不動産投資をはじめるにあたって、自分の職業や年収、保有資産といった属性からすると、どのような物件購入が望ましいのか? 初めてだとわからない人も多いと思います。今回は、定年(リタイア)世代をモデルケースとして、おすすめの不動産投資を考えてみます。
いわゆる「老後2000万円問題」が取り沙汰されたのは、2019年の夏頃。それからというもの、金融商品のセールストークに「老後資金のために資産運用を」というフレーズがより多く使われはじめました。
若い世代も含めて、多くの人の危機感があおられたことは間違いないと思います。不安や焦りから、資産運用をはじめた熟年世代もいるでしょう。高い手数料で金融機関が儲かるだけの金融商品に手を出すのでなければ、投資する人が増えたのは良いことだと思います。
不動産投資も同じです。
ただ、リタイア世代が不動産投資をはじめる場合、必ず視野に入れなければいけないのは「相続」のことです。不動産は現金よりも相続しづらい資産で、現金なら子どもに公平に分けられますが、不動産はそう簡単には分けられません。
シニア世代は相続を見越して不動産を買おう!
私が証券会社の営業をしていた頃は、お客さまの資産運用の話を聞くのが仕事でした。いまはファイナンシャルアドバイザーとしても活動しているので、相続にまつわる揉めごとはたくさん見聞きしています。不動産にまつわる相続争いは、とても多いです。
たとえば、不動産5000万円と現金1000万円を、子ども2人で相続するとしたらどうするか? 「不動産5000万円を長男が相続して、現金1000万円を次男が相続しよう」という話で、お互い納得できればいいでしょう。でも、両者の配偶者が口を出してきたりして、こじれてしまうケースが多いのです。
長男夫婦は「こんな家をもらっても仕方がない」、次男夫婦は「こっちは1000万円なのに、5000万円の家をもらってずるい」と、なりがちに。同じ条件でなければ何かしら不平不満が出てきやすいものです。
リタイア世代が不動産投資をするなら、相続することを見越して子どもの数だけ買えればベストです。資産的に可能なら、同じような条件の物件を子ども1人につき1つずつ買っておくと、それほど揉めることはないはず。
仮にアパート1棟を子ども2人に相続するとなると、揉めごとの種になってしまう可能性があります。そうならないためには、相続人が終活の一環として弁護士を立てるなどして、法的に有効な遺言状を書いておくことです。1棟を子ども2人にどう分けるのか、細かいところまで明記しておきましょう。
相続後を見越して築浅の物件を選びたい
もう1つのポイントは、築浅の物件を選ぶことです。
古い物件を買うと、相続したあとリフォームや管理面で多大な手間をかけかねません。子どもは現役世代ですから、物件管理にそれほど手間をかけられません。被相続人になるべく負担をかけないためには、できるだけ築年数が浅く、何かあったときに本人たちが行けるエリアの物件を選んだほうがベターです。
具体的には、政令指定都市にある築20年以内の1棟アパートであれば、利回り7~9%でも空室対策に困ることなく安定稼働・収入が見込める可能性が高まるでしょう。価格帯はエリアや資産背景などにもよりますが、1億~2億円クラスになります。購入可能であれば、ファミリー向けの物件もいいです。ファミリーは頻繁には入れ替わらないので、条件がよければ空室に悩むリスクが少なくなります。
リタイアしてからそこまでの優良物件を買うとなると、かなりの現金が必要になります。60歳でリタイアして、長期ローンの融資を受けるのは現実的ではないからです。基本的に融資は期待せず、預けっぱなしの預貯金をつぎ込むくらいの覚悟で買うか、子どもに連帯保証人になってもらってローンを引き継いでもらうか。どちらかの選択になりそうです。
被相続人が会社勤めをしていて正社員であれば、「何かあったときは、この子が引き継ぐ」という条件を提示すると、融資を受けられる可能性が出てきます。その場合は、家族の理解を得ることが欠かせません。相続するとき、遺された人たちにできるだけ負担をかけないこと。これがリタイア世代の不動産投資の最低限のポイントです。
【定年(リタイア)世代へのおすすめ】
エリア:相続を視野に入れたエリア
利回り:7~9%
物件:子どもの数に合わせて不動産数を決める(築浅)
物件価格:1億円~2億円程度(資産背景・相続税額による)
今回は、定年(リタイア)世代をモデルケースとして、おすすめの不動産投資を紹介しました。これから不動産投資を始めたい人で、定年(リタイア)世代の方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
●八木エミリー 投資家&事業家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。最新刊は、『放置しておくだけでふつうにお金が増える投資術』(ビジネス社)
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