株データブックWeb「記者が斬る!」
【第8回】 2012年5月30日 ザイ・オンライン編集部

日本のポイント制度は国際会計上は問題だらけ!? 今後は消滅の可能性も
~IFRS(国際会計基準)の衝撃 第3弾~

 国際会計基準では、ポイント制度を「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム(customer loyalty programmes)」と呼ぶ。

国際基準ではポイント発行分は売上げを減額しなければならない

 カスタマー・ロイヤルティ・プログラムの、これまでの日本の会計処理と異なる点は以下のとおりだ。

 (1)まず、ポイントの発行時。ポイント発行時はポイント発行分を売上高から減額して計上する。簡略化して言えば、ポイント付与率が10%の場合、100万円の買い物をしたとき、ポイント分の10万円(100万円×10%)を売上げから差し引いた90万円を売上げとして計上する。

 (2)ポイント使用時。使用されたポイントを売上げとして計上する。例では、10万円分のポイントで10万円の買い物をしたときに、売上高として10万円を計上する。
というものだ。

 一方、現在の日本の会計方法では、ポイントの発行の有無・発行額にかかわらず、商品の販売額をそのまま売上高に計上できる。

 しかし、国際会計基準ではポイント発行分は売上高から差し引かなければならないので、ポイント発行額分だけ、当初の売上高が減少してしまうことになる。

 上記の例は、説明のためにきわめて簡略化したものだが、実際の計算は単純ではない。

 差し引くポイント発行額は、一定のルールのもとに算出される公正価値や、それが将来商品に引き換えられるであろう予想引換率や失効率などを試算したうえで算出しなければならず、極めて煩雑な手続きが必要になる。

 また、すでに述べたとおり、日本ではポイントに関して決まった基準がないために、ポイント発行企業はそれぞれがバラバラのルールで開示をしている。

 以下は、主なポイント発行企業の開示項目を示したものだ。

 ポイント引当金だけを開示している企業、一方ではポイント引当金のその期の繰入額やポイント販促費なども合わせて開示している企業など、対応はさまざまだ。

 さらに下図をみてほしい。

 何より最も関心が高いであろう航空会社のマイレージは開示がない。また、ポイントの生みの親ともいわれるヨドバシカメラや、TポイントカードのTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブは非上場のため、やはり開示がない。

 開示の方法や項目場バラバラ。さらには、開示自体がなされていないのでは、投資家は累増するポイントに起因するリスク等を図り知ることすらできない。

ポイントの相互乗り入れで制度はさらに複雑怪奇に

 前述したように、発行時点でのポイント金額の算出は困難なのだが、これをさらに複雑にするのがポイントの「乗り入れ」だ。

 航空会社が運営するポイント制度に量販店が乗り入れているケース、TSUTAYAのTカードに至ってはコンビニから、ホテル、外食などポイントが貯められ、利用できるる企業は数十社におよんでいる。

 複数の企業(店舗)で、こまめに貯めたポイントを別の店舗でまとめて使用したとき、ポイント発行時・使用時の会計処理はどうなるのか? 詳細な販売データの共有は、手続き上も経営戦略上も事実上不可能に近い。

 今後は、国際会計基準の導入の有無にかかわらず、今後はポイント発行企業に対する投資家などからの情報開示要求が一段と高まるはず。

手続きの煩雑回避のためポイントを廃止する企業も現れる!?

 一方で、発行企業にとっても、累増するポイント発行額が経営の負担になりつつある状況では、今後は廃止を含めポイント制度の抜本的な見直しを考える企業も少なくないだろう。そもそもポイント制度を導入した時点では、国際会計基準への対応など念頭にもなかったはずだ(今でもないかもしれない)。

 消費者にとっても貯める楽しみ、使う楽しみのポイントが、日本企業のあらたな火薬装置になりつつある。

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