【61】1973年
高度成長期を終わらせた
「石油ショック」の衝撃
1973年10月、第4次中東戦争の勃発に伴い、中東産油国が原油価格を1バレル=3.01ドルから5.12ドルへ70%引き上げることと、石油の減産を相次いで発表した。「第1次石油危機(オイルショック)」である。
「ダイヤモンド」は1973年12月8日号で「石油危機のすべて!!!」と題した34ページにわたる大特集を掲載した。「石油と日本経済」「石油危機の内幕」「日本への影響」の3部構成で、石油に関する25の疑問について解説を加えた内容となっている。
25の疑問は、「日本はどこから石油を輸入しているか」「石油危機はなぜ起こったか」という初歩的なものから「OAPEC(アラブ石油輸出国機構)は何を狙っているか」「企業収益はどうなるか」「株式市場はどうなるか」「何が不足し、何が値上がりするか」など、具体的な話題まで多岐にわたっている。
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すでに政府は11月20日から、石油の10%供給削減を、鉄鋼、自動車、重電および家電、石油化学、自動車タイヤ、化学繊維、アルミ精錬、非鉄金属精錬、セメント、板ガラス、紙・パルプの合計11業種に対し実施、一方、電力の供給も、契約最大電力3000キロワット以上の需要家に対して、一律10%の削減が実施された。
しかも、これは12月までのことで、OAPEC諸国による供給カットがこのまま続けば、明年の1~3月は石油、電力とも20~25%の削減と、一段と大幅になろうことは必至と見られている。
(中略)
石油化学、電力、ソーダ、セメントなど主要業種の多くが、石油を主要原料、あるいは動力、熱源としているだけに、その消費量は多い。当然、その削減は生産に大きな影響を与えるが、と同時に、値上りによる収益への圧迫も大きい。試算によると、石油化学、電力、海運では利益が吹っ飛び、ソーダ、セメント、ガス、紙などにおいても、その圧迫は過半に達する』
原油価格の引き上げは、73年12月にはさらに1バレル約12ドルにまで引き上げられ、当初から約4倍の値上がりとなった。製造業や重工業、化学工業、鉄鋼業など石油依存度の高い産業は大きな影響を受け、利益率の低下だけでなく経営自体の見直しを迫られることになる。
景気は73年11月をピークに下降局面に入った。72年度は9.7%、73年度は5.3%と推移していた実質GNP成長率が、74年度は▲0.2%と戦後初めてのマイナス成長を記録した。原油価格上昇に起因する物価高騰から消費は低迷し、「列島改造論」で盛り上がっていた大型公共事業も多くが凍結・縮小された。高度経済成長期はこうして終焉(しゅうえん)を迎えたのである。