
坪井賢一
「映画音楽のマエストロ」ジョン・ウィリアムズが、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(以下、ウィーン・フィル)を指揮して自身の楽曲を演奏したアルバム『ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン』(ユニバーサル)が発売されたのは昨年(2020年)の夏。豪壮な大管弦楽の魅力に満ちたアルバムが好評を博した。さらに今年2月5日には、コンサート全曲を収録したSuper Audio CD(SACD)によるCDが発売された。サウンドの解像度を増したこのハイレゾ盤の登場で、ウィーン・フィルの「スター・ウォーズ」がさらに豊麗に鳴り響くことになった。

1942年6月生まれのポール・マッカートニーは、2021年で御年79歳を迎えます。そのようなポールの新作アルバム『マッカートニーIII』が、2020年12月18日に発売されました。半世紀も活躍しているのになぜ「III」なのでしょうか?

2020年は作曲家クルト・ヴァイル(1900~50年)の没後70年、そして2021年はヴァイルの夫人であり、歌手・女優のロッテ・レーニャ(1898~1981年)の没後40年に当たる。クルト・ヴァイルはユダヤ系ドイツ人で、第1次大戦と第2次大戦の戦間期ベルリン、つまりワイマール共和国のドイツ劇場文化に、モダンなポップスの色を吹き付けた作曲家である。夫人のロッテ・レーニャは2歳年上で、ヴァイルの作品を大量に歌い、演じていた。クルト・ヴァイルとロッテ・レーニャ夫妻は、2020年に意外なところから再登場してきた。

2020年は、ジョン・レノンの生誕80年、そして1980年12月8日にニューヨークで凶弾に倒れてからちょうど40年に当たる。東京・六本木で大規模な展覧会「ダブル・ファンタジー/ジョン&ヨーコ」展が開催され、また、最新のリミックス・ベスト・アルバムが10月に発売されたところだ。目と耳でジョン・レノンの人生を回顧する絶好の機会である。

20世紀の代表的な指揮者の一人、オットー・クレンペラーの新しいCDが9月に2点発売され、多くのリスナーを驚かせた。近年はレアな音源が次々に登場して慣れているが、このクレンペラー盤は珍しい上にステレオ盤だ。

今年8月に発売された「ブルックナー:交響曲全集」。NHK交響楽団正指揮者でもあった若杉弘が1996年から98年にかけてサントリーホールで演奏したチクルス(全曲演奏会)のライブ録音である。今回は、若杉氏が残した流麗で美しいブルックナーの魅力を解説しよう。

2020年は、ドイツの社会学者・経済学者マックス・ウェーバーの没後100年に当たる。ウェーバーはちょうど100年前、世界的に流行した感染症(スペイン風邪)に罹患し、肺炎で命を落とした。ウェーバーはどのような人生を歩んだのだろうか。

東京フィルハーモニー交響楽団(東京フィル)が6月21日の定期演奏会から、ついに聴衆を会場に入れた定期演奏会を再開した。新型コロナウイルス対策において、難関は聴衆の密集よりも、舞台上の密集対策だ。東京フィルの再開は多くの演奏団体にとって、ウィズ・コロナ時代の演奏活動の参照基準になると思われる。

今年で、ビートルズ最後のアルバム「レット・イット・ビー」の発売から50年。わずか8年ほどの録音活動期間でありながら、ポピュラー音楽史に多大な影響を与えたビートルズ。特にこのアルバムの発売、そしてその後の映画「レット・イット・ビー」公開までの約1年半は複雑かつ激動の時代だった。

2020年は、チャイコフスキー生誕180周年の記念すべき年である。抒情的で美しい旋律、金管楽器の派手なリズムとハーモニーなど、世界中で人気があるチャイコフスキーだが、なかでも1番人気の「悲愴」交響曲の新しい録音を、30代から40代の指揮者で聞き比べてみよう。

なぜ、どのように新型コロナウイルスは出現したのか、どうして感染は急速に世界に広がったのか、そもそもウイルスとは何か、いったいいつから地球に存在しているのか、抗コロナウイルス薬とは、どのようなメカニズムで効くようになるのか。いやはや分からないことだらけだ。「ウイルス学」を初歩から自習してみることにした。

