日米金融会合の結果を受け、ドル円は151.97円と34年ぶりの円安水準に
ドル円は151.97円、34年ぶりの円安水準に―。
先週水曜日の東京外為市場。ドル円は一時151.97円となり、2022年10月に付けた151.94円を超えて円安・ドル高が進んだ。1990年7月以来となる34年ぶりの円安水準である。
先週のコラム『日本の早まる利上げ vs 米国の遅れる利下げ』で、3月の日米中央銀行の金融政策について詳しく解説した。3月19日に開催された金融政策決定会合において日銀はついにマイナス金利解除を決め17年ぶりの利上げを実施。そして、翌3月20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備理事会(FRB)は5会合連続で政策金利の据え置きを発表。同時に「年内の利下げは3回」との従来の姿勢を堅持した。これにより、日米の株式市場はともに最高値更新の展開となり、明るい雰囲気が漂っている。
日銀の「まだしばらくは緩和的金融政策を続ける」との姿勢が円安を加速
日銀はようやく従来の大規模金融緩和という金融政策を転換したわけだが、その内容は「マイナス金利解除、長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール、YCC)の撤廃、そしてETF(上場投資信託)とREIT(不動産投資信託)の新規買い入れ終了」の3点セットという徹底ぶりだった。国債の買い入れという選択肢は残したものの、それ以外の金融政策を完全に変更した。小出しではなくやる時は一気に大胆にやる、というはっきりした姿勢が示された。
先週のコラムで述べたように、今回の金融政策転換で重要な点は「まだしばらくは緩和的金融政策を続ける」とのメッセージを日銀が明確に発したことである。これによって株式市場には安心感を与え、為替市場には円安・ドル高の流れを作り出したと言える。日本がマイナス金利解除で政策金利を-0.1%から0%~0.1%の水準に引き上げたにも関わらず、円が売られてドルが買われるという教科書通りの理屈が通用しない動きとなっている。昨年末のドル・円レートは141.25円。それが今や151.97円になっており、「今年は日米金利差縮小で130円レベルの円高になる」との思惑とは真逆の結果となっている。
「口先介入」の言葉尻を読み解くことで政府・日銀の本気度を推し量れる
これだけの円安が進むと、あの例の「政府・日銀による為替介入があるのではないか?」との疑問が当然出てくる。もちろん、鈴木俊一財務相や神田眞人財務官は「行き過ぎた動きには断固たる措置」といつものセリフを口にしており、金融マーケットにおける「日本のお家芸」を披露している。いわゆる「口先介入」と呼ばれる、実際の行動を伴わずに為替市場に影響を及ぼすやり方であるが、この口先介入はいろいろなパターンがあり、その言葉尻を読み解くことで、政府・日銀の本気度を推し量ることができる。
最も軽度なのが、記者から聞かれた時に「為替相場についてはコメントしない」という言葉だ。ほとんどヤル気がないと思ってよい。そして「相場は安定的に推移するのが望ましい」「急激な変動は望ましくない」というのも単なる感想的な表現だ。「必要であれば適切な措置を講じる」になるとニュアンスが変わり、「断固たる措置」になると強い警告に変わる。そして「レートチェック」の実施や「スタンバイ」という言葉が出てくれば為替介入の準備に入ったことを示し、すぐさま実際の介入に踏み切る形となるのがパターンである。
現在、政府・日銀から発せられているのは「断固たる措置」のため、これ以上の円安・ドル高は望ましくないとの警告が出ていることになる。なので、152円以上の円安が進むと為替介入が行われる可能性があることに留意する必要がある。
日銀が金融政策変更を3月に前倒しで実施できた理由とは?
さて、日銀は先週3月28日に3月の金融政策決定会合における「主な意見」を公表した。いくつか見てみよう。
・大規模な金融緩和はその役割を果たした
・物価安定目標の実現が見通せる状況に至った
・金融引き締めへの転換ではなく、金融正常化の取り組みの一環だと明確に伝えることが重要
・金融正常化を見据えて、ある程度は市場の価格形成に任せるタイミングだ
・急速な利上げが必要な状況ではないため、慎重な姿勢を強調することが必要
なるほど。このような意見が多数出たからこそ、日銀内で合意形成されて今回の金融政策転換に至ったことがよく分かる。これだけ意見が揃えば、すべての春闘の結果を揃えて慎重に分析し、4月の金融政策決定会合まで引き延ばす必要はなかったわけだ。
日銀の追加利上げ可能性と米国利下げの両睨みで投資戦略を練るのが大事
ところで、ここで私の疑問を述べてみたい。「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」と日銀が述べているのなら、どうして「当面、緩和した金融環境を継続する」という説明が必要なのだろうか? 要するに、2%の物価上昇を前提とするならば、政策金利は本来あるべき姿の中立的水準、すなわち中立金利は2%になる。だが、今の政策金利は0%~0.1%。2%とは大きな開きがある。
今後、金融市場において「日本の政策金利は2%程度まで引き上げられていく」との観測が急速に強まる可能性がある。マーケットでは7月や10月の金融政策決定会合で利上げがあるのではないか、と囁かれている。前回のコラムで述べたように、植田和男総裁は追加利上げの可能性そのものを否定していない。記者会見でインフレ対応を理由とした利上げに含みを持たせており「経済・物価見通しに大きな影響を及ぼすとなれば当然、金融政策としての対応を考える」と語った。年内に0.25%あるいは0.50%程度の利上げがなされる可能性を視野に入れておくこと、そして政策金利の引き下げが後ずれしているFRBがいつ、どのタイミングで、どれくらいの利下げをおこなうのか。この両者の組み合わせと影響度を読みつつ、投資戦略を立てていくことが大事になる。あなたの投資スキルが試されると思う。
TOPIXを凌駕する「勝者のポートフォリオ」。4月3日セミナーは必見!
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。3月のパフォーマンスは+6.6%となりTOPIX(+4.4%)を大きく上回った。年初来も+22.9%とTOPIX(+18.1%)をアウトパフォームし、2021年10月スタートからの累計では+57.0%とTOPIX(+45.3%)を大きく凌駕している(いずれも配当込みベースの比較)。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
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