したわけではありません。でも、「韓国のことを知りたい。韓国の社会・歴史について、韓国人の生き方についてもっと知りたい」と思い、結果として、翻訳家となった今があります。これが夢ですね。

 また、「自分との闘いを中心に据えておくべき」という考えもいい。「ライバルはやる気を吸い取る吸血鬼」とありますが、これにもびっくりしました。

 普通はライバルを見つけて、追い越せ追い抜けとするものですが、「そうじゃないんだ」と。「他人ではなく、過去の自分と競争すべきだ!」とあります。

 他人と競争すると、それはあの人はこうだからできた。お金持ちの家に生まれたから当然だよね。あるいは、もともと頭がいいからだよね、と責任転嫁した結果、やる気がなくなってしまう。

 それを自分との競争とすれば、昨日の自分と比べて今日の自分はどうなっているのか。「ちょっとでも進んでいるのか」に集中すれば、やらない理由がなくなります。

 過去の自分に足りない自分を埋めていく――そうすれば、いつまでも成長できるんだと教えてくれます。これは何歳になっても、同じこと。韓国もまた高齢化社会になっていますが、それもあって、多くの世代に受け入れられたのではないでしょうか。

――「うちの学校とよその学校の比較」の話も本書にあり、このたとえは面白かったですね。よその学校を引き合いに出しても、通ったことのない学校の話をしても、無意味だと。

吉川:それでいま、思い出したことがあります。先日、テレビで、スケート選手の高木美帆さんのドキュメンタリー番組を見ました。

 どうやって記録を打ち立てられたのか。

 目先の相手に勝とうではなく、自分の納得できる一蹴りがどうだせるか。

 一蹴り、一蹴りを大切にし、その結果が金メダルにつながった。

 翻訳家もそういうところがあります。ずっと、仕事はひとりでやっているもの。誰かと競争するわけでもありません。

 1冊1冊、本は違うものだし、結果として、売れるものは売れるにしても、日頃のモチベーションにはならない。

 何がモチベーションになるのか。

 うまく訳せなかった言葉に対して、こういう略語があったんだと、ふと日本語にしてみたり、きついスケジュールでやるのに挑戦したり。あるいは、「読んでいてこんな面白い本にめぐりあえた。自分だけの発見だ!」と感じたり。そういう面でも、自分にとってこれからの仕事に役にたった本でもあります。

――最後に、学生に向けて、いつかは社会に出る子たちに、どう読んでほしいですか?

吉川:勉強自身、学校でやるだけのものではありません。社会にでてからも、続けていくもの。モチベーションを保つために、重要なことをおさえている本です。

 会社にはいってから、出世を目標にするのではなく、自分の持ち場で、自分の人生にどう反映させていくか。

 私の子どもにも、この本を読んでほしかったなと思いました。どこから読んでもいいし、ひっかかるところが必ずあります。

 著者自身のことが書かれていて、悩みに悩んで、結論にたどり着いたものなので、きっと同じ悩みを共有する子どもたちが多くいるはず。なんらかのかたちでこの本が届いてくれれば、と願います。
(取材・構成/編集部 武井康一郎)

(本原稿は書籍『勉強が面白くなる瞬間 読んだらすぐ勉強したくなる究極の勉強法』をベースにした、インタビュー記事です)