1913年に(大正2)に創刊した「ダイヤモンド」は、2024年に111周年を迎えた。そこで、大正~令和の日本経済を映し出す1年1本の厳選記事と、その解説で激動の日本経済史をたどる「111年111本」企画をお届けする。第10回は高度成長期、1963~66年までの4年間だ。(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)
【54】1966年
全国で多発した公害問題
問われる企業の社会的責任
高度経済成長期の急速な工業化と都市化が引き起こした「負の側面」として、深刻な公害問題がある。
代表的な事例として、熊本県水俣市の水俣病(有機水銀中毒)、富山県神通川流域のイタイイタイ病(カドミウム中毒)、三重県四日市市の四日市ぜんそく(大気汚染)、新潟県阿賀野川流域の新潟水俣病(メチル水銀中毒)が挙げられる。これらの公害は、工場排出物が原因で発生し、多くの住民が健康被害を受けた。
公害問題に対する社会の関心が高まり、被害者による訴訟や市民運動が活発化。企業や政府に対する監視と圧力が強化されていく。
1966年5月2日号の「動きだした公害対策の現状を洗う」という記事では、四日市市や東京・隅田川の事例を中心に、産業公害の現状と対策をレポートしている。そして、公害対策は「経済以前の問題」であり、企業の社会的責任を自覚して前向きに取り組むべきだと指摘している。