
坪井賢一
サブタイトルまで入れると、両展覧会の正式な名称はこうなる。「クリムト展:ウィーンと日本1900」(東京都美術館)、そして「ウィーン・モダン:クリムト、シーレ世紀末への道」(国立新美術館)。前者は朝日新聞社が、後者は読売新聞社が主催者に社名を連ねている。見る前は、両展覧会ともにグスタフ・クリムトを中心にした「世紀末ウィーン」がテーマで、展示の発想はかなりの部分でダブっているのだろうと思った。

第23回(最終回)
1970年代に登場した劇画の代表的な作品『子連れ狼』。作画は時代劇の劇画で有名な小島剛夕、そして原作は小池一夫だ。小池は今年(2019年)4月17日、82歳でこの世を去ったが、膨大な作品を残した漫画の世界の巨匠(マエストロ)である。

第22回
漫画『彼方のアストラ』は、SF漫画としてよく整理された作品だ。一見すると、『十五少年漂流記』を想起させる少年向け冒険物語のようだが、読み進めていくと、ミステリーの要素も強く、どんでん返しと謎解きの面白さもある。

第21回
漫画『イサック』は、大陸欧州を二分して起きた17世紀前半の「三十年戦争」(1620~48年)に傭兵として参戦した日本の鉄砲鍛冶職人、猪左久(いさく=イサック)の物語である。「月刊アフタヌーン」(講談社)で2017年から連載されている。

第20回
漫画『赤狩り』は1950年代前半、アメリカの「赤狩り」がハリウッドを大混乱に陥れた時代を描いた作品である。赤狩りは現代史の教科書に出てくる歴史的事実だが、連載漫画として「ビッグコミックオリジナル」で2017年から始まったのは意外な驚きだった。

第19回
阿佐田哲也の小説『麻雀放浪記』の第1巻「青春編」が発売されて大ベストセラーとなり、麻雀ブームに火がついたのはちょうど50年前。漫画『麻雀放浪記』はそのコミカライズ作品であり、『麻雀放浪記2020』はリメイクされた映画の漫画化作品だ。

第18回
『雪花の虎(ゆきばなのとら)』は、東村アキコによる歴史漫画である。主人公は上杉謙信(1530~78)。ただし女性。「謙信は女だった」という仮説を立てて構築した作品だ。

第17回
漫画『まんが道』と『愛…しりそめし頃に…』、タイトルはまったく違うものの連続した作品である。著者は藤子不二雄Aで、本作は長い自伝なのだ。また、A氏の自伝にとどまらず、戦後の漫画発達史を知るうえで重要な作品である。

第16回
漫画『ナポレオン』はフランス革命とナポレオン戦争を描いた長編漫画だが、読者は剣で斬られ、銃弾に貫かれ、砲弾で吹き飛ばされる体験をするだろう。写実を超えたすさまじい熱気と表現で、私たちを1800年前後のヨーロッパへ連れていく。

第15回
『ワイルド7』は1969年から「週刊少年キング」に連載され、2016年に他界した望月三起也の代表作。2019年は連載開始から50周年に当たる。なにしろ、こんなかっこいい漫画、そうあるものではない。

第14回
『乙女語り』の作者はじつに意外な舞台を選び、読者の想定を超える物語を進めている。時代は19世紀の中葉、物語の舞台はトルキスタン(中央アジア)のあちらこちら。主人公は中央アジアを旅行中のイギリス人の20代青年、ヘンリー・スミスである。

第13回
漫画『銃夢』が1991年から95年まで「ビジネスジャンプ」に連載されてからなんと28年。続編が現在まで続いているが、ジェームズ・キャメロン監督がプロデューサー兼脚本家として実写映画化し、2月22日には日本でも公開される。

第12回
漫画『岳』のあと、著者の石塚真一により描かれているのが長編が『BLUE GIANT』とその続編の『BLUE GIANT SUPREME』だ。山岳物語とはがらりと変わり、テーマはジャズで身を立てる青年のサクセス・ストーリーである。

第11回
『ブラック・ラグーン』は、ハードボイルドな作品である。しゃれたセリフ回しに、膨大な武器の情報と激しい銃撃戦が繰り広げられる。私はこの作品が大好きで、単行本の発売をいつも心待ちにしているのだが、なんとも刊行ペースが遅い。

第10回
世にグルメ漫画は数あれど、この作品ほどグルメからほど遠く、しかしわれら普通の市民にとってものすごく近い「食」をテーマにしている漫画はないだろう。舞台はある所轄の警察署。中年刑事タチバナが主人公だ。

第9回
2004年の『センゴク』は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の天下統一をめぐる歴史劇だが、主人公は仙石権兵衛秀久という有名ではない武士である。仙石が織田、豊臣、そして徳川に仕え、戦国時代を生き抜いていく物語だ。

第8回
『ナニワ金融道』の連載が「モーニング」で始まったのは1990年だった。バブルの頂点を日経平均株価の頂点だとすれば、1989年12月末に株価は史上最高値を付けている。90年に入ると株価は下落を始めるが、不動産価格はまだ上昇を続けていた。

2018年9月、ある人物の一生を描いた評伝が刊行された。社会科学の統合という壮大な目標を掲げ、数学、経済学、社会学、心理学、政治学、宗教学、法律学などを世界の超一流学者から学び、自家薬籠中のものとした異能の天才──小室直樹だ。小室氏の死から8年、その生涯を膨大な取材と資料を元に『評伝 小室直樹』としてまとめた村上篤直氏に小室氏の学問的功績とさまざまな人物との関わりについて語っていただいた。

2018年9月、ある人物の一生を描いた評伝が刊行された。社会科学の統合という壮大な目標を掲げ、数学、経済学、社会学、心理学、政治学、宗教学、法律学などを世界の超一流学者から学び、自家薬籠中のものとした異能の天才──小室直樹だ。小室氏の死から8年、その生涯を膨大な取材と資料を元に『評伝 小室直樹』としてまとめた村上篤直氏にお話を伺った。

第7回
漫画『はたらく細胞』は、免疫系の細胞を擬人化した物語で、おとなが読んでも分子生物学の勉強になる。本作の独自性は、免疫系の細胞が人間そのものとして描かれている点だろう。擬人というより、人間そのものなのだ。
