不動産投資において、空室対策となる入居者募集は「客付け」と呼ばれます。管理会社が客付けに強い仲介業者に任せるケースも多く、客付けの仲介会社として有名なのは、「ミニミニ」「エイブル」「アパマンショップ」などの会社です。今回は、客付けの仲介会社に任せても空室が埋まらない場合の対策についてお話をしていきます。
空室が埋まらない場合、私は委託している管理会社に「どこの客付け会社に『マイソク』を渡していますか?」と聞きます。「マイソク」というのは、「物件概要」「地図」「間取り」などをまとめた資料のことです(多くはB4サイズ)。客付けの仲介会社は、このマイソクやレインズの情報をもとにチラシを作成して店舗の入り口に貼ったりインターネットで物件情報を公開したりして、入居者を募集します。
管理会社を動かす決め文句とは?
たとえば、「マイソクはミニミニとエイブルに渡しています」といわれたら、さらに「入居希望者から何件問い合わせがあって、何件内見したのでしょうか。決まらなかった場合、断られた理由を毎週報告してください」とお願いします。それでも入居者が決まらない場合、「私と一緒に客付けの仲介会社を回っていただけますか?」と自ら営業をしかけるのです。管理会社にしてみれば、オーナーと一緒に客付けの仲介会社を巡るなんて面倒だし、気も遣いますし進んでやりたくはないでしょう。
私としても時間も手間もかかりますから、できることならやりたくありません。けれども、空室は最大のリスクですから、自ら動いて一刻も早く解決したいのです。
「一緒にやりましょう。私も頑張りますから!」という姿勢を見せると、担当者も動かざるを得ません。そうなると次からは、オーナーと一緒に客付けの仲介会社を巡りたくない一心で、空室を埋めようと努力してくれるようになります。
実際、「○月×日までに決まらなければ、私もまた一緒に客付けに伺わせていただきます」と伝えると、それまでに必ず入居者を決めてくる担当者もいるほどです(笑)。もちろん、入居者を決めてくれた担当者には、手みやげを持ってお礼に伺います。ただ単に口うるさいだけのオーナーでは、信頼関係を築くことはできません。やはり、相手に対する感謝とリスペクトの気持ちを伝える配慮が大切なのです。
【ポイント:入居者が決まらなかったらオーナー自ら客付けに動く】
少しの支出で効果のある空室対策
私は不動産投資の拡大に重きをおいていますから、大家さんとしての管理業務は、基本的に管理会社に委託しています。
ただし、住宅設備についても、100%任せっぱなしというわけではありません。Wi-Fi環境の整備・古くなったエアコンの付け替え・モニター付きインターホンへの交換・宅配ボックスの取り付けなどを提案し、管理会社を通して実行しています。
コンビニが近所にない物件には、敷地内に飲料の自動販売機を設置すると、毎月の収入の上積みにもつながりますし物件の属性も高まりますね。必要だと思ったらケチらず、思い切って設備投資したほうが空室対策にもつながります。そうした経営判断は管理会社任せにせず、自分自身で行なっているのです。
また、共有部分の窓には、100円ショップで売っているウォールステッカーのような飾りを窓にペタペタ貼って、ハロウィーンやクリスマスなどの飾り付けもしています。1棟目のアパートには内階段の踊り場に出窓があって、小物を置けるスペースがあるので、季節ごとの花・植物・松ぼっくりなどを置いて、入居者の方々に少しでも喜んでもらえる工夫をしました。
こうしたことは、あまりお金はかかりませんし、誰にでもできる簡単なことです。その割に、入居者の方々への愛情が伝わります。空室の内見者向けに家具や小物で部屋を演出して賃貸契約を促す「ホームステージング」も、モデルルームのように豪華にする必要はありません。
キッチンなども100円ショップのグッズで飾り付けしています。ときにはカボチャなどの旬の野菜をカゴに入れて、管理会社に「このカボチャの旬が過ぎて撤去するまでには入居者を決めてくださいね」という暗黙のサインとして飾ることもあります。
【ポイント:共用部分を100円ショップの材料でデコレーションするだけで入居者に大家の心遣いが伝わる】
空室対策のためにリフォームする大家さんもいるようですが、私はそこまで大がかりな追加投資はしていません。リフォームが必要にならないように購入前の物件見学の際、修繕が必要な箇所があるかどうかを入念にチェックします。
たとえば、水道はちゃんときれいな水が出るか、水道管から水漏れしていないか、ドアやサッシや収納扉などはスムーズに開閉できるか、押し入れや壁にカビが生えていないか、といったことです。物件が古くても、大規模な修繕をする必要がなければOK。単身の男性入居者を想定して購入している物件がほとんどなので、必要最低限の設備を問題なく使えれば十分だと思っています。そのぶん、女性受けはしないだろうと思っていたのですが、実際には女性の入居者が20~30%を占めています。
千葉県某市の物件は、風呂・トイレ・洗面台が一緒になった3点ユニットタイプですが、ここにも女性が住んでいます。どんな物件がどんな人のニーズに合うのか、こればかりは、いまでも正確にはわかりません。
共有部分や外観の清潔感をキープして少しでも住みやすい設備を整えるなど、生活するうえで困らない程度の管理をすることは、オーナー自身もできること。これが空室リスクを低減する1つの技術なのです。
【ポイント:お金をかけずに物件内を明るくデコレーション】
物件購入前にここをチェック!