2020年はベートーヴェン生誕250年のアニバーサリー・イヤーだが、わが国の代表的な作曲家、山田耕筰が没して55年目の年にも当たる。山田耕筰といえば、「赤とんぼ」「待ちぼうけ」「この道」「からたちの花」といった童謡によって広く知られている。多くの日本人は彼を童謡の作曲家だと思い込んでいるが、実は100年前にヨーロッパの舞台芸術を日本に根付かせた大知識人だったのである。

本欄の前回、「ベートーヴェン生誕250周年、最新『交響曲全集』10本を聞き比べた!」の最後に書いたように、同じ曲でも楽譜の版(エディション)の相違が演奏に大きく影響するので、指揮者による楽曲の研究は楽譜の選択から始まる。クラシックだから楽譜にそれほどの差はないだろうと考えがちだが、とんでもない。1980年代以降に楽譜の考証は飛躍的に進み、実はどんどん変化しているのである。したがって演奏者による表現の差も拡大している。

2020年12月にベートーヴェン生誕250周年を迎える。今年は世界中でベートーヴェンの作品を演奏するコンサートが無数に開催されるだろう。CDなどのソフトも、すでに続々と発売されている。特に9つの交響曲は世界中で人気があり、全集としてさまざまなセットが市場に出ている。SACDやブルーレイオーディオなど、ハイレゾ音源で古いアナログ録音をリニューアルしているケースも多く、新しい発見が可能になっている。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」が公開されて1年、世界で興行収入1000億円を超える空前の大ヒット作となり、アカデミー賞と英国アカデミー賞で主演男優賞などを受賞している。そして2020年1月にはクイーン+アダム・ランバートの来日公演が行なわれる。もちろんフレディ・マーキュリーはいないが、2019年10月にはフレディのソロ録音を集大成した「ネヴァー・ボーリング-フレディ・マーキュリー・コレクション」と題したボックスセットが発売されている。このフレディ全集を聴くと、彼が晩年に残した作品の多くはクラシックへ傾斜していたことがわかる。

ミュージカル女優としてデビュー4年、小南満佑子(こみなみ・まゆこ)は着実に大きな舞台で実績を積んできた。主演クラスの役が続き、キャリアはベテランの風情だが、まだ23歳だ。4歳のころからショービジネスの世界をめざしていたという。ミュージカルの大舞台を目標として周到に準備して階段を上がり、クラシックの声楽を並行して学んでいるミュージカルスターに注目したい。

たった1人でコツコツと、15年以上かけて科学書の図書館を構築してきた人がいる。偶然、ダイヤモンド社の社員がネット上で発見し、教えてくれたのである。リアル図書館ではなく、「科学図書館」と名付けられたウェブサイトで、蔵書は約500点だ。ウェブ上でだれでも無料で閲覧できる。つまり全点の全文がPDFで公開されているのである。

ビートルズの最後から2番目のアルバム「アビイ・ロード」が発売されたのはちょうど50年前、1969年9月26日のことだった。あれから50年、アナログの音源が技術的に整理、更新されて3次元サラウンド版まで追加され、「50周年記念エディション」としてこの9月27日に発売された。

バイロイト音楽祭は、毎年7月末から8月末にかけてドイツ・バイエルン州のバイロイト祝祭劇場で開催される夏の一大イベントだ。世界各地のクラシック系音楽祭と違うのは、リヒャルト・ワーグナー(1813~83)の主要な楽劇10作から選んで公演する、ワーグナーだけの音楽祭だということだ。ドイツだけでなく、欧米や日本などから多くのワーグナー・ファン(ワグネリアンという)がバイロイトへ向かう。ドイツのメルケル首相もワグネリアンで、毎年初日に聞いているそうだ。

MMT(現代貨幣理論)は5年ぶりに登場した経済学の目新しいコンセプトで、提唱者らの著作が日本で出版されれば大ベストセラーは間違いないところだ。主導する一人、アメリカのステファニー・ケルトン氏(ニューヨーク州立大学教授)が先週来日し、ダイヤモンドオンラインを含むさまざまなメディアに登場してMMTの理論的な解説を行なっていた。ここではMMTが登場した背景をたどり、経済思想史と経済理論の基礎知識を整理する。