周辺環境/共有部分
□駅からの道のり:徒歩・車での時間、学校や病院など公共設備があるか。大通りに面しているか。該当はあるか。コンビニ・スーパーなどがあり生活しやすい環境か
□駐車場:駅から距離がある場合、駐車場は部屋数分完備されているか。周辺で駐車場を借りられるか。駐車場に白線はあるか
□駐輪場: 放置自転車はないか、整理整頓されているか、ごみはないか
□境界:土地の境界線はあるか、道路を広げるセットバックの有無
□ごみ捨て場:汚れや放置ごみなどはないか
□外壁:塗装が分解して表面が粉状になるチョーキング・修繕履歴・ ツタの有無
□基礎:クラック(ひび)が入ったり、鉄筋が出ていないか
□インターフォン:モニター付きか
□電気メーター:動いているか、入居状況が資料と相違ないか
□屋根:防水・塗装はしっかりしているか、修繕履歴の有無
□法定点検:消火器・貯水槽の期限
□清掃状況:頻度・金額、植栽の状況、清掃用具置き場の確認
□窓の位置:日当たりの確認
□メールボックス:チラシが散乱していないか。宅配ボックスの有無、(ない場合は)追加で置けるか
□自動販売機:置けるスペースがあるか
□共用階段:サビや腐食、破損はないか
□共用廊下:勾配の有無、私物が放置されていないか
専有部分
□天井・壁:雨漏りの跡、傾き、クロスのはがれはないか
□キッチン:排水管にフタはあるか、扉の建付けや水漏れの確認
□換気扇:動作確認、異臭はないか
□収納:カビ・異臭・湿気・広さの確認。和式の押し入れから洋式のクローゼットへの変更が必要か
□建具・サッシ:変形・浮きがなくスムーズに開け閉めできるか
□和室:畳のカビ、異臭、湿気はないか。畳からフローリングへの変更が必要か
□エアコン:設置可能か
□窓の位置:日当たりの確認
□廊下:変形・湿気の確認
□天井:変形・湿気・水染み跡・界壁の確認
□トイレ:温水洗浄便座かどうか (ない場合は) 設置用コンセントがあるか
□お風呂:サビ・異臭・水栓・換気扇の確認 洗面台の割れ・ヒビ、独立洗面台の有無
□洗面所:洗濯機置き場と排水管のフタの確認
□設備:火災報知器・照明・給湯器の確認
持ち物
・マイソク
・スリッパ
・レントロール
・メジャー
・スマートフォン(ライト・メモ・カメラ)
・ゴルフボール(傾斜の確認のため)
今回は、不動産投資において客付けの仲介会社に任せても空室が埋まらない場合の対策についてお話をしました。
これから不動産投資を始めたい人は、「管理会社と一緒に「仲介会社」を営業する」「ちょっとした工夫で物件の魅力がアップできる」ということを、ぜひ頭に入れておいてくださいね!
●八木エミリー 投資家&事業家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。最新刊は、『放置しておくだけでふつうにお金が増える投資術』(ビジネス社)
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